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ポラリスプロジェクトコミュの人身売買関連の最新のニュース:[米国] ロングアイランド奴隷事件から見る、米国の隠された問題の実態

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By PAUL VITELLO
December 3, 2007 

二人の小柄なインドネシア女性は、英単語をわずかしか知らない。知っている単語はWindex、Fantastik(洗剤のことで形容詞ではない)、そしてMaster(だんな様)やMissus(奥様)。これは、5年間、住み込み家政婦をしている夫婦にそう呼ぶよう教えられたからだ。住まいは木々に囲まれたNorth Shore、ロングアイランドの高級住宅地帯ムットタウンである。

妻のVarsha Sabhnani35歳と夫のMahender51歳は米国に帰化したインド人で、現在米国地方裁判所でこの1ヶ月審議にかけられている。二人は家政婦に対する強制労働罪で訴えられている。1865年南北戦争以来使われている言葉でいえば「奴隷扱い」した罪である。

米国政府は起訴状で、この女性二人は「現代の奴隷制度」の犠牲者であると非難した。

このような事件が起訴されることは稀である。しかし、人身取引被害者保護法が2000年に成立して以来告発件数は増加している。以前は年間で数件だったのが約12件へと急増。人身取引被害者保護法は、売春や子供を取引し強制売春を行わせる業者を主な対象としていることで有名である。しかし、ここ数年で Sabhananis事件のようにメディアで取り上げられた数少ない事件の影響で、連邦と州では性取引対策本部を開設し、家庭内労働者の搾取に対する取り締りを強化している。 

昨年、サウジアラビアの王族の妻がボストンで、3年間にわたり2人の家政婦を事実上奴隷扱いしたとして有罪判決を受けた。2005年、ウィスコンシン州の医師2人がフィリピン人女性を雇用契約によって20年間拘束していた罪で有罪となる。連邦検察官は2003年、メリーランド州の夫婦がブラジル人女性を家政婦として自宅で15年間ただ働きをさせた罪で有罪判決に至らしめた。

ロングアイランドの事件で検察側は、インドネシア女性2人は大富豪の広い屋敷の中のクローゼットに寝泊させられていたと述べた。日夜強制的に働かされ、脅迫、拷問を受けた。のし棒やほうきでぶたれ、食事も満足に与えられず、ごみ捨て以外の外出を一切禁じられていた。審議が月曜から予定されている被告側弁護側は、インドネシア人女性らが証言を偽っているとし、連邦移民法によって拷問や虐待をうけた被害者に対し支払われる補償金を早急に狙うもので話をでっち上げていると主張。女性らのケガは、kerokanという伝統的なインドネシアの民間療法を自ら行ってできたものだと主張した。


労働搾取を目的とした人身売買を調査するアドボカシー団体や検察当局、調査団によると、家庭内労働者は性産業に従事している女性と同じくらい搾取されやすく、売春している女性よりも連絡をとるのが難しいこともある。

「家政婦の強制労働事件に非常に残酷なケースが多いのは、女性たちが何年にも渡って拘束されており、完全に孤立状態だからだ。」とGlobal Workers Justice Alliance事務局長Cathleen Caronは述べている。当団体はニューヨークを拠点としたアドボカシー団体で、移民労働者の搾取に対し法的な援助サービスを行っている。CathleenはSabhnani事件を興味深く見ていたという。ロングアイランドのインドネシア人女性の事件は、ファーストネームであるSamirahとEnungだけが彼女らの身元として政府によって明らかにされた。女性らの年齢は51歳と47歳である。両者とも身長が5フィートに満たない。何時間にも及び、通訳をともなった証言と詰問が行われたが、途中何度も泣き出して中断された。現代の米国における現代的なライフスタイルのどの概念とも相容れない残酷な話であった。

Sabhnanisは親戚と香水工場を営んでおり、インドネシアと取引関係があった。2002年ジャカルタで女性二人を嘘の約束でそそのかし、家族と職場から引き離した。そしてSamirahが5月に逃亡するまで過酷な虐待行為を行っていたと語った。

陪審員の評決がどうであろうと、この事件は米国の裕福な家庭の中に隠されている労働搾取の問題(多くの場合女性が被害者である)の輪郭を浮かび上がらせた、と労働者搾取に取り組む擁護者は語る。

米国自由人権協会の弁護士Claudia Floresは、近年、ワシントン市内の在外外交官に強制労働させられていたインド人女性3人の代理人をつとめた。Flores氏は、外国人労働者は米国の文化や言語になじめないこともあり強制労働の被害に遭いやすく、更に孤立しているためより被害を受けやすい、と語る。

「多くの場合、訪問者と話すことすら禁じられています。家政婦が2人の場合、互いに話をすることも禁じられている場合が多い。電話は監視され、一人での外出も禁止されています。私たちのもとにやってくるのは、ラッキーにも助けを求めることができた女性たちだけです。これは本当に氷山の一角に過ぎないのです。」Flores 氏は語る。

国務省が7月に発表した報告書「夢を追いかけて、悪夢に出会う」では、米国や海外での家庭内労働者として働く女性の搾取は「ほとんどが長い間処罰されずにきた」と述べた。

国務省に属する人身売買監視撲滅オフィスの調査員の報告書で、政府は「発展途上国からの技術を持たない女性たちで、とくに家庭内労働者として働く女性」に着目していることを強調している。「米国のような先進国では、家庭内労働者として働く女性は奴隷労働の被害にあいやすい」と報告している。

米国裁判省のスポークスウーマンJodi Bobbによれば、ロングアイランドの家政婦事件は、2000年の人身売買禁止法通過以来、強制労働と労働的人身売買で告発された100件のうちのたった1つに過ぎない。告発された事件全てが家庭内労働者を巻き込んでいるとも限らないが、告発件数は、2000年までの7年間と比べて2倍の増加を示している。

米国内で強制労働させられている移民家庭内労働者の数は、推定上の数字である。しかし、確かな情報のものもあり、国務省の報告によると、米国へ人身売買される人数は年間15,000人から20,000人と推定されている。

この数字からは、人身売買の目的(売春、工場、農場、家庭内労働)を特定することはできない。しかし、Flores氏やCaron氏などの擁護者達は、同氏の属する機関に情報が寄せられた何百件もの事件をもとに、家庭内労働者は全体の約3分の1を占めていると推定している。つまり、毎年5,000から7,000人の移民家庭内労働者が雇用されており、高い確率で雇い主による虐待にあっている、と述べている。

SamirahやEnungが経験したと主張するような暴力的な環境にいようがいまいが、米国への移民家庭内労働者の大部分は最貧国出身の教育を受けていない女性である、と国務省は報告している。なかには子どももいる。

移民女性たちは、母国では考えられない高賃金が記された雇用契約書にサインしているかもしれない。(SamirahとEnungは当初、月給100ドルで同意)しかし、契約によって米国での選択肢が厳しく制限されてしまう。新しい雇用者の協力の元入手した短期ビザは、通常3-6ヶ月で無効になるため、雇用者から屋敷を出れば必ず逮捕されると脅迫され弱みに付け込まれてしまう。

「同じ人間に対して、どうしてこんなことができるのでしょうか?移民家庭内労働者を奴隷同然に搾取する人々には、医師、弁護士、大学教授、実業家、外交員とあらるゆ職種の人がいます。どの職業にも共通していえることは、適正賃金を払う金銭的余裕があり、しかしそれを拒否しているということです。」ニューヨーク弁護士協会の女性と子ども移民プロジェクトのディレクターSuzanne Tomatoreは語る。当プロジェクトでは移民家庭労働者の救済活動を数多く手がけている。

Tomatore氏によると、起訴に至るのが困難な理由は、明らかに言語や文化の壁、恐怖、そして多くの場合、絶望だ。同氏のクライアントの一人の24歳の女性は、6歳から同じ家で家政婦をしてきた。

「彼女は学校に通ったことがないのです。」Tomatore氏は、帰国したアフリカの外交員が雇用者だったという以外に、この女性と雇用者を特定しようとしなかった。女性は永住権を与えられ、現在はある事務所で働いている。


ロングアイランド裁判でSamirahは、拷問の様子を語りながら時折すすり泣きに襲われた。限界になるまで階段を走って上り下りさせたり、辛いチリ唐辛子を丸ごと食べさせられたり、また立ったまま「The Missus(奥様)」に沸騰したお湯でやけどを負わされた。時折Enungもすすり泣きした。彼女はSamirahに対する拷問を強制的に手伝わされたと語った。

この事件は普通とは違う、と擁護者は言う。女性の訴えを確証する証言者が他にいるからだ。ひとりは、Sabhnaniの香水会社で働いていた女性だ。事務所がムットタウンの屋敷に隣接していた。目撃者は、ある日Samirahが額から流血しながら地下の階段を這いあがっているのを見てショックを受けたと述べた。そして、SamirahとEnungはSabhnaniに殴られたと訴えたと証言した。

庭師による証言はこうだ。ある朝、ぼろぼろの身なりをしたEnungがこっそり庭師に近寄ってきて、自分のおなかを指差し、知っている数少ない英単語の中から一言、「ドーナツ」と発した。庭師は「ドーナツ」と言い返し、トラックにあった半ダースのドーナツを差し出した。「ありがとう、ありがとう、ありがとう」と Enungは泣きながら、屋敷へと走り去ったと証言した。

[The New York Times] 12/3/2007

翻訳協力:富崎 智美 

http://www.nytimes.com/2007/12/03/nyregion/03slavery.html?_r=2&pagewanted=1&oref=slogin

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