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とにかく怖い話。コミュのドライブ

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 物語で登場する人物名等はフィクションです。
 また長い話であるため、最後までお付き合い頂けると幸いです。


僕は以前、大学入試と平行して車の免許を取ったのだが、
免許を取るとすぐに進学のため上京してしまい、
自分の車を持つどころか、ロクに運転する機会もないままだった。

東京と違い、地元の公共交通機関は1時間に1本のペース。
酷いところだと半日に1本だ、これでは不便極まりない。
地方の交通手段はやはり自家用車と言えるだろう。
また地元の若者達にとって、車はコミュニケーションツールの1つでもあった。

大学の夏休みを利用し規制した僕は、アルバイトや高校時代の友人たちと遊んだり、
それなりに充実した日々を送っていた。
ただ1つ、車を持っていないことを除いては・・・


ある日、友人から電話でドライブに誘われた。
免許はあるものの自分の車を持っていない僕は、その旨を伝え友人に車を出してもらえないか聞いてみる。

「ニートの俺が免許なんて持っているわけねーじゃん」

免許がないことを然も当然のように言う友人の名前は高梁。
高梁と僕は中学時代からの友人で、
進学で上京したことにより徐々にだが疎遠になっていった地元の友人達の中で
未だに連絡を取り合っている腐れ縁に近い仲だ。

この男、自分からドライブに誘っておいて僕に車を出せということか。
相変わらず図々しい。

本当なら断るところだが、
免許を持ちながら運転する機会に恵まれなかった僕はドライブに興味があった。

「わかった、親に車を貸してもらえないか聞いてみる」
「お、イケメン! 濡れるわ〜」

高梁なりに褒めたのだろうが、全く嬉しくない。
濡れるってどこが濡れるんだよ。


電話を切った後、僕は居間でテレビを見ている母親に車を貸してもらえるか聞いてみる。
断られることも考えていたが、あっさり車のキーを貸してくれた。

僕はキーを受け取り、自分の部屋から若葉マークのステッカーを持ち出して、
ワクワクしなから家を出た。


高梁の家に着くと電話で呼び出す。
しばらくして、玄関から寝癖頭をした冴えない面持ちの男が出てきた。
頭をぼりぼりと掻き、あくびをしながらこちらへ向かってくる。
それは高梁だった。

その後ろにもう1人男がいることに気がついた。

天然パーマでやや小太り、眉毛がハの字に下がっている幸薄そうな顔。
高校時代の高梁と共通の友人である宮部だった。

「お前ら揃うと鬱陶しいな・・・」

つい本音が口からこぼれてしまう。

「3人揃うと暑苦しいな」

高梁はニヤっと笑って言った。

「久しぶりだね、菊地。4ヶ月ぶりぐらい?」

妙に高音で透き通った声の宮部が言う。

宮部は高校時代、その美声を活かして合唱部に入り、それなりに歓迎されていたが、
声はイケメン、外見はキモオタというギャップで、クラスや部活の女子から気持ち悪がられていた。

続けて宮部が言う。

「菊地は相変わらず色白でキモいなぁ」

・・・お前が言うな。
僕は口に出さず、宮部をこづいてツッコミを入れた。


高梁は助手席に、宮部は後部座席に乗り込み、僕たちはドライブへ出発。
帰省してから高梁とは何度か会っていたが、宮部とは久々の再会ということもあり話が弾んで、
しばらく車を走らせながら談笑した。

お互いの環境の変化による心境なとを語り、それに共感しながら、あるいは驚きながら話は弾む。
中でも宮部に彼女ができたことには、心底驚かされた。

※ コメントに続きます。

コメント(9)

※続き。

国道が海岸に差し掛かった頃、それまで会話していた高梁が急に黙り込む。

まだ会話の途中だというのに一体どうしたのいうのだろうか。
僕は気になって尋ねる。

「車酔いでもしたのかい?」

横目で高梁を見ると、まるで緊張したかのように体が強張り、険しい表情をしていた。

続けて宮部も尋ねる。

「トイレに行きたいの?」

しかし高梁は僕たちの質問を無視して呟いた。

「気をつけろよ」

僕と宮部は首を傾げた。

誰に対して、何に気をつけろというのだろう。
まるで独り言のように言った高梁の言葉を不思議に思ったそのとき。


ズ・・・

僕の握っていたハンドルが僅かに右へ傾く。
突風でも吹いたのだろうと思い、ハンドルを戻そうとしたときに気づいた。

ハンドルが・・・動かない。

ズ・・・

再び、ハンドルが僅かに右へ傾く。
僕は再びハンドルを戻そうとするが、やはり動かない。

ズ・・・ ズ・・・ ズ・・・

一定間隔でハンドルが右へと取られていく。

僕は徐々に焦り始めていた。
まさか故障?


「菊地、危ないよ」

車体が徐々に対向車線へ向かっているのに気づいた宮部が、
後部座席から身を乗り出して言った。

「ハンドルが動かないんだ」

僕は震えた声で言い返す。

そんなやり取りをしているうちに、車は対向車線ギリギリのところまで近づいていた。
「ブレーキ!」

宮部が早口に叫ぶ。

僕はその言葉に触発されルームミラーで後方を確認し、
ブレーキを踏もうとしたときに再び気づく。

ルームミラー越しに青白い光がぼんやりと見えるのだ。
それは宮部の座る後部座席にあった。
微かにだが、ウネウネと不規則に動いている・・・

なんだろう、この光は。

「ブレーキ!!」

宮部が先程より強い口調で叫ぶ。
僕は、はっと我に返ってブレーキを踏もうとした。

しかしブレーキペダルが踏めない。
それどころかアクセルペダルも緩めることが出来ない。
ここでようやく僕の足が動かないことに気づいた。

「ブレーキが踏めない!」

僕は叫ぶように訴える。

「どゆこと!?」

宮部はもはや裏声に近い声で聞き返してきたが、
それを説明する余裕など僕にはない。

ついに車は対向車線をはみ出して反対の車道へ乗り込んでしまった。
そこへタイミング悪く、前方から対向車がやってくるのが見える。

このままでは衝突してしまう。焦りは恐怖へと変わっていく。

時速40キロの衝撃力は体重の30倍にもなると聞いたことがある。
体重50kgの人なら、1.5tの衝撃力ということだ。
こちらは60キロ、対向車も60キロだったとして、一体どれだけの衝撃なのだろう。

徐々に近づいてくる対向車のクラクションを聞きながら、僕はそんなことを考えていた。

「もう大丈夫、ハンドル切っていいよ」

ふいに高梁の声が聞こえた。
僕は咄嗟にハンドルを左へ回す。

今までロックが掛かったように動かなかったハンドルがスムーズに回転し、
車は小さく弧を描くように元の車道へ戻った。

対向車が僕の車の横を通り過ぎて、クラクションがドップラー効果で変音しながら小さくなっていく。
今まで何が起きていたのか分からないが、とりあえず危機を脱したようだ。

硬直していた足が動き、ゆっくりブレーキを踏む。

「大丈夫か?宮部」

宮部は後部座席から身を乗り出すような体勢を取っていたが、
先ほど急いで左へハンドルを切ったとき、後ろから「ぎゃっ」という宮部の悲鳴が聞こえたのだ。

僕は宮部の様子を確認するためにルームミラーに視線を向けようとした。


「後ろを見ないでしばらく走ってれ」

高梁はまた不思議なことを言う。

運転中に後ろを確認しないというのも結構な無茶振りだと思ったが、
先の不可解な出来事と高梁の言動を思い出し、黙って従うことにした。
それから車内では会話もなく、しばらく黙々と車を走らせていたが、
パークングを見つけたので停車することにした。

停車後もしばらく会話がなかったが、宮部が沈黙を割いて聞く。

「さっきのなんだったの?」

その質問に答えようにも、僕は僕の身の上に起きた事象しか説明出来ない。
恐らく件の原因を知っているのは・・・

僕は高梁を見た。
高梁は神妙な顔をしている。

高梁が「気をつけろよ」と言った途端に妙な現象が起こり、
「もう大丈夫」と言った途端に収まった。

もしかして何か知っているんじゃないだろうか。

「なぁ、お前・・・」

僕が問いかけようとしたとき、高梁は言葉を遮って言った。

「さっきのはビビったなぁ!」

口調は明るいが、その顔はいかにも作ったような笑みを浮かべている。
まるで僕が何を聞こうとしているのか分かった上で、拒否しているように見えた。

「高梁、お前さ・・・」

僕の問いかけを再び遮って高梁は言う。

「もう帰ろうぜ 疲れちゃった」

先ほどの作り笑いは消え、少し困ったような顔をしている。

「わかったよ」

僕は溜息と一緒に言葉を吐き出して、車を発進させた。

帰り道、僕に起きた事象を宮部に説明すると大袈裟に怖がり、
僕の急ハンドルで、ドアに頭をぶつけたことをしつこく批判していたが、
先程の不可解な出来事からわざと別の話題に摩り替えているようにも思えた。

おそらく宮部にも思うところがあるのだろう。


僕は宮部との会話を適当に流しながら、
中学の頃、自分には霊感があると言ってクラスメイトに自慢する高梁を思い出していた。
あれはいわゆる厨二病の一種だと思っていたが。

もしかして・・・



疲れたと頻りにアピールする高梁を先に家へ送り、車内は僕と宮部の2人になった。
高梁が降りたことで助手席に移った宮部は、先程から繁々とハンドルを見ている。

「やっぱり高梁は何か知ってるよね」

目線を僕の顔に移して宮部は質問した。

思い返せば、高梁の言動はまるで、事象が起こることも、その結果も知っていたようだった。
やはり宮部も気になっているのだろう。

「宮部には、何かなかった?」

僕は質問を質問で返す。
それに対し、宮部は少し考えるように腕組みをして唸っていた。

「俺には青白い光も見えなかったし、足が動かなくなるようなこともなかったけど・・・」

言いかけて宮部は沈黙する。
僕は相槌を入れずに黙って宮部の話の続きを待った。

「異臭がしたんだ。すごく生臭い感じの」

先程の出来事は、海岸に面した道沿いで起きたのだ。
場所からして多少潮臭さはあったが、異臭というほどではない。

だが、気のせいだとは言えなかった。
事実僕の身の上にも不可解な現象が起こったからだ。

それから特に会話もなく、僕は宮部を家へと送り岐路に着いた。
自宅に帰った僕は、いつものようにニュースを見ながら、
母親が用意してくれた夕食を食べ終え、自室へと戻る。

窓から差し込む日の光は弱々しく部屋をオレンジ色に染め、もうすぐ夜が訪れようとしていた。
ふいに言い知れぬ不安が僕を襲う。

ずっと気になっている。
高梁は何か知っているはずだ・・・

そう思うと僕は無意識に高梁へ電話をしていた。
しばらくのコール音の後、ダルそうな声の主が出る。

「あ〜・・・ 今超いいとこだったんだけどぉ 何か用?」

相変わらず意味不明なことを言っている。
何がいいとこだったんだ。

僕はなかなか切り出せずにいると、高梁は続けて言う。

「今超いいとこなんで、用がないなら切るぞ」

「待てよ!高梁、何か知っているんだろ?言えよ」

僕は慌てて高梁に聞いた。

「お前イミフなんだよ 主語ねーとさすがにわかんねーわー」

・・・お前が言うな。
僕は高梁のツッコミをツッコミで返した。

「わかってんだろ。」

電話越しに大きな溜息が聞こえてくる。
少しの沈黙の後、高梁はぽつりと答えた。

「信じねーだろうけどな・・・」

高橋は霊がいたのだという。

たまたま霊が通り掛かった所に、たまたま僕の車があって、
気まぐれにイタズラをしたのだという。
明確に悪意があったわけではないのだそうだ。

しかし霊とは・・・俄かに信じがたい。
だが僕の中で先の不可解な出来事の説明も付かない。

そこでもう1つの不安がよぎった。
オカルト話でもでよくある話。

「憑いてきたり・・・」

「心配するな、憑いてないから」

言いかけた言葉を遮って高梁は返答した。

そもそも霊とは、本来ただそこにいるだけの陽炎のようなもので、
仮に憑いてきても、いつの間にか居なくなっている、こちら側とは無縁の存在なのだそうだ。

悪霊に憑かれるような人は、大抵、生前に相当酷い仕打ちをしたか、
相当運が悪いかのどちらからしい。

だから、それほど心配するようなことでもないと高梁は言う。

では、ハンドルが動かなくなったり、下半身が硬直したり、
また青白い光が見えたりしたのは仮に霊の仕業だったとして・・・

「宮部の言った、生臭さとは一体」

「お前さ、水死体ってどんなだか知っている?」

高梁は僕の問いかけに対し、さらっとエグイことを言った。

何がいたのかイメージがリンクされる。
僕は1度だけ見たことがあるのだ。
中学の頃、漁港へ釣りに行ったときのこと、人だかりの先に死体があった。
臭いも然ることながら、まるで人の姿形をしておらず、最初大きな異形の魚か何かと思った。
それが人だと知ったとき、しばらくトラウマになったのだ。

僕は思い出して吐き気が込み上げてくる。
高梁が本当に見えているとして、一体どんな気持ちだったのだろう・・・
「・・・という妄想をしているんだ」

高梁はそう言って、話を締めくくった。

「いやそれ、ネタじゃないよね?ネタじゃないよな!」

僕は透かさずツッコミを入れる。

「お前のツッコミも板に付いてきたじゃんか」

高梁はケラケラ笑う。

「まぁ何にでも説明付ければ怖くないだろ?」

高梁の問いかけに僕は納得した。

確かに先程の不安は薄らいでいる。
だか、同時に僕は少し寂しくなった。

確かに不可解な出来事に遭遇したが、僕は高梁の言うことの全てを信じられない。
何故なら人は目に写るもの、触れられるのもしか信じれないからだ。

高梁は僕を安心させるために、虚言を吐いたのかも知れない。
そんなことを思う自分が寂しかった。

そして、ただでさえ風変わりな高梁が、
もし今のようなことを言って回れば、完全に変人扱いされてしまうだろう。
それが高梁には分かっている、だから言わなかったのだ。
そんな友人が寂しく思えた。

分かり合えないことに焦りともどかしさを感じる。
僕は気を取り直して言った。

「なぁ、またドライブいこうぜ」

「お前も懲りないね〜」

高梁は再びケラケラと笑った。


※ 終わり。
高梁と菊地シリーズ待ってました!いつも楽しく読ませていただいています。高梁目線の話もお待ちしています!
>>[6]
コメントありがとうございますっ

すっごいローペースですが、書いております!
また投稿いたしますので、見てあげてくださいw
このシリーズのお話私も好きです(o^^o)
新作楽しみに待ってます\(^o^)/
>>[8]
コメントありがとうございますっ

かなりのマイペースですが、ぼちぼち書いていくので、
生温かく見守っていたげてください!

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