香港ノワール映画－英雄片－コミュの【香港ノワール／絶頂期】カジノ･レイダース

原題：至尊無上(Casino Raiders)
香港　ウインズ･ムービー･プロダクション作品　89年　99分　カラー　松竹富士配給

製作：ワーレス･チャン／ジミー･ヒョン　監督･脚本：ジミー･ヒョン／ウォン･ジン　撮影：ヘンリー･チャン／ジゴ･リー　アクション監督：チャン･ウイガイ／チン･ユーサン／リー･キン･チュウ　音楽：ジェームズ･ウォン／ロメオ･ディアズ
出演：アンディ･ラウ／アラン･タム／ロザムンド･クァン／アイディ･チェン／ロン･フォン／チャールズ･ヒョン

－解説－
日本人ヤクザのカジノ荒らしを暴いたため妻を誘拐され､親友を殺された元ギャンブラーが報復に乗り出す姿を描いたアクション映画。出演は『インファナル･アフェア』(2002年)などのアンディ･ラウ(劉德華)､『魔界天使』(82年)などのアラン･タム(譚詠麟)､『サンダーアーム』(86年)などのロザムンド･クァン(關之琳)､『英雄剣』(93年､テレビ放送)などのアイディ･チェン(陳玉蓮)､『ロンゲスト･ナイト』(98年)などのロン･フォン(龍方)､『九龍帝王』(92年)などのチャールズ･ヒョン(向華強)ほか。ジミー･ヒョン(向華勝)とウォン･ジン(王晶)の共同監督､89年作。

－物語－
刑務所を出所したクラブ(劉德華)は親友サム(譚詠麟)と再会し､アメリカへ飛びカジノを経営する友人ロン(向華強)の依頼で宮木組の賭場荒しを摘発する。しかし香港に帰ると宮木組が仕返しに彼らを襲撃し､サムを助ける為クラブは左手を負傷した。サムもまた何者かに刺され､退院後アメリカで出逢ったキャサリン(陳玉蓮)と結婚し賭博から足を洗った。サムと決別したクラブは左手の屈辱を晴らす為宮木組長の息子太郎(龍方)を欺き大金を得る。太郎は報復にキャサリンを誘拐､クラブは恋人ボボ(關之琳)と救出に向かうが二人とも殺された。怒りに震えるサムは､全てを投げ打ち宮木組との対決を決意する。

オリジナル予告編動画↓

コメント(4)

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[1] mixiユーザー 12月21日 00:57

今から丁度30年前､1989年のクリスマスシーズン映画として香港で公開され､空前のメガヒットを記録した『ゴッド･ギャンブラー』(画像左)。そのプロトタイプといわれるのが本作です。とはいえ､コメディーの要素も強く何でもアリの娯楽映画となった『ゴッド･ギャンブラー』と異なり､本作は『男たちの挽歌』(86年)以降流行した"香港ノワール"のフォーマットに沿ったシリアスな作風で撮られています。
クレジットではアンディ･ラウ(劉德華)が先ですが､実質的な主役はアラン･タム(譚詠麟､画像中)で､『愛と復讐の挽歌･野望編』(87年)以降確立したヒロイック路線の到達点ともいえる堂々たる演技を見せています。以前も別項でご紹介した通り､日本では『魔界天使』(82年)やジャッキー･チェン(成龍)監督兼主演の『サンダーアーム』(86年､画像右)など､コミカルな三枚目寄りのイメージが強いですが､元々アランが映画俳優としてのキャリアをスタートさせたのは台湾で､文芸作品(青春･恋愛映画)にて現地の人気女優の相手役から偏執的な悪役までこなすなど､性格俳優的なキャリアを積んでいたんですね。その後80年代初頭にシネマ･シティ(新藝城)が設立するにあたり､中心スターとして香港へ呼び戻され､初主演した『魔界天使』が非常に好評だったことから､その後『愛と復讐の挽歌･野望編』(87年)にゲスト出演するまでコミカル路線が続いたのでした。

[2] mixiユーザー 01月04日 13:49

本作ではロザムンド･クァン(關之琳､画像左)とアイディ･チェン(陳玉蓮)が､それぞれアンディとアランの相手役ヒロインに扮しています。アイディ･チェンはTVドラマから人気を博した女優で日本では無名でしたが､ロザムンド･クァンは前コメントでもふれた『サンダーアーム』でアランの恋人役として既にお披露目済の存在でした。この『サンダーアーム』などゴールデン･ハーベスト作品に出演していた時期のロザムンド･クァンは美人ながら正直垢抜けない感じでしたが､本作に出演した辺りから洗練された華やかさをまとい着実にスター女優の階段を上っている印象でしたね。
また本作では､ふたりの俳優が長いブランクから復活を遂げています。1人目はアランとアンディのアメリカでの友人役に扮したチャールズ･ヒョン(向華強､画像中)です。73年に映画デビューし､日本でも公開された『子連れドラゴン女人拳』(73年)始め20本を超えるカンフー映画に主演。83年､台湾のオールスター映画に出演後突如表舞台から姿を消します。そして翌年､本作の制作会社であるウインズ･ムービー･プロ(永盛電影)の母体となる独立プロダクションを設立。プロデューサーとしての活動を本格化させます。そして87年､チョウ･ユンファ(周潤發)主演のウインズ･ムービー･プロ作品『コメディー男たちのバッカ野郎』(テレビ放送)を大ヒットさせます(87年度興収第9位)。この年はサモ･ハン(洪金寶)監督兼主演の超大作『イースタン･コンドル』の実質的な失敗により､トップを走っていたゴールデン･ハーベストの勢いに急ブレーキがかかり､それに次ぐシネマ･シティやD&Bなどの新興勢力も落ち着きつつありました。翌年も興収ベスト10に入る作品を送り出したウインズ･ムービー･プロは､アメリカや日本にロケした超大作である本作を89年に発表。チャールズ･ヒョンが久々に俳優復帰した本作は､興収第5位に食い込む大ヒットを記録。続くクリスマス公開でメガヒットとなった『ゴッド･ギャンブラー』(89年)にも"銃神"ドラゴン役で出演し､コレを当り役とするのです。
もうひとりは､本作のラスボス的存在となった日本人ヤクザ宮木太郎役のロン･フォン(龍方､画像右)です。71年にショウ･ブラザースでデビュー後73年に台湾へ渡り､本名である李健民(英語名ジェームス･リー)の名義で50本以上のカンフー映画に出演。79年､ブルース･リー(李小龍)やジャッキー･チェン(成龍)を育てたロー･ウェイ(羅維)監督にスカウトされ芸名を前記の龍方に変え､主演作を２本撮りますがパッとせず､ロー･ウェイの下を出た後は映画界を離れ香港でレストランを経営していたのです。それが88年､本作の共同監督でチャールズ･ヒョンの実兄であるジミー･ヒョン(向華勝)の熱烈なアプローチを受け､本作で約10年ぶりに俳優として復帰しました。本作が大ヒットしたことで彼の悪役も評価を受け､チャールズ･ヒョン同様『ゴッド･ギャンブラー』への出演にも繋がっていったと思われます。

[3] mixiユーザー 01月15日 12:04

本作が制作された当時の香港映画界は､97年の中国への香港返還まで10年を切った情勢を見据えて､文字通りの過渡期にありました。ジャッキー･チェン(成龍)やサモ･ハン(洪金寶)らを擁したゴールデン･ハーベスト､そしてそれに次ぐシネマ･シティやＤ＆Ｂといった80年代前半に設立された新興の映画会社の勢いにもかげりが見え始めていました。一方で､香港映画は日本や欧米各国から熱い注目を集めており､海外進出の動きも表面化していました。そうしたなか台頭してきた映画会社が本作を制作したウインズ･ムービー･プロです。当時の香港映画では破格のアメリカやカナダへ長期ロケを敢行し､実景のみですが東京のカットも出てくる大作となった本作は､香港で『狼男たちの挽歌･最終章』や『アゲイン明日への誓い(男たちの挽歌Ⅲ)』を上回る大ヒットを打ち立てました。
ちなみに香港･台湾で公開されたオリジナル版の本編尺は日本公開時の99分より25分長い124分となっております。現在動画配信サイトYoutubeでは広東語､北京語の両ヴァージョンがアップされており､視聴可能となっております。

オリジナル広東語･124分版動画↓

また､2008年前後日本のCS局スカパー! で放送を行っていた香港映画専門チャンネル｢MATVジャパン｣(現在放送終了)では､本編尺が日本公開版とほぼ同じ98分ながら編集が全く異なるヴァージョンが『最高の尊厳カジノ･レイダース』の邦題でOAされています。
さらに､本作にはアメリカを始めとする英語圏で公開した"国際版"が存在します。｢Fatal Bet｣(画像左)という英語題が付いたそのヴァージョンは､アンディ･ラウ､アラン･タム､ロザムンド･クァン､アイディ･チェンのオリジナルキャストを白人の俳優に差替え､チャールズ･ヒョンやロン･フォン等の脇役やロケ地はそのままに台詞は全編英語･本編尺は90分というモノです。演出はオリジナルの共同監督だったジミー･ヒョン(向華勝)と『ブッシュマン３』(94年､画像中)などを手掛けたディクソン･ツォー(曹建南)が担当しています。前述した香港映画の海外進出を見越して制作されたと思われます。
1コメント目にて､本作は『ゴッド･ギャンブラー』のプロトタイプといえる1本とご紹介しましたが､香港で大ヒットした本作は『ゴッド･ギャンブラー』とは別に続編が２本制作され､いずれも日本でビデオ化されています。この続編２本というのは､パート２→３の２本ではなく､スタッフ･キャストが異なるパート２が２本撮られた状況なんですね。しかもいずれも本作とのつながりはありません。
１本目は90年に制作された『カジノ･シンジケート』(画像右)です。コレはアンディ･ラウとアラン･タムが引続き登板していますが､コメディー色が強まり『ゴッド･ギャンブラー』に寄せた展開となっています。もう１本はジョニー･トー(杜琪峰)監督､アンディ･ラウ主演の『raid-ers レイダース(CS放送題カジノ･レイダース２)』(91年)。コチラは本作以上にシリアスで暴力描写も強めの"香港ノワール"と呼んで差障りのない作品ですので､後刻当コミュニティでご紹介したいと思います。