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偽装請負/多重派遣/個人事業主コミュの「新しい労働社会」(濱口桂一郎著:岩波新書)

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別のトピックで紹介された『新しい労働社会』(濱口桂一郎著:岩波新書)という本を読んでみました。とても勉強になりましたので、まず目次をご紹介しようと思います。

【目次】

はじめに 

序章 問題の根源はどこにあるか−日本型雇用システムを考える

 1 日本型雇用システムの本質−雇用契約の性質

  職務のない雇用契約

  長期雇用制度

  年功賃金制度

  企業別組合

 2 日本の労務管理の特徴

  雇用管理の特徴

  報酬管理の特徴

  労使関係の特徴

 3 日本型雇用システムの外側と周辺領域

  非正規労働者

  女性労働者

  中小企業労働者  

第1章 働きすぎの正社員にワークライフバランスを

 1 「名ばかり管理職」はなぜいけないのか?

  マクドナルド裁判

  管理職と管理監督者

  スタッフ管理職

  (コラム)組合員資格と管理職

 2 ホワイトカラーエグゼンプションの虚構と真実

  ホワイトカラーエグゼンプションの提起

  政府の奇妙な理屈付けと経営側の追随

  労働側のまともな反論

  「残業代ゼロ法案」というフレームアップ

  (コラム)月給制と時給制

 3 いのちと健康を守る労働時間規制へ

  消えた「健康」の発想

  過重労働問題と労働政策の転換

  まずはEU型の休息期間規制を

 4 生活と両立できる労働時間を

  日本型「時短」の欠落点

  ワークライフバランスの登場

  普通の男女労働者のための基準

  (コラム)ワークシェアリングとは何をすることか?

 5 解雇規制は何のためにあるのか?

  恒常的時間外労働と整理解雇法理

  遠距離配転や非正規労働者と整理解雇法理

  生活との両立を守る解雇規制こそ必要  

第2章 非正規労働者の本当の問題は何か?

 1 偽装請負は本当にいけないのか?

  偽装請負追及キャンペーン

  「偽装請負」とはそもそも何か?

  経団連会長の指摘

  請負労働の労働法規制

 2 労働力需給システムの再構成

  登録型派遣事業の本質

  労働組合の労働者供給事業

  臨時日雇い型有料職業紹介事業

  労働力需給システムの再構成

  (コラム)日雇い派遣事業は本当にいけないのか?

 3 日本の派遣労働法制の問題点

  「派遣切り」の衝撃

  EUの派遣労働指令

  業務限定の問題点

  「ファイリング」の無理

  製造業派遣禁止論の無理

 4 偽装有期労働にこそ問題がある

  登録型派遣事業禁止論の本質

  EUの有期労働指令

  有期労働契約をどう規制すべきか

 5 均衡処遇がつくる本当の多様就業社会

  均衡処遇の必要性

  職能資格制度における「均衡処遇」

  期間比例原則の可能性

  賃金制度改革の社会的条件

  (コラム)職能資格制度と男女賃金差別  

第3章 賃金と社会保障のベストミックス−働くことが得になる社会へ

 1 ワーキングプアの発見

  ワーキングプアの発見

  プアでなかった非正規労働者像

  生活できない最低賃金

 2 生活給制度のメリットとデメリット

  生活給制度はいかに形成されたか

  生活給制度のメリット

  生活給制度のデメリット

  日本的フレクシキュリティのゆらぎ

  (コラム)家族手当の社会的文脈

 3 年齢に基づく雇用システム

  年齢差別問題の再登場

  年長若年者への年齢差別問題

  学卒一括採用システム

 4 職業教育訓練システムの再構築

  公的人材システム中心の構想

  企業内教育訓練体制の確立

  職業指向型教育システムに向けて

  日本版デュアルシステムの可能性

  (コラム)教育は消費か投資か?

 5 教育費や住宅費を社会的に支える仕組み

  生計費をまかなうのは賃金か社会保障か

  二つの正義のはざま

  教育費や住宅費を支える仕組み

  (コラム)シングルマザーを支えた児童扶養手当とその奇妙な改革

 6 雇用保険と生活保護のはざま

  雇用保険と生活保護の断層

  日本型雇用システムに対応した雇用保険制度のほころび

  (コラム)登録型プレミアムの可能性

  トランポリン型失業扶助

  生活保護の部分的失業給付化

  働くことが得になる社会へ  

第4章 職場からの産業民主主義の再構築

 1 集団的合意形成の重要性

  「希望は戦争」という若者

  誰が賃金制度を改革するのか

  非正規労働者も含めた企業レベルの労働者組織の必要性

 2 就業規則法制をめぐるねじれ

  労働条件の不利益変更は個別労働問題なのか?

  合理性の判断基準としての労使合意

  労働契約法の迷走 

 3 職場の労働者代表組織の再構築

  労働者代表組織のあり方

  過半数組合と労使委員会

  新たな労働者代表組織の構想

  (コラム)労働NGOとしてのコミュニティユニオン

 4 新たな労使協議制に向けて

  整理解雇法理の再検討

  日本型労使協議制の光と影

  (コラム)フレクシキュリティの表と裏

 5 ステークホルダー民主主義の確立

  三者構成原則への攻撃

  三者構成原則の現状と歴史

  ステークホルダー民主主義の確立に向けて  

参考

コメント(6)

いたるところに著者の濱口氏の独自の考察がちりばめられており、大変勉強になりました。特に第2章からは多くの啓発を受けました。オリジナルな意味での偽装請負について紹介している部分がありますので、抜粋してご紹介しましょう。

『「偽装請負」という言葉は、実態は労働者派遣事業であるのに請負を偽装しているという意味です。つまり、本来労働者派遣会社からの派遣労働者という形で受け入れなければならないのに、請負会社の労働者として事実上受け入れて使っているのが違法である、という意味でしかありません』(P59)

この記述から、私はいままで、オリジナルな意味での「偽装請負」という言葉を誤解していたようです。私がこれまで偽装請負という言葉に込めていた意味は、むしろ「偽装一人親方」、あるいは「労務提供請負」とでも言うようなものでした。この本の中でも解説されていますが、「労務提供請負」というのは行われていたようです。

しかし「偽装請負」という言葉の概念を拡張し、「偽装一人親方」や「労務提供請負」を「偽装請負」の概念の中に含めるようにしたとしても、それほど不適切ではないような気がします。なぜかというと、この本の著者の濱口氏は、「本来労働法によって規制されるべき請負がなんら規制されていない」ということに起因して問題が発生していることを指摘しているからです。
第2章第1節の「請負労働の労働法規制」という部分に次のような記述があります。


『この「無理」は、しかしながら、本来労働法によって規制されるべき請負がなんら規制されていないという事実から生じていることを見落としてはなりません。むしろ、請負労働規制が存在しないことが「無理」なのです。本来あるべき請負労働法制の欠落を、派遣法制によって埋め合わせようとするためにさまざまな矛盾が生じているのです。』(P64)


この「無理」とは、本の文脈の直前の、日本経団連の御手洗富士夫会長の「請負法制に無理がありすぎる」という発言における「無理」のことです。御手洗富士夫会長は、企業経営者の立場から、事業所内に就労させている労働者(必ずしも雇用労働者とは限らない)に、いろいろな業務を請け負わせたいと考えているわけです。

しかしその業務内容の労働者性によっては、露骨に請け負わせるわけにはいかない現状がある。その意味で「請負(とりわけ事業所内就労者の請負)」というものの使い勝手が悪くなっている。そこを「無理がある」といっているわけです。

しかし労働法学者である濱口氏としてのアプローチは、「その業務の労働者性が高ければ、それに携わる人は、もはや請負業者ではなく労働者である、だから労働者としての保護が与えられてしかるべきだ」という点にあります。だから「請負」と称しながら実態は労働者の労働となっている場合に規制がきちんと発動されるように、請負労働規制の制度を設計しなければならない、そう主張しているものと理解しています。
第2章第2節「労働力需給システムの再構成」における「登録型派遣事業の本質」の部分も非常に勉強になりました。労働者派遣事業の形態には、「常用型労働者派遣事業と登録型労働者派遣事業の2種類があります。そのうち、「登録型労働者派遣事業」は、そもそも法制度として非常に無理があり、矛盾を抱えていると言わざるを得ないと実感しました。
第2章の第3節「日本の派遣労働法制の問題点」も非常に勉強になりました。日本の「雇用」の概念は、「ジョブ型」ではなく、「メンバーシップ型」であるため(「日本の雇用と労働法」参照)、雇用主は、自己の指揮命令下にある労働者に対して、必要に応じていろいろな業務を行うことを指揮命令する権利がるという幻想を抱きやすいという現状があります。

そういう環境下にあって、「業務を限定して労働者派遣を許可する」という思想は、日本の職場における「メンバーシップ幻想(メンバーシップ雇用)」と本質的に折り合いが悪いと言わざるを得ないという点を指摘しています。企業経営者側としては、「業務限定」という制限はできる限り緩和して欲しい」というのが本音でしょう。

派遣労働者には何か業務が限定されている、という幻想をでっち上げるために、労働者派遣という制度が導入された当初生まれた言葉が「ファイリング業務」という言葉のようです。ところが、個々の企業などの職場では、何か「ファイリング業務」のような専門性のある業務が、他の種々雑多な業務と一線を画して存在していたという実態は無いも同然だったようです。
なお、偽装請負の問題とはやや乖離しますが、第2章の第4節「偽装有期労働にこそ問題がある」に示されている考察には瞠目させられました。その部分を抜粋して紹介しましょう。


『問題があるのは、本来労働力自体は恒常的に存在するのに、つまり無期契約で雇用することが自然であるにもかかわらず、解雇規制をすり抜ける目的でわざと有期契約にしておき、必要のある限り更新につぐ更新を重ねておいて、いざというときにはその期間満了を装って実質的に解雇しようとすることなのです』(P93)


つまりその職場にその職種の労働力需要が恒常的に存在するのであれば、その職種に適した労働者を正規雇用するのが本来の筋なわけです。ところが企業側は、労働者を正規雇用してしまうと、解雇規制がかかります。企業側の都合でその労働者を解雇したいときに簡単には解雇できなくなるわけです。そこで、その労働者を有期契約を繰り返す「有期労働者」と位置付けてしまうという方便を使ってくる可能性がある、という指摘をしています。

この実例には実際直面したことがあります。そして期間満了を装って実質的に解雇するときの口実に使われるものが「(その労働者は)和を乱す」というものです。「有期契約」そのものが偽装されているのに、契約解除のときには「和を乱す」などと、その労働者の人格にケチをつけることまでするわけです。全く失礼極まりないことです。
[1]番からの自己レスです。

>しかし「偽装請負」という言葉の概念を拡張し、「偽装一人親方」や「労務提供請負」を「偽装請負」
>の概念の中に含めるようにしたとしても、それほど不適切ではないような気がします。

この問題について考察してみたのですが、「偽装一人親方」や「労務提供請負」を「偽装請負」の概念の中に含めてしまうことは、むしろ合理的だと考えます。というのは、「偽装一人親方」や「労務提供請負」という言葉使いには不適切な側面があるということに気が付きました。

まず「偽装一人親方」という言葉使いですが、この表現が成立するためには、「偽装されている一人親方」と「偽装されていない(本来の)一人親方」というものが区別できるということが前提になっています。ところが、私の考えでは、「偽装されている一人親方」と「偽装されていない一人親方」は、一人親方として区別できないと考えます。なぜなら、偽装されていない本来の一人親方とはどういうものなのかがはっきりしないからです。このため、逆に「偽装一人親方」のどこが偽装されているのかよくわからないわけです。

また、「労務提供請負」という言葉もこれ自体が矛盾をはらんでいておかしな表現になっている側面があります。というのは、「労務提供」というのは、雇用されている労働者が雇用主のために提供するものが「労務提供」だからです。このため、例えば「個人事業主型従業員」といっているようなおかしさがあります。「従業員」というからには個人事業主ではありえないのに、両者をむりやり合体させてしまっているような不自然さがあります。

やはり、「偽装一人親方」や「労務提供請負」が指している就労形態は、「偽装請負の一種」と考えた方が妥当な気がします。

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