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リレー小説を作る会コミュの起承転結4人リレー

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漫画、映画、詩、もちろん小説の基礎にもなっている「起承転結」。

「起承転結」それぞれを別の人が作っていき。4レスで1話になる、ということですね。

起承転結それぞれの頭に「起」「承」「転」「結」とつけていただくと分りやすくなると思います。

ちなみに以下は「起承転結」とはなんぞや?という方の参考に。

起 → 物語の導入部。その物語にはどんな登場人物がいるか、どんな世界・時代に住んでいるのか、登場人物同士の関係はどんなものか、なぜその物語は始まるのかなど、これから物語を読む上で必要な知識を紹介する部分。

承 → 物語の導入である「起」から、物語の核となる「転」へつなぐ役目を果たす部分。ここは単純に「起」で紹介した物語を少し進めるだけで、あまり大きな展開はないのが普通。

転 → 物語の核となる部分。「ヤマ」ともいわれる、物語の中で最も盛り上がりを見せる部分。物語の中でも最も大きな転機を見せる部分。

結 → 「オチ」とも呼ばれる部分で、物語が進んだ結果、最終的にどうなったのかを描いて物語を締めくくる部分。

                       (Wikipedia参照)

コメント(60)

「さあ、そろそろ始めましょう。お客様達もお待ちかねですよ。
 人生は常にゲーム。皆さんだって、いままで尊厳や名誉を切り売り
 して生活の糧を得てきたのでしょう? だったら、命を賭けて
 大金を得るのも、大して変らないじゃありませんか?」

マスターが優しいとさえ言える声で,
私たち「プレーヤー」を促した。
その時私は、テーブルの脇が分厚いスモークガラスになっている事に気が付いた。
そして向こう側から、残忍な好奇心がこもった視線が突き刺さるのを肌に感じた。
きっと、この向うに私たちの命に金をかけている奴らが居るのだろう。

「さあ、あなたからどうぞ」
マスターに抗う様子もなく、右隣の男が拳銃を手に取った。
頬の痩けた、目の下が黒ずんだ男。
きっと此処へ来るまでに散々苦労をしたのだろう。
だがその目の光りは濁り、その口元は緩んで涎すら流さんばかりだ。
あの“酒”だな。
きっとアレのお陰で恐怖心が麻痺しているのだろう。
男はぎこちない手で拳銃のシリンダーをからからと回し、
それから自分のこめかみに銃身を当て――引き金を引いた。

金属が打ち合わされる乾いた音がした。
そして、何も起きなかった。
どうやら彼は成功したらしい。
いや、それとも失敗したのか。
自分の生命には既に大した関心も持っていないだろうその男は、
マスターに拳銃をもぎ取られるまでずっと同じ姿勢で居た。

その次の、私の正面に座った小太りの男に拳銃が渡った。
彼は、シリンダーを廻すことなく、そのまま無造作にこめかみに銃を当て、あっさり引き金を引いた。
引き金を引く瞬間、私はうっかり彼と目を合わせてしまった。
その目の底に広がる底知れない絶望に、私は恐怖した。
彼も、死ななかった。

三番目は、私の左に座る男だった。
まだ若い、端正とも言える顔だった。
“酒”の効き方が甘いのか、その手は小刻みに震えていた。
手に取った拳銃をしばらく見つめ、シリンダーを何度も何度も回し、
銃口をこめかみに当てたあともしばらく引き金を引けず、
大きく荒い呼吸を何度も繰り返した。
「お手伝いが必要なようですね?」
まるで電車で老人に席を譲るような自然な善意で、マスターは
トリガーに掛かった指に軽く両手を添え、引いた。
またも乾いた金属音。
男は、テーブルの上に突っ伏した。
「こちらの方に、お酒をお持ちして」
マスターの声に従い、さっきの“酒”が運ばれてきて
ぐったりした男の喉に、やや強引に流し込まれた。
今、男は本当に満ち足りた顔をしている。

そして遂に拳銃は4番目の男、つまり私の目に前に置かれた。
*****************************************
さ、拳銃が廻ってきました。
どなたか、見事な「結」をお願いします。
鈍く黒光りする銃身は私の手の中でその重みを誇示していた。

一瞬背中にぞくっとするような悪寒が走ったが、
思ったより手は震えていない。
私の手はゆっくりと私のこめかみにそれをもっていった。
一体私は何をしているのだろう。
もしかしたら、一分後にはこの世とおさらばしているかもしれないというのにこれといって思い浮かぶこともなかった。
実家は兄貴が継いでいて、疎遠になっていた。両親は子供が死ねば悲しむだろうが私がいなくて困る事もない。
こうしてみると、ここで当たる事が自分の運命のような気さえしてくる。
私はさっぱりした気分で引き金に手をかけた。
瞬間冷蔵庫のメロンが頭に浮かんだ。
そうだ。あれを今日食べるはずだった。
その時には何か衝撃と音を同時に感じ・・・ そこで途切れた。


眩しい光を感じ、私は目を開けた。
確か私は・・・
そうか。ここはあの世とやらか。
私は体を動かそうとした。
そうして、光以外のものが見えたときに此処がそういうところではないことに気づいた。
そして自分の頭とか腕からコードのようなものがでているのがわかった。
病院なのか?
私は打ち損ねて助かったというのか・・・
それにしても・・・
「お目覚めになりましたか?」
そういって視界に入ってきたのはマスターの顔だった。
マスターは私の頭とか腕とかについているコードのようなものをはずしていた。
「ご気分はどうですか?」
気分は悪くないがこめかみにかすかな痛みを覚えた。
「多少の痛みはあるでしょうが、傷はたいしたことはありませんので」
マスターは複雑そうな顔をした。
やはり私は打ち損ねたのだ。
折角のショーが台無しになってしまったということなのか・・・
「打ち損ねたのですね」
私はマスターに確認した。
「いいえ。そうではありません」
マスターはおもむろに首を振った。
「どういうことですか?」
「実は、あの拳銃は特殊な麻酔銃で衝撃を最小限に抑えるように製造されたものです。
つまり音はしますが、弾の形から弾けて出るのは凝縮した特殊な血糊と麻酔ガスだけなんです。
ガラスの向うで見ている賭けをしているお客様にはあくまで死んだと思わせる形をとっていただかないと大金を賭ける意味がありませんからね。
だから当然参加なさる方には命を賭けると思っていただかないと真実味がでませんからね。お申し込みをなさる方は代理人の方と決まっております。
報酬は当たらなかった場合300万、当たった場合は望みの報酬がでるということになっています。
あの3人はそれぞれ3人のために借金を背負って苦しんでる家族の申し込みです。
家族の方は死ぬことはないということはわかっていますが、それを本人に知らせないというのが条件です。
だから、3人は自分のために不幸にした家族のために覚悟を決めてきているし、家族もどちらにしてもお金も入り、死ぬことはないけど、死ぬ思いを味わってもらいたいということで、一石二鳥というわけです」

私はなにがなんだかわらかなくなった。
要するに命を賭けるという最高のギャンブルで儲けると同時に人助けをしてるということなのか?
それにしても何故作間が??
私は作間にそこまで恨まれるようなことをしたのか?
というか、事情も知らせず他人をそういう賭けに使えるものなのか?
それに死んでしまえばわからないけど、生きているということは私も訴えたりもできるので、その報酬が作間に渡るというのもおかしい。
なんだか腑に落ちない疑問が次々に浮かんでくる。
私はその疑問をマスターにぶつけた。
「私の申し込みは作間がしたのですよね?」
するとマスターは怪訝な顔をした。
「いえ。先程申しましたように・・・。あ、言い方がまずかったですね。
代理人は家族と決まっています。まさか、他人が申し込んで訴えられるようなことになれば大変ですからね。代理人が本人に納得させてつれてくる場合と、あなたのようにそうでない場合は、十分に後で納得させられる条件がないと私もお受けできませんので」
「家族?」
「ええ、奥様でございます」
私は離婚したはずだ。
その時、部屋の隅で気配を感じた。
頭の後ろに座っていたので気づかなかったが、それは離婚したはずの妻だった。
「私、離婚届出さなかったの。
私はあなたがあっさり判を押した時に憎しみを感じた。
それでもあなたが後悔しているような気がして待っていた。
でもあなたは何もなかったかのように生活をしている。
私は此処のことを知って賭けをしてみようと思ったの。
それで作間さんに100万渡してつれてきてもらう様に頼んだの」
要するに私を恨んでるのを死ぬ思いをさせることで解消すると同時にお金を手に出来ると言うことか。
それならかなったではないか。
私は当たった。つまり妻は賭けに勝ったということだ。
そして望みの報酬。
私も少しはいいことをしたということか。

でも妻の顔は嬉しそうではなかった。
マスターも相変わらず複雑そうな顔をしている。
そして
「おめでとうございます」
とメロンを差し出された。
私はキョトンとした。
「望みの報酬です」
「は?」
「実は私は科学者です。
人が死んでしまうと覚悟した時に一番望むもの。気にかけるもの。
それを調べています。あのギャンブルは実験の費用にもなっているというわけです。
大体の場合、家族であったり借金の解消であったり、まあ中には女の人であったり、物でいえば、宝石とか服とか家とか・・・色々ですけどね。
まさかメロンとは・・・」
・・・
「今から離婚届を出しに行きます」
妻は無表情にそういうと部屋から出て行った。

望みの報酬・・・。
私はそのメロンをしばらくぼぅっとみつめていた。

***********
こんな落ちで納得いただけたでしょうか?
・・・・ 
納得しましたw

しかし、こう閉めましたか。
やや意外でした。
面白かったです!
承では起を組んでの流れから思考の幅広さを感じ、転ではルーレットを試みる人間の様子と持っていき方に感嘆しました。
そして結が…!
予想外の展開とオチに舌巻きました!
まさかメロンとは!皮肉な終わりにニヤリとしちゃいました。
お疲れ様です!本当に面白かった★
青風さん、ちをさん
ありがとうございました。
最後が気になって、あれこれ考えてるうちに自分で書いてしまいましたw
こういうダークな感じのものに挑戦したのは初めてなので楽しかったです。
でも、イメージを壊してしまったのではないかと心配してましたので、感想とても嬉しいです。
「承」



「ほんで、あんた福田君にチョコ渡せたんか?」

「ちょっとアッ子、声が大きいって」

5時間目の授業が終わった休み時間、アッ子が聞いてくる。

「ほんでの、まだ渡せてないんやって。」

「ホントけ?あんた何グズグズしてんの、朝のうちに渡さんと男子がちょっかい出してくるって言ったが」

「ほやって〜、私もそう思ってたんやざ、でもの・・・」

教室の隅でこそこそ話をしてると、ニヤニヤ笑いながら清水君とか笹山君たちが近づいてくる。
あっ、その中に福田君もいる。

「お前らチョコの話け、俺らにくれるんけ?」

清水君がいつものように冷やかしてくる。
福田君もそれに相槌をうつが、ぎこちない。
清水君、あんたにはあげんのや、私は福田君にあげるんや。

一瞬、福田君と目があい、お互い目をそらす。
どうか清水君たちに気づかれませんように。

「ちょっと、あんたらどっか行きねま」

アッ子が男子を追い払うと同時に、6時間目開始のベルがなった。


 6時間目終わったら、合図するから


福田君はそう言ってた。
その6時間目がもうすぐ始まるんや。
どうしよう、胸がドキドキしっぱなしやわ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お言葉に甘えて福井弁で書いてみました。
まあ、「承」なので話の展開はありません。ただ、福井弁で話の続きが書きたかっただけかも、です。
とりあえず、あまーーーーーーーーーーーーーーい!!
「転」

6時間目は福田君お得意の数学の授業。
福田君の席は、私の右斜めちょっと前。
ちょうど黒板との間に福田君の席……黒板を見る振りして、好きな人の横顔を眺められるって最高じゃん?

いいなあ、すごーく真剣に黒板を見て、先生の言葉に一生懸命耳を傾けとるあの横顔、特に好きなんだよね〜。

ドキドキドキドキ。いつも以上にドキドキしっぱなし。
だいたい、さっきの放課中に福田君がよって来るんだもん。
ドキドキが倍増したっておかしくないよね?

このまま気持ちいいドキドキに酔って居られたら良かったのにと思ったのは、6時間目が終わる少し前。
今度は違うドキドキが襲ってきた。

福田君の出す合図って何だろ?
それをちゃんと読み取れるかなあ?
スルーしちゃったらどうしよう。
たわけ(馬鹿であほ)かって思われるかなあ?
どうしよう、ドキドキが吐き気に変わってきた。
やらかした……なんでこうなの?
吐き気の神様が居るなら今は止めて!お願い!!!
私を気持ち悪くしないで〜〜!!!!!!

そんな願いも虚しく、気がついたら胸と口を押さえて倒れていた。

……気を失う前に群青色のニューバランスの靴を見た気がするのは、気のせいなんだろうな……。


====================
「転」なのでちょっぴりビターにしてみました♪
甘いだけじゃ、甘さがすたる!
ビターな部分があるこそ、甘さが引き立つってもんですよ!

ちなみに、どこの方言かと聞かれると困ります。
しいていうなら名古屋弁と三河弁と関西弁が混じった、クリス弁かなあ(笑)。

では、あまあまの結を期待してますよ〜〜〜!!!
結


目を開けたら、真っ白な天井の下によこたわっていた。わずかに漂う、アルコールの臭い。
あぁ、終わった…福田くん、帰っちゃったよね…渡せなかったな、クッキー。じんわりと涙が込み上げてくるのがわかる。
それにしても誰が保健室に運んでくれたんだろう?目線をカーテン側に送ったあたしの目に飛び込んできたのは、紺色のスニーカーの踵。福田くん?
「待って!」
思ったより大きい声が保健室に響く。もうどうなったって構わない。あたし…
「あたし、福田くんのこと…」
「福田?」
ん?この声って…そこに立っていたのは、清水だった。
今度こそ終わった…


おそろいのスニーカーなんて履いてるんじゃねーよ…保健室でちょっと泣いて、真っ赤な目のまま校門に向かう。もうとっくに真っ暗だ。清水、言い触らすだろうな…明日から学校どうしよう…
「遅かったじゃん、もう大丈夫?」
校門の花壇に座っていたのは、今度こそ福田くんだ。嘘…待っててくれたの?
「なに黙ってんだよ」
だって…待っててくれるなんて思わなかったから。あたしは何も言葉に出来ず、にぎりしめていたクッキーを手渡す。
「サンキュ。あ、言っとくけど清水は様子見に行っただけだからな。保健室まで運んだの俺。」
「ごめん…」
「なんで泣いてんの?…また倒れたら、俺が面倒みるから。俺がついてるから。」

神様、倒れさせてくれて、ありがとう。



*,*,*,*,*,*,*,
こんな感じで大丈夫でしょうか…ご期待に沿えなかったら申し訳ないです。
福田くんを理想の男子に重ねながら楽しく書かせていただきました。
「承」

 私は辺りを見回して二人を探した。しかし周りの人たちに阻まれ、二人を見つけることはできなかった。
 私は仕方なく、彼女たちに電話をしようと、カバンから携帯電話を取り出した。
 人の邪魔にならないよう、壁際に行き、壁にもたれかかって登録してある番号を呼び出し、通話ボタンを押す。
 プップップッ、という音に続いて、プルルルッという呼び出し音に変わる。
 4コール・・・5コール・・・6コール・・・。
 いつまでたっても電話に出ない友人に、私は苛立ちながら、電話を切った。
 どこにいるのかわからない二人に苛立ちながら、しかし、二人とも子供ではないのだから、いつか連絡が来るだろうと思い、私はしばらく一人で物色することにした。
「起」


ポカポカ陽気の昼下がり、あたしはヨータと一緒に散歩をしていた。
ヨータというのは、一ヶ月後に結婚予定のあたしの婚約者だ。
手を繋ぎ、街角をふたりで歩いていた時、一人の子供が無邪気にあたしたちふたりに駆け寄ってきた。
前を向かずに、くすくすと笑いながら走ってくる。
このままでは危ないな、とあたしは思った。ヨータもそう思ったみたいだ。

ヨータはあたしから手を離し、子供に近寄る。
あたし達の予想通り、子供は何かにつまづき転びそうになった。
ヨータは子供が転ばないように、飛びつき子供をキャッチした。
その結果、子供は転倒をまぬがれた。
子供はヨータの手を振りほどくと、礼も言わずに、また無邪気にどこかへ走り抜けていった。

あたしは、その一部始終を呆然と見ているだけだった。
あまりにものことに、ただ見ているだけしか出来なかったのだ。

ヨータは子供が転倒を防ぐために、代わりに自分が転倒してしまった。

あたしは、その絶望的な出来事に打ちのめされてしまい、その場を動くことが出来なかったのだった。


〜 一日め 〜


その日の夕方、あたしは夕食をタッパに詰め込み、ヨータのもとへ行った。
思ったとおり、ヨータの周りには人だかりが出来ている。
どいてどいて野次馬さんたち、どうせあなたたちには何も出来ないのだから。

「・・・人参は抜いて欲しかったなあ」
「好き嫌いはすると体に毒よ」
「体に毒って・・・」
「・・・だって、まだ一週間はあるんだから、健康には気をつかった方がいいでしょ?」

周りの野次馬たちの反応はさまざまだ。
同情するもの、バカにするもの、迷惑がるもの、ヨータの行動を立派だというもの。
でも、直接ヨータに話しかけるものはいない。かかわりあいにはなりたくないから。

「一緒にいてくれないの?」
「野次馬が多いから今日は帰るわ、明日にはほとんどいなくなってるでしょうけれど。あ、夜は冷え込むから毛布置いてくね。風邪ひかないで」


〜 二日め 〜


昨日、転びそうになった子供は誰かは分かっていないらしい、と保安官が言っていた。
もうそんなことはどうでもいい。
見つかったからといって、取り返しはつかないのだから。

あたしは朝食を持って、あの街角まで行った。

ほらね、もうヨータ以外誰もいない。

「今日はあたしの分も持ってきた、一緒に食べよ。手は使えるから、まだ自分で食べられるよね」


〜 三日め 〜


昨日の夜、友達とケンカした。
もうヨータの世話をやくな、別れろと言うのだ。
気持ちは分かる、逆の立場だったらあたしもそう言うかもしれない。
それでもあたしはヨータの世話をやく。

ヨータの姿を見て、あたしは唖然とした。
思ったより早い。
下半身はもう地面の中に消えていた。
一週間ももたないかもしれない。

「・・・明日から人参抜くね」


この世界には気まぐれな神々がいる。
その神々はあたしたち人間を自分の土地に住まわせる代わりに、あるルールをつくっていた。
そのルールは神によってさまざまだ。
「満月の夜にいけにえの赤ん坊を用意しろ」「耳をそぎ落とせ」「水を飲んではいけない」「笑ってはいけない」
ルールを破れば、それは死を意味する。

そんなルールにくらべて、あたしたちが住む土地の神が提示したルールはある意味良心的とも言えた。

「転んではいけない」

そんなこと、他のルールにくらべれば、少し注意をすめばすむことだ。
神を恨んではいけない。
そのルールさえ守れば、神は平和な暮らしをあたしたちに保証してくれるのだから。
恨むべきは、そのルールを破ってしまった人間だ。

ルールを破った人間には罰がある。
でもご安心を、連帯責任ではありません。

ルールを破った人間は、少しずつ地面に沈んでいく。

少しずつ
少しずつ

少しずつ。
「転」

ヨータは目を見張って、それから笑った。
「いかにも君らしいね。この世の中にそんなことを考えるのは君だけだ」
「私、本気よ。行ってくるわ。神殿まで」
私の真剣な態度に、ヨータは怒った。
「そんなことが許されるわけがない。考えるだけでもいけないことだ。考え直すんだ」
ヨータが怒鳴っても、泣きついても、諭しても、私の気持ちは変わらない。
「どんな結果になっても後悔はしないわ。このままヨータが沈んでいくのを見守るよりも、私は自分にできることを探すの」
そういって、私はヨータにキスをした。
「必ず、助けてあげるから。それまで待っていて」
ヨータはもう何も言わなかった。そして、別れ際に「ごめん」とつぶやいた。
こんなに優しい人が沈んでゆくなんて間違っている。

神殿は高い高い塔の上にある。
長い長い、気が遠くなるほど長い階段を登らねばならない。
一日で神殿までたどりつくだろうか。

一段、また一段と階段を登っていく。
もう、陽は沈みかけている。
地上は見えなくなったが、まだまだ塔のてっぺんは見えない。
足がガクガクして、階段を登る度に膝がギシギシと音をたてた。
けれど私には時間がない。
休まずに登っていく。
夜も更けた頃、もう一歩も動けなくなり、私は階段で膝を抱えて眠った。

〜 五日め 〜
空が明るくなって、私は目覚めた。
そしてまた階段を登っていく。少しは休んだものの足の感覚はあまりない。
体がバラバラになったみたいだ。
持ち物はナイフのみ。これで神を倒すなんてちゃんちゃらおかしいのかもしれない。
でも、やるしかない。
陽が頭上に昇った頃、ようやくひとつのドアが見えた。
おそるおそるドアを開けてみる。
そこには、だだっ広い部屋で椅子がひとつ置かれていた。
そしてその椅子にはネコが一匹横たわっていた。
神殿というにはあまりにも素っ気ない部屋だった。
「あなたが、神様なの?」
「いかにも。お前が来ることは、知っていたよ」
神様は言った。
神様がネコだったことに、私は動揺し、右手に持っていたナイフを振りかざすことができなかった。
「誰にも私は殺せない。ナイフで刺されても、この塔から飛び降りても私は死なない。そして、お前がここに来た理由も私は知っている。ヨータを助ける方法がひとつだけある。それは、お前が私の代わりに神様になることだ。しかし、一度神様になったら、神様を自ら辞めることはできない。お前のように、タブーを犯して神殿を訪ねて来る者が現れるまで。お前は神様でいなければならない。ヨータは助かるが、ヨータに会うこともできない、さあ、お前は何を選ぶ?」
「結」

「私は神様になんかならない!!」
 私は、出る限りの声を出して叫んだ。
「では、ヨータはこのまま沈んでいくだけだ」
 たんたんを猫(神)は言った。
「ヨータも沈ませない。神様は私たちの中にいるの。私たちの常識を超えたところにいるの。目に見える神様なんて、存在しない。私はあなたを神と認めない!!」
 猫(神)はまばたきひとつせず、じっと私を見つめていた。
「神の声が聞こえて? 神の手を掴めて? ありえないわ、そんなの。神様は自分たちの中にいるから神様なの。こけたら沈むなんて、だれが決めたのかしら。確かに人間には無理だわ。そんな魔法みたいな力、持ってないもの。でも誰かが決めて、その通りになっている。じゃあ、誰かがやめることもできるはずよ。あなたもこけた人を沈めたいの?」
 猫(神)は、深いため息を漏らした。
「あなたにはやめる力があるはずよ!!」
「そうなのかもしれないし、そうではないのかもしれない。しかし、神となったあの日から、私の中に何かの力がみなぎる気がしていた。人間の言葉を話すこともその一つなのだろう。私の望みは猫であることだ。今までなぜそのことに気付かなかったのか。やはり神ではないのだろうな、私も。私にやめることができるのか、それはわからないが、やりもせずに決めつけることもないだろう」
 猫(神)はそういうと、目を瞑り、そのまま動かなくなった。
 そして数分後。
「神様?」
 私は呼びかけた。
 猫(神)は前足で顔を洗いながら、私のほうを見る。
 そして
「にゃ〜」
 と鳴いた。
「もしかして・・・」
 私は2日かけて登ってきた道をできるだけ急いで駆け降りた。
 その後ろには、猫がついてきていた。
 私はヨータが出てきているのを確信した。

―――
こんな感じに、してみました。
『承』


女王はたじろぐ。
今までそんなこと言われたことはなかった。
悪魔達のてっぺんに立つ立場として恋愛などには無縁だと思っていた。
でも女王だって女の子。
もちろん恋愛には興味がある。
愛読誌はティーンロード、特集「朝帰りのススメ」などはドキドキして読んだものだ。


わ、私もその恋愛というものが出来るのか・・・。


もう女王の胸はパンク寸前だ。
これで大人の仲間入りかも。
やったね。
彼女はもうすぐ俺のものさ。

しかし、しかし、2人の間には大きな溝があった。
女王は人間達を皆殺しにした悪魔たちの女王。
俺は悪魔たちを皆殺しにした戦闘一族、辛夷の一人。
2人の交際が許されるわけがない。
それが健全な恋愛だとしてもだ。

おお、なんという悲劇。
せっかく2人はその気なのに。

しかし安心してくれ。
最初に言っておいたように、これはハッピーエンドで終る物語なのだから。
『転』

「好き? この私を好きと言ったか。
 良いだろう。下賤な人の身たるうぬなれど、直答を許す。
 近う寄れ。寄ってお主の心の丈を告げるが良い。
 ――ただし、その刀でな!」

さすが悪魔どもの女王。
淀みもせずに言い切ると、優美な曲線を持つ長刀を引き抜き、
親衛隊らしき悪魔どもを下がらせて、こちらへ向けて悠然と構えた。

「よっしゃ、今行くぜ! マイスイ〜トハァ〜トォオオ!」

俺は一足飛びに彼女の間合いに飛び込み、同時に愛刀を引き抜いた。
美しいまでの金属音を上げて、互いの刀が切り結ぶ。
まるで愛を祝福する鐘のよう。
続けて3度、打ち返してはまた斬撃をふるう。
手の届く距離に彼女の美しい顔。
さっきまでの冷酷な素振りはどこへ行ったか、
その頬は微かに染まり切れ長の目が潤む。
見つめ合う俺の、視界が滲む。

“ああ。君の剣捌き、なんて美しいんだ!”
“あなたの剣の一振りごとに、熱い気持ちが伝わる”

一瞬の共感の後、また距離を取る。
寂しさに堪えきれず、また近づいては切り結ぶ。
切り結ぶたびに心が伝わる。

“ねえ。始めてあって、こんな事聞いて良いのか判らないけど”
“何よ、じれったい。なんでも聞いて良いのに”
“今、付き合っている人居る?”
“バカ!”

一瞬の隙が出来た。
彼女が大きく打ち込む。
大きく体勢を崩し、片膝をつきかける。

“そうか、居るのか……”
“バカ、バカ、バカ! 所詮人間よね。なんて鈍感なの”

大きく横に愛刀でなぎ払う。
彼女が後ろに飛びすさぶ。

“そうか、やっぱ俺じゃ無理だったんだよな。あ〜あ、自爆しちゃった”
“違うって言っているじゃない、この鈍感”

体制を立て直し、再度打合う。

“それってつまり?”
“今、フリーよ! って言うより、男と付き合った事無いよ”
“嘘ぉ! ラッキ〜”

俺達は、得物を同時に棄て、互いを抱き合うため同時に両手をひろげた。
奇しくもそれは、互いの最終奥義の構えに似ていた。
きっと、傍目には遂に武器に頼らない勝負に入ったように見えたろう。

緊張に包まれるギャラリーの悪魔どもをよそに熱い情熱で求め合う俺達。



もちろん、安心して良いのだ。
この話は、ハッピーエンドで終わるのだから。
『起』

そして俺は高田に呼ばれて高級マンションの一室に入る。
ドアを開けると強めの香の匂い、静かな曲が流れ薄明かりの中、奥を覗くと半裸の僧の姿。
その僧の格好をした男の後ろには宇宙を表した絵が飾ってある。
・・・ああ、今回はインド風できたのか。
前回はギリシャ風、前々回は神社風だったな、毎回よく考えるもんだ。

「おお山本やっと来たか、待ってたぞ。どうだ今回もなかなかいい感じだろ」
スタッフに色々指示を出していた高田、俺が来たのに気付き近寄る。
部屋の奥で厳しい表情で高僧の格好をしていた男も俺の姿に気付くと、急にヘラヘラ笑いながら腰を低くして寄ってくる。
「へへへ山本さんご苦労様です。」
「よお、今度はお前が教祖役か、偉くなったもんだな」
「嫌だなあ、からかわないで下さいよ。山本さんあっての僕らじゃないですか〜」
「本当だよ山本、俺達はお前がいないと何も出来ないからな。さっ、早くいつものやつを頼むよ」

高田に連れられ俺は部屋の真ん中に連れてこられる。
俺は高田たちの前でいつものように靴を蹴り上げる。

俺は靴を蹴り上げることによって明日の天気を占うことが出来る。
表なら晴れ、裏なら雨というやつだ。
的中率は百パーセント、今まではずれたことはない。
高田たちはこの俺の能力に目をつけ大きな商売をはじめた。
簡単に言うと詐欺というやつだが、これがなかなか巧妙だ。

高田たちのが興味があるのは明日の天気予報じゃない、明日の天災予報だ。
靴を蹴り上げて、落ちてきた靴が裏でもない表でもない真っ直ぐに立った時、それは明日天災が起きるという予報を表している。
高田たちはそこに目を付けた。

まずどんなかたちでもいいからそれっぽい宗教をたちあげる。
その教祖が予言する「明日にでも大きな災害がこの地に舞い込むであろう」と。
そして予言通り災害がその地を襲う。
信者達は思う、この教祖の言うことは本当だった、この宗教は本物だ、と。
そしてニセ宗教に騙された哀れな信者たちはニセ教祖の言う通り財産をどんどん寄与をする。
ただ、そのニセ教祖はそれ以上の予言は出来ないから長い間続けるとボロが出てくる。
だから、そのボロが出る前に寄与された金を全部持ってドロン、そしてほとぼりがさめたころにまた違うニセ宗教をたちあげる。
そういうカラクリだ。

俺の役目は一日一回このマンションに来て靴を蹴り上げるだけ。
これだけで仕事をせずに遊んで暮らせるだけの金はもらえる。

大きく蹴り上げられた靴は床に音を立てずにスッと落ち、真っ直ぐと縦に立った。
部屋の中で高田たちのどよめきが聞こえる。
「ま・・・真っ直ぐ立ったなあ・・・」
「き、綺麗に真っ直ぐに立ちましたね、ぼ、僕こんなの初めてみましたよ!あ、明日すごい天変地異が起きるんじゃないんですか?」
「びびってんじゃねえよ、また金儲けのビッグチャンスがきたんだよ。まったく山本さまさまだぜ」

これで俺の役目は終わりだ。
しばらくは遠くに高飛びしてほとぼりがさめるまで優雅なバカンスというわけだ。
高田たちは明日の天災が起きることを分かっていながらもその地で布教活動に精を出す。
それはそうだろう、天災が起こることを知って教祖様が逃げ出すようであればその宗教は信頼されないからな。
しかし、全くごくろうなことだ。せっかく天災が起こるということが分かっているのにそこから逃げ出さないなんて。
早速俺は旅行の準備だ、今回はなんだか大きな天災になりそうだから海外にでも逃げ出すことにでもしようかな。
「結。」
あれは高田のところのスタッフじゃないか!!??
もしかしてあいつ口をすべらせたのか??

山本は確かな情報が欲しかった。
もしあの魑魅魍魎のむれが俺を追いかけてアメリカまで来ているなら・・・。

死。

山本の頭に「死」という言葉が浮遊し始めた。

怖い。恐い。コワイ。

死という恐怖がこんな絶大で強力なもんだとは思ってもいなかった。
手が震えて、リモコン操作がままならない山本の右手は違うチャンネルを押してしまった。
そこには決死のレポートと画面に書かれたニュースが放映していた。
「ABC放送のジョン・リッキーがお伝えします。
この世の悪夢がわが合衆国にも手を伸ばしてきました。この事件をペンタゴンは緊急で対策本部を開き・・・オイっ!!やめてくれ!!!」

魑魅魍魎の軍団の先頭に立っていた大男が、マイクをリッキーから奪って一言こう言った。

「泥棒猫・・・よく聞け。
俺はあの日お前から靴を盗られた以来、この日を待ち望んでいたんだ!!
世界の破滅、悪魔の誕生。靴の進化・・・。おっと、これは言っちゃいけねぇんだ。まあ俺たちはお前を探す。見つけ次第こいつみたいにするぜ。」

そういった瞬間、大男はリッキーの肩に手をのせ、友好的な笑み・・・、いや悪魔の微笑みをカメラに向けた途端、手を振り落としリッキーの右半身がなくなった。

「まあ、そういうことだ。待っとけよ。」


ありえない・・・。
思考回路がいきなり何箇所もショートした様な、頭が燃えるような感覚になった。あの大男に見つかり次第殺される。媚を売って逃げるか??

いや、冷静になれ。
たかが靴2足だ。あんなあ殺されかたされてたまるか!
よし・・・。


戦うぞ。
あいつさっき、靴が進化とか言ってたな・・・。

山本が落ちていた靴を拾おうとした時、いきなり靴が燃え始めた。

「あっ!!!やばいっ!!火が!!!!!!」

水をかけても、新聞紙でたたいても火は消えない。
しかし、燃えているはずの靴も形を崩すことなく燃え続けていた。




一時間後。
魑魅魍魎の軍団が山本のホテルを割り出し、探し始めた。
大男が入った部屋に山本がいた。

「よう!久しぶりだな!!泥棒猫君。いや、山本君。
君が研究室から逃げ出したと聞いてびっくりしたが、それ以前に靴がなくなったことに対して殺意を覚えたよ。あの機密研究から情報が漏洩したということは国始まっての大事件だからなあ。」

山本は思い出した。
この大男が誰なのか。
こいつは研究所の企画チームの主任だ。
こいつがこの靴を発明し、俺たちの開発チームが製作に力を注いだ。

「俺の靴だ。まだ進化もしてないし、早いこと返せ。」

山本はすっと息をして言った。

「嫌です。」

そして山本は靴の紐を結び、大男に向かって叫びながら走った。

「この靴の秘密は全て分かったんだよ!この靴は天気や天災を暴くんじゃない。
 この靴自体が運命を左右することができるんだ。
天気や天変地異だけじゃない。戦争から企業買収、株価の値や夫婦喧嘩まで、この靴が『表』をむいたときは『良い結果』。裏をむいたときは『悪い結果』。そして、くつが上に向かって立った時は、『最悪』。

だけどな、さっきこの靴は進化したんだ。
  下に向かって立つ・・・そう『最高』のシチュエーションに変わるんだ。」

そういって山本は、靴を蹴り上げた。

大男は顔の血色が青くなり、靴を必死に拾おうとジャンプした。

バキっっっ!!!!

大男の手を山本の足が思いっきり踏みつけた。


「やっぱり俺が勝つんだよ!!」

そして靴を履きなおした山本は、外の悪魔たちを一喝!

「お前たちの居場所はここじゃないんだ。
お前たちの人生を左右してすまなかった。おれはこの靴を海の底に封印しようと思う。」

悪魔たちも地上に飽きてきたのか、早々と帰っていった。



パンっっっ!!!!

銃の発砲音だ。

どこからかと思った田中は、気が遠くなってきた頭をゆっくりと下ろすと、血だらけのシャツが目に付いた。
そう、撃たれたのである。

「はー、はー。お前が変な悪魔を呼んだせいで俺は高田さんのところから追い出されたんだよ。全てお前のせいだよ!これでよかったんだ。これで・・・」




下向きの靴は通りがかりの犬に蹴飛ばされ、上向きに立った。
「転」

ゆるやかに下る駅への大通りを、何度二人で並んで歩いたことだろう。
理亜を失いたくない。
しかし夢で見たことは変えられないこともわかっている。
悲劇を前もって訴えたところで、頭が変だと思われるだけだった。
哀れみや奇異の目で見られるよりは口をつぐむほうが良かった。
運命は変えられないもの。
対処する方法はただ一つ、あきらめだけだ。

通り沿いの商店は開店の支度に追われている。
5軒ほど先の金物屋のシャッターが低く開き、おばさんが掃除のバケツを持って出てきた。
スーツ姿の中年の男が腕時計を気にしながら僕ら早足で追い抜いていく。
「あ、あの、足元・・・」
僕は声をかけたが、男はしかめ面でちらりとこっちを見ただけで、歩調を緩めずに突き進んでいく。
「バケツ・・・」
僕がそうつぶやいた途端、男は掃除のバケツにを引っくり返した。
濡れたスーツの片足を振りながら男が何かわめき、おばさんが頭を下げる。
全て夢で見た通りの出来事だった。
僕は大きなため息をついた。

「どうしたの?タカシ」
理亜の眉が少し下がって、口元が小さくすぼむ。
戸惑った時のいつもの表情だった。
たまらなく愛しくなって、思わずその場で抱きしめたくなる。
胸の奥がひどく熱く、嗚咽がこみ上げかけるのをなんとかこらえた。
こうして理亜と歩くのも最後になる。
もうまもなく、タバコ屋の脇の路地から5人のチンピラが現れる。
僕らにからんできて、一人が理亜の腕をつかみ、振りほどこうとした理亜はバランスを崩して倒れる。
理亜の頭が道路に打ち付けられて、ドス黒い血が見る間に広がるのだ。
「なんでもない・・・」
震える声でそう答えながら、僕は顔をそむけた。
涙がたちまちあふれてきた。

理亜が足を止めた。
「変だよ?タカシ、どうしたの?」
僕の腕をつかんで顔をのぞきこもうとする。
通り過ぎる人たちが不審そうな目で僕らを見ていく。
理亜は理亜で僕の態度にただならないものを感じたのだろう、真剣な表情だった。
駄目だ、そんなことをしちゃいけない。
チンピラどもは寄り添って立つ僕らを見てからんでくるのだ。
理亜から離れれば、悲劇は防げるんじゃないのか。
「離せよ!」
思わず大きな声を出して身をよじったとき。
路地裏から出てきた5人の男の姿が目に飛び込んできた。
すいつけられるように、その真ん中の男と目が合ってしまった。
嗚咽のような、悲鳴のようなうめき声がもれる。
奴らは僕らを面白そうににらみつけながら、真っ直ぐに歩いてくる。
やっぱり駄目だ、運命は変えられない。
変えられっこないんだ。

「朝っぱらから喧嘩かぁ?」
男たちが酒臭い息を吐きながら僕らを取り囲む。
「ほっといて下さい」
理亜は気丈にも言い返すが、僕はもうだらしなく涙を垂れ流しながら立ち尽くすだけだった。
もうすぐ理亜が死んでしまう。
何も出来ない。何も変えられない。
「仲直りさせてやるよ。なぁ、ねぇちゃん」
ニヤニヤ笑いを浮かべながら一人が一歩前に出る。
「喧嘩なんかしてませんから」
理亜の声が震えている。
怖いに決まってる。
両手で自分の身体をかばうように抱きしめて、僕のほうをちらりと見た。
僕は首を振ってやることしかできなかった。
理亜の瞳の奥に、失望と嫌悪の色が浮かんだ。
「人の親切を断るもんじゃねぇぜ」
男が手を伸ばして理亜の腕をつかむ。
理亜のカバンが飛んで、足元に落ちる。
何もかも、夢の通りだ。
もう駄目だ。

「何をやっているか!」
大きな怒声が通りに響き渡った。
通りの向こうから、若い警察官が一人、まっしぐらに走ってくるのが見えた。
「うわぁ、やべぇ」
不良どもは顔色を変えて一斉に逃げ出した。
理亜は突き飛ばされて倒れこんだもののすぐに身を起こし、頭を打ちつけもしなかった。
夢と違う、光景だった。
立ち尽くす僕の目の前で、警官は理亜に手を伸ばし、助け起こしていた。
「間に合って、良かった」
日に焼けて黒い顔に笑顔を浮かべた警官は、カバンを拾い上げて理亜に手渡すと、
「では、気をつけて」
すぐに背を向けて歩き出した。
こんな光景はまったく夢と違う。
一体何故・・・。
「あ、あの!」
理亜が上ずった声で呼びかけると、警官は肩越しに振り向いて、
「事情はわかっているから。特に聞くこともありません。次の現場があるので」
現れた時と同様、迷いのまったくない足取りで立ち去っていった。
「ありがとうございました」
警官の背中に向かって、理亜がぺこりと頭を下げていた。
僕はようやく我に返り、
「理亜!あぁ、良かった、無事で・・・」
彼女の身体を抱きしめ、強く顔を押し付けたが、理亜は僕の腕の中から静かに身をほどき、
「うん」
僕の顔を見ようともしなかった。
「結」

その次の日、僕らは別れることになった。
僕は理亜にフられたのだ。
僕らがチンピラに絡まれ、
気丈にも彼女がチンピラの相手をしている時、僕は何をしていた?
そう。
ただ、涙を流し、突っ立っていただけだ。
今まで見た夢が現実のものとなったように、
その先にある悲劇を想像し、泣いていただけ。
だって、それまでも、夢でみたことが本当に起きてきた。
あの日も夢の通りだった。
スーツ姿の男が、バケツをひっくり返すことも。
チンピラたちが、タバコ屋の脇から出てくることも。
理亜が助かること、警官が現れることを除いて。。。。。
1年経った今でも、そういった夢を見る。
あの日、あの日の前日見た夢以外は、やっぱり夢の通り。
何故あの日だけ違ったのか未だにわからない。
夢には出てこなかったはずの、あの警官が去りぎわに言った言葉。
「事情はわかっているから。特に聞くこともありません。次の現場があるので。」
もしかしたら・・・もしかしたらだけど、
僕のように夢で未来を見ることの出来る人間は他にも居るのかもしれない。
そして彼は僕と同じ夢を見たのかもしれない。
あるいは似た夢を。
理亜が死んでしまい、彼が110番通報をうけ現場に駆けつけるまでの夢を。
彼は、理亜が死ぬはずだった未来を変えたのだ。
僕は今まで予知夢を見て変えようと何度か試してみた。
だが1度も変えることが出来なかった。
だから「変えれない」「変わらない」と思い込んでいたのかもしれない。
本気で、心の底から本気で変えようとしたことは無かったはずだ。
もしかしたら・・・僕にも変えることが出来ていたのかもしれない。
カモ、かも・・・カモ。
仮定だらけだけども。。。




昨日久しぶりに夢を見た。
今僕が乗っているバスの窓から、彼女の歩く姿が見え、やがて人ごみに消えていく夢を。

僕は運転手に声をかけた。
「すいません。止めて下さい!ここで降ります!!!」


終。
________________________________
2,3日前このコミュ入って初めて書きました。最近(先週ぐらい)まで小説なんて読んだことしかなくて、うまく書けてるかもわかりませんが、何度も消しながら楽しんで書きました^^
起


「あー、楽しかったね長野」
「あぁ、楽しかったな」
「またどっか行こうね」
「そうだな、暖かくなったらどこか行くか」
「うん、そうしよう」

 透と千秋は付き合って一年になる。透は大手の家電メーカーに勤めていて、まだ大学生の千秋のような長い休みはない。でも二人は大の旅行好きで千秋が夏休みや春休みに入ったときは、かならず二人で旅行していた。

「ねぇ、いいこと思いついたんだけど」
高速バスがサービスエリアを出発して少しすると千秋が話しかけてきた。
「へぇ、どんなこと?」
「私たちさ、付き合い始めてから四回旅行してるじゃん、これ合わせて」
「えっと…うん、そうだな」
「だから、このままいくと死ぬまでに絶対六十回は旅行行けるよね?」
「へっ?んまぁそうかもな、単純に考えれば」
「だよね!だからさぁ、死ぬまでに旅行六十回、ってのを二人の目標にしない?」
「あぁ、いいんじゃない」
「よしっ、決まりね」
嬉しそうに笑う千秋を見つめているうちに寝てしまったようで、もうすぐ着くよという声で目が覚めた。軽い食事をとり、千秋を家まで送ってその日はわかれた。
承

バンッッ!
 
自宅に着くと
透はテーブルの上に荷物を投げた。

『だりぃ‥なにが60回だよ‥バカじゃねえの?』

透は千秋との付き合いにうんざりしていた
 
あれこれ干渉してくる上に束縛もしてくる

そんな千秋との今回の旅行も透にとっては苦痛以外のなんでもない

千秋と別れない理由は

千秋の実家が富豪であり
楽をして生きていきたい透にはもってこいだからだ

そんな考えがあっても

好きでもない相手と長時間居るのは疲れる

透は疲れ果てていた

シャワーも浴びず
ベッドに横になると

携帯が鳴った
転

発信者は『千秋』となっていた。

だりぃ
また
おやすみのあいさつとか、そんなとこかな

でも
おかしいな
なんで自宅からなんだろう?
携帯から電話すればいいのに・・・


電話は千秋の実家の母親からだった。

話を聞くと、千秋の実家は事業の失敗により先日破産になったらしい。
どうやら、俺たちの旅行中にそれが分かって、携帯電話で母親から千秋に伝えたらしい。
現在、千秋の所在が不明で心配しているらしい。
ということで、一度自宅にも遊びに来たことがある透の携帯電話に連絡が来たのだった。

透は先ほどまで本人と一緒にいたが、今は一緒にいないこと、千秋のいる場所が分かったらすぐ連絡することを母親に伝え、電話を切った。



やれやれ

透はもう一度ベッドに横になった。

これであの女とも手切れだな。
もういい。
金がなくなったあの女なんて、もう何の価値もない、どこに行ったかは知らないが、知ったこっちゃないさ。

透は目をつぶった。
とにかく今日は疲れた。このまま眠ることにしよう。


・・・

でも待てよ。
じゃあ
なんで千秋は俺に電話をかけてこないんだ?
いつも、どんなくだらない時でも電話をかけてきたのに、
テレビのドラマが面白かった時
自分の部屋にゴキブリが出てきた時
俺が残業で遅くなった時
俺が仕事の件で落ち込んだ時

あいつはどんな時でもすぐ俺の携帯に電話をかけてきた。
そんな千秋が、この人生最大のピンチに俺に電話をかけてこないなんて・・・




ああ
分かった

あいつ

知ってたんだな

俺が

財産目当てで付き合ってるってことを

だから
実家が破産して財産がなくなった自分は何の価値もないってことが
分かったんだ。

だから
あんな約束したんだ。

この先
絶対かなうことのない約束を・・・



「だよね!だからさぁ、死ぬまでに旅行六十回、ってのを二人の目標にしない?」






透は頭を掻きむしった。



だからどうだって言うんだ、
もういいじゃねぇか、あんな女。
あっちから連絡がこないっていうことはいいことじゃないか、願ったりかなったりだぜ!

だけど
だけど

透は自問自答する。


じゃあ
なんで俺はこんなにイライラしてるんだ?

『 起 』

まただ。

あたしは深くため息をつく。
また、彼があたしのアパートの前で待ち伏せをしている。

「ねえ豊君、確かあたし、お断りしたはずだけれど」
「・・・知ってる。」
「じゃあ、こんなところで待ち伏せしてるなんてルール違反だよね。世間的にはそれって、ストーカーって言うんだよ」
「・・・分かってる。でも、どうしても納得出来ないんだ。だって・・・、自信過剰かもしれないけれど、君だって僕に好意を持ってるはずだと・・・」
「残念、自信過剰です。この話おしまい、じゃあね」
「待ってよ!」
家の中に入ろうとするあたしを豊君が引き留める。
「頼むよ、僕だってこんなストーカー行為みたいなことなんかしたくないんだ。ただ、どうしても、どうしても納得出来ないんだ。せめて、せめて理由を教えてくれないか。そうしたらきっぱりあきらめるから」

理由。
理由を教えてくれたらあきらめるですって?
果たしてそうかしら?
こんな作り話なんて信じられるかって逆上するだけだと思うわ。
でもいいわ、そこまで言うのなら教えてあげる。
ホントの理由を。

「あたし見えちゃうのよ」
「見えちゃうって何が?」
「・・・寿命」
「寿命!?」

馬鹿な作り話だと思うだろうけれども、あたしは昔からそれが見えちゃう人なのだ。
ちょうどおでこ辺りに数字が見える、それが死ぬまでのカウントダウン。あと何時何分何秒、そんなところまで分かる。
その数字は正確で、そして絶対的なもの。どんなことをしたって変えることは出来ない。

その能力のおかげで、あたしは今までずっとつらい思いをしてきた。
大切な人、大事な人の寿命が分かってしまう、そして分かっていても何もできないもどかしさ、つらさ、悲しさ。
お父さんの時もあたしは何も出来なかった。目の前で消えていく命。
絶望とはこういうことを言うのだと身にしみて理解した。
あんな思いはもう二度としたくない。

だからあたしは決めたのだ。
大切な人、大事な人をつくらないようにしようと。
「だから入ってこないで、あたしの心の中に入ってこないで。あたしの大事な人にならないでよ!」

黙ってあたしの話を聞いていた豊君はそっと微笑む。
駄目だ、見透かれている。
いつもそうだ、豊君はあたしの心の中にゆっくりとゆっくりと入ってくる。
「残念、もう手遅れだよ。」

結局、あたしは豊君とつき合うことにした。
ドアの前で軽いキスをしたあと、豊君は自転車に乗って帰っていく。
その後ろ姿にあたしは大声で叫んだ。
何度も何度も叫んだ。

「またね!」

豊君は照れながら手を振ってくれた。

『承』

豊君の姿が見えなくなってから、あたしは自分の部屋へと戻った。
2DKのアパートに一人きり。
お母さんは仕事で、夜遅くまで帰らない。
最近ずっとそうだ。
本当に仕事かどうかも、少し怪しい。
最近職場に恋人ができたようだから、もしかしたら仕事を言い訳に二人で会っているのかもしれない。

「お父さん…」
玄関の鍵をかけた後、そのまま扉にもたれかかり、目を閉じた。
優しかった父の笑顔と、冷たくなった体に縋り付いて泣いた時の記憶が同時に蘇ってきて、苦しくなる。

物心ついたころから見えていた、“ほかの人には見えない時計”。
それが、寿命を表すもので、自分にしか見えないものだと知ったのは、一体いつだったろうか?

もう、思い出すこともできない。
そのくらい昔から、あたしには、当たり前のように見えていた。

死ぬ時がわかっていたって、原因までわかるわけじゃない。
必死に、「死が近づいている」ことを知らせようとしても、信じてもらえないどころか、気味悪がられたり、嘘つき呼ばわりされたり。

それでも、幼いころのあたしは、身の回りで起こる“死”を遠ざけようと必死だった。
それが、歳をとるごとに、だんだんと諦めに変わり、絶望へと変わったのは、唯一あたしの力を信じてくれていたお父さんが死んだ時から。

父親の死は、もう、何年も前からわかっていた。
だから、なんとか死なないでほしくて、健康には十分気を付けてもらったし、長寿祈願のお守りは毎年かったし、長生きのおまじないもたくさん試した。
でも結局、時計の数字には何の影響も与えられないまま、運命の日は来た。

「お前のせいじゃないよ。きっとこれは、運命なんだ。」
死の前日、お父さんは笑っていた。
「明日は、いつも通り、仕事に行くよ。きっと何をしていても、“終わり”は来てしまうと思うんだ。だったら、最後まで、いつも通り、自然に暮らしていたい。」
泣きながら「明日は一日、一緒に家にいよう。」というあたしの頭をなでながら、静かに首を振った。

そして翌朝。
仕事に向かう途中の道で、お父さんは死んだ。
最後の最後まで、死を回避する方法があるはずだと、こっそり後をつけていたあたしの、すぐ目の前で。

わかっていたのに、何もできなかった。
何もできないなら、なぜ、あたしにはこんな力があるの?
せめて、死因がわかっていたなら、対策の立てようがあるのに。
こんな力は、無意味だ。

お父さんが死んでから、あたしは前にも増して、人と深く付き合わないようになった。意識的に、深く関わることを割けていた。

「豊君…」
唯一の例外、付き合ったばかりの恋人の顔を思い出しながらポツリと呟いた。
『 転 』


「またね!」



あの時

あたしはあの時精一杯叫んだ。

ねえ豊君、あの時、あたしがどういう気持ちで「またね」って言ったか分かる?
おでこに見えるカウントダウン、
だけどあたしにはどうすることも出来ない。

あたしに言える精一杯の言葉は「またね」だけだったの。



・・・
だから嫌だって言ったのに。


ふと時計を見る。


あと一時間ほどある。


・・・
あと一時間もあるのか。
あと一時間しかないのか。


あたしはこれからどうすればいいのか。
あの時豊君のおでこに見えたカウントダウン、今ならあと一時間ぐらい。


このままただ待つしかないのか。
お父さんの時みたいに無駄なあがきをするのか。

それとも
それとも


他に何か選択肢があるのだろうか。l
『結』

結論からいうと、結局あたしは、何もしなかった。
下手なことをして、愛しい人の死の瞬間に立ち会う事が、怖かった。

なんで、豊君なの?
好きに、なりたくなかった。
もうすぐ死ぬとわかっていたから、ずっと、拒み続けてきた。
なのに、気が付くと、いつもあたしの心の中にいた。

なんで、彼が死ななきゃならないの…。
私は目を閉じて、ただ、ひたすら、神様に祈った。
豊君の無事と、自分の能力の消滅を。



…

…

チュンチュン…
雀の鳴き声がして、目を開けると、もう、朝だった。
お母さんは、昨夜は家に戻らなかったらしい。

あれ?あたし、なんでこんなところで寝て…
「豊君!」
飛び付くように携帯を手に取り、豊君に電話をかける。

「もしもし。」
呼び出し音がなる前に、男の人が電話にでた。

「あ、あの、豊君…は?」
「僕が…どうかした?」
笑ったような困ったような、優しい声。
「良かった!無事…だったんだ…!」
信じられない気持ちと、安堵が同時に込み上げる。
「…。」
「豊君?」

「昨日は、ありがとう。無理を言ってしまって、ごめんね。」
「…急に、どうしたの?」
豊君は、答えない。

「あのさ、あの世とか、来世って、信じてる?」
急に問われて、あたしは言葉に詰まった。
「人はさ、死んだらそこでおしまいってわけじゃないんだよ。僕は、これから旅に出なくちゃいけないんだ。」
スーっと、血の気が引いていく。

「短い間だったけど、君の恋人になれて、僕は幸せだったよ。」
「何の話してるの…?豊君…。」
寒い。すごく、寒い。

「君の力は、僕が神様に返しにいくよ。これからは…普通の女の子として、幸せに生きて欲しい。」
震えが、止まらない。 溢れた涙が、頬を伝う。

「また、ね。」
ふわっと、暖かい空気に包まれ、身体が軽くなったような気がした。

「待って…豊君…!」
必死に呼び掛けたけど、もう、携帯からは何の音もしない。
慌ててリダイヤルしようとしたけど、発信履歴に豊君の名前はなかった。


そのとき。
ガチャガチャッ!
鍵を開ける音がして、玄関の戸が開いた。

「ただいまー。まったくもう!急なトラブルだからって、女性に徹夜仕事させるなんて…。」
文句を言いながら靴脱ぎ、部屋にあがるお母さん。

彼女のおでこの前には、もう、何も、見えなかった。

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