愛しき空コミュの愛しき空（空）　　３

「景気は回復の兆しを見せています。」

テレビからはいつもと同じ口調で話すニュースキャスターがニュースを伝えている。
いつからだろう。
ニュースに興味をもつようになったのは。

学生時代なんかニュースが流れるとTVを消すか
違うチャンネルに変えていたのに。
これも社会という所で生活するようになったからかな。

加那からのメールは大概が仕事か恋愛において
壁ってものにぶち当たった時のものだ。
特に俺もいいアドバイスをしてあげれる訳じゃないのに。

つまり加那にとっての捌け口が俺って訳だ。

あいつの泣いたところを見たのは長い付き合いの中でも1度だけ。
就職したばかりの頃かな。
仕事にも悩み恋愛にも悩んでいたとき
今のようにメールがきて会う事になった。

俺は特別いいアドバイスなんかできないが
「加那は加那なんだし、そこがいいんじゃない？」
このような言葉しかかけれない。
だってそれは本当にそう思うからね。
それを言うと加那の目から大粒の涙が次々と零れ出した。
何故泣いたのかはよく分かっていない。

男って生き物は女の泣くツボなんか分かっていないから
世の中では女が泣いてばかりなんだろう。

でもその日以来違う相談をうけ、なにか言っても
加那が泣くことはない。
本当に可愛げがナイ女だ。加那って女は。

「加那は何故いつも男にイライラしてるの。」
そう返信すると今にもこぼれそうな灰を灰皿に落とし煙草を消した。

秋の夜。
換気のために開けていた窓から
冷たい風が部屋に迷い込んできている。

去年の今頃お気に入りでよく着ていたロンTは今じゃすっかり
部屋着へとおちぶれている。
その元お気に入りに袖を通した時携帯が鳴った。

「そのイライラを解消させてよ。」

うーん。解消ねぇ。
携帯の返信ボタンを押し文章を打つ。

「今日いつものラーメン屋いってきたんだ。あれ食ってると幸せだなーって思うんだ。ってことできっとイライラさえも忘れさせてくれると思うけど？」

うーん。なんて下手な文だ。

ドラマや映画ならここはバーとか
もしくは遊園地とかに誘うのかな。
でもマジであのらーめんは旨いから仕方ねーっか。

すぐに返事のメールが届いた。

「久しくあそこ行ってないなー。じゃあ空のおごりね！いつにする？」

今の俺には彼女ってやつもいなけりゃ
特別仕事のあとの時間を趣味に費やしている大人でもない。

「わかったよ。俺はいつでもいいよ。」

最後に加那と会ったのはいつかな？
こんな関係が長く続きすぎてそんな事すら忘れてしまった。
特別気にもしていないからだろう。

加那からの返信はすぐにこなかった。

どうせ誰かさんと電話でもしてんだろ。
かと言って特別ヤキモチを焼くこともない。

加那はこういうことがあっても悪びれることもない。
そんな関係なんだから。

俺はゆっくりと襲ってきた睡魔にそのまま身を任せて
闇の中へとおちていった。

目覚まし代わりのコンポから流れる曲。
いつもとかわらぬ同じ朝が又やってきた。

携帯に「新着メールあり」の文字。
煙草に手を伸ばし返信メールを打つ。

軽めの朝食をとり
仕事の身支度をして
いつものように空を見て仕事へ向かう。

うん。
今日もいい天気だ。