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第二回JBR掲載(準備中)コミュの重なる魂、分裂する心 その2

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 少女の顔が青白く見えるのは、林に注ぐ星の薄明かりのせいだけではなかった。ショットガンの散弾は少女の右目と腹部の内臓いくばくかを抉り、倒れた地面は血で黒く湿っている。その胸は小さく上下し、か細い呼吸音が断続的に喉から漏れている。しかし、誰の目にも明らかだ。重要器官の欠損か、失血のショックか、――いずれにせよ彼女の体温は臥した夜の大地と同じになり、朝を待たずして死に至る。

 死を前にして少女の心はしかし、ひどく歪んだ安息の中にあった……

                *

少女(私……死ぬんだ。なんだか少しほっとしてる……)

 今にも途切れそうな意識の中、私は、唯一の血縁者である母親のことを考えた。私には生まれつき、父親がいなかった。否、わからなかった。女手一つで私を育てた母親は、父親のわからない私のことを汚いものでも見るような目で見た。母は仕事で悪酔いして帰ってくる度に私を殴り、「おまえなんて生まれてこなければよかった」となじったので、自分でもいつしかそう思うようになっていた。
 父と再婚してからは、母は自分を遠ざけるようになった。殴られ、なじられることは無くなったが、それで私は母の暴力のはけ口となる役目さえ失ったのだった。

 私を撃った少年は、ひどく震えた体で、怯えた目で私を見ていた。その様子がまるで捨てられた子猫みたいで――銃口を向けられていることも忘れて、いつものようにポケットのお菓子を差し出そうとしてしまったのがまずかった。
 だけど、私にはお似合いの結末。誰にも必要とされなかった私は、誰にも看取られることなくここで死ぬ。やっと、終わるんだ。

 そうして、まだかすかに残っていた左目の視力が消えようとした時――

???「終わるものか、巡るばかりさ」

 ――潰えようとしていた聴力が、その声を拾った。

少女(――!誰……?)

???「おや? 僕の声が聞こえるのですか? クフフフフ、散歩はしてみるものですね」

 私の傍らにはいつの間にか、奇妙な男が立っていた。奇妙と表現したのは、外見の年齢は私と同じ位なのにもかかわらず、その湛えた笑みがまるで生き飽きた老人のような――人生の、或いは死後のですら――苦しみに擦り切れたものだったからだ。

少女(だ……誰? 何者なの?)

 信じられないことに、体を起こすことができた。周りは草花の茂る高原……。私はもう、死んでしまったのだろうか? けれど、死後の世界で知らない男に会うなどという話は聞いたことが無い。

「僕の名は六道骸。僕と君は、似たもの同士かもしれない」

少女(え……?)

 彼はそう言って、またあの苦しそうな笑顔を浮かべた。

骸「一つ、お願いがあるんです。君の元いた世界に帰ることが出来たら、身寄りの無い死にかけの捨て猫を二匹――いや、片方は捨て犬ですかね。その保護をするのに、体を貸して欲しいんです。その代わりに、君に僕の力を貸しましょう」

 そう冗談めかして言うと、彼は最後に真剣な表情で、(それでも口元には笑みを湛えたままで)私の目を真っ直ぐに見てこう言ったのだ。

骸「僕には、君が必要です」

 その言葉は、私の心の十数年分の空白を埋めるかのように、その隙間から入り込み、私を満たした。ああ――そうだ。私が求めていたのは、誰かに必要とされることだったのだ。そうやって自分が生きていることを肯定してくれる誰かを、ずっとずっと求めていたのだ。絶えずその顔に浮かべている微笑に混じる、どこか寂しそうな雰囲気。きっと彼も、自分と同じ類の傷を持っているのだろう。そして私には確信できた。彼のその傷が大きいだけ、自分と同じ境遇の者を、決して裏切ることはないのだと。

少女「……私、あなたの力になりたい」

 自然と口からこぼれたその言葉に、何故か驚きは感じなかった。
 気付けば頬を流れる涙にも、別段驚くことは無い。いままで喜びという感情を知らなかった自分には、こうすることしかそれを表現する手段が無いのだから。

骸「……では、体を僕の力で補ってあげましょう。苦しみも悲しみも、前の名と一緒にここに置いていきなさい。そうして人の命は巡るのだから。新しい君の名は――」


 目が覚めると、頬は涙で濡れていた。
抉られたはずの腹部は傷一つ無く、右目には眼帯が巻かれているのがわかった。そして左手に握られている三叉の槍。おそらく幻覚によって象られているそれから、彼の力が流れ込んで来る……。内臓も眼帯も、きっとその産物なのだろう。私はその、骸の、いや、骸様とのつながりである槍の柄を強く握り締めた。
 立ち上がり、周囲を確認する。十数分とも思えた骸様との邂逅は、どうやらほとんど一瞬の間に行われたようだった。
 心が、充足している。誰かに必要とされ、誰かのために生きるという意志が、私の中に満ち満ちている。骸様に言われた通り、かつての自分はここに置いていこう。
 私は涙を拭い、槍の刃を使って、肩まで伸びた髪を切り払った。
 
「――私はクローム、クローム・髑髏」

 残った左目に意志を湛え、生まれ変わった私は、強くそう自分に言い放った。


【クローム・髑髏@家庭教師ヒットマンREBORN!】
[状態]:健康
[道具]:荷物一式 三叉の槍(幻覚) 【支給品:不明】
[思考]:骸のためにこのゲームを勝ち残る。
[備考]:内臓の一部は幻覚によって補われている

現在地:F4
日時:一日目2:00

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