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とにかく怖い話。コミュの連絡帳

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2009年4月の22日。
 私は某農業大学に通っていたが、就職に失敗し、世にいう就職難民でアルバイトもしておらず実質ニートと呼ばれる立場だった。

このご時世に二流農大生が有利に就職ができる企業が日本には何社あるだろうか。自然が好きで農大を選んだ自分を恨んだ。

しかし私の通っていた大学では卒業後も就職先を紹介してくれるところがせめてもの救いだった。

その日も半ば諦めながらもいつもの通いなれた校舎に新しい求人がないかを探しに足を運んだ。
いつものように就職課と呼ばれる専用の教室には私と同じように就職から溢れた卒業生が数名、希望を失ったような目で掲示板を眺めていた。

そこに私が在学中の研究室の担任がきた。

担任:「黒木(私の名前)その後はどうだ?」

私:「えぇ特別変わりはありません。ここにいる状況そのままです。」

担任には研究室の時から良くはしてもらっていたが、特別尊敬できるとかそういったものでもなく、唯一助かった事といえば卒論のテーマで悩んでいた私にアイディアをそのまま提供してくれたことぐらいだった。
ただこの日は違った。
担任は私に喉から手が出るほど欲しい情報を提供してくれた。

担任:「おまえ、在学中卒論だけで実農研修やらなかったよな。」

私:「そうですね。特別必修にもなっていませんでしたしね。」

これは世に言うインターンシップのようなものでうちの大学がどこかかもわからない農家と提携しており、そこで住込みの農業体験をさせてもらうという内容だ。

担任:「実務経験のない人材を採用する企業がどんどん減ってきているのは分かっているだろう。第2新卒はうちじゃ、ないに等しい。」

私:「はい。(だからなるべく農業とは関係ない求人さがしてたんじゃねぇかと思いながら話を聞いていた。)」

担任:「実はなぁ今私から紹介できるところがある。企業じゃなくて一般の農家なんだがな。そこで体験を兼ねて働かせてもらう。もしそのまま働き続けて農家と黒木が良ければ続けて働かせてくれるところなんだ。今跡取りがおらず、仕事をついで欲しいと思う農家が実は多いんだ。」

私:「お願いします!!」

担任:「新潟の小さな村なんだが、私の出身でもあってだな。環境の良さは私が保証する。」

さっきまでの態度とはコロッと変わり目の色を変えて頭をさげた。
それもそのはずである。つまりはその農場なりが後々にはもしかするとごっそりそのまま自分のものになる可能性があるってことだろ!?農業が辛い仕事であることは授業で散々学んできたが自然が好きな私からすれば何も問題なかった。



2009年6月29日
私は朝から新幹線やバスに揺られながら紹介された農家に到着した。
 
回りはひたすら緑がしげる森と田んぼや畑、気持ちはもはやトトロにでてくるメイちゃんサツキちゃんの気分。
いや、もののけ姫かもしれない。
くだらない妄想で気持ちはウキウキしていた。

 今まで家で就職活動という言い訳をもとにニートをしていた私は友人や家族と話すのがもはや心苦しい状況になっており、そこから脱出した今の自分は何とも気持ちがいいものだった。

もう一つ私が新潟で即答した理由がある。
私には2歳離れた兄がいた。兄も自然が好きで農業を目指しており、その兄もまた今の私の様に大学は別だが農大に行きインターンシップで新潟の農家で働いていたのだ。
しかしそのインターンシップでの途中兄は行方不明になってしまった。
結局兄は見つからなかった。
私はとても優しく仲の良かった兄が大好きだった。
そんな兄が新潟でもしかしたらみつかるんじゃないかという淡い期待もこの新潟にした理由に含まれていた。

おばぁちゃん;「わざわざ遠いところからご苦労様ぁよろしくお願いしますねぇ」
私:「こちらこそお世話になります。よろしくお願いいたします。」

私は現地につくなり、駅で迎えてくれたこれからお世話になる農家のおばぁちゃんとあいさつを交わした。
とても明るい笑顔のおばぁちゃんで人柄が全面からあふれ出していた。
家に案内され寝泊りするのはそのおばぁちゃんが住んでいる家の二階とのことで研修生を迎えた時にはいつも使ってもらっている部屋だという。

話によれば去年ご主人が他界してしまって農業を辞めるか悩んでいたという。
お手伝いさんはいるとはいえ、おばぁちゃん一人で農業を管理をするのは難しことである。

ただご主人が生前も私の様にインターンシップの様な農業研修生の受け入れはしていたとのことで自分の所の農業を潰すぐらいなら跡取りをこの機会に見つけて続けてほしいとのことだった。


おばぁちゃんは優しいながらも真剣なまなざしでこれから農業をする私に前置きとして心構えを伝えた。

おばぁちゃん:「数か月前にも君の様な研修生がいたが辛くて途中で辞めてしまったのだが、君はこの大変な仕事を続ける自信はあるね?」

私:「はい。大丈夫です。」

一言返事で即答した。

そうするとおばぁちゃんはニコッと笑い、続けてこういった。

おばぁちゃん:「それは良かった。そういってくれると私らもホッとするよ。」

この時特におかしな会話ではないはずなのに、どこか違和感を感じたのは今となってもよく覚えている。


2009年9月20日
実際の農作業もなれてきた。
村全体も秋の香が漂う季節になってきた。
おばぁちゃんも私にいつも優しく丁寧に色々な事を教えてくれ、毎日朝は早くて大変な作業だが充実した日々を過ごしていた。

私はこの日いつもの様に作業を終えるとすぐに部屋へと戻った。
私は押入れから屋根裏に繋がる薄い板があるのだがそこにエロ本を隠していた。
こんなド田舎で暮らしていると出会いはおろか、そういったお店もなく一日の中でこれが唯一の楽しみになっていたのはいうまでもない。

そしてゴソゴソと屋根裏の方に手を伸ばして本を物色していると、人型の木の板に青い紐がついた、キーホルダーというかお守りのようなものが落ちてきた。
おそらく桐でできたそのお守りはとても良い匂いがして気に入ってしまった。

なぜこんなものが屋根裏にあるのかという疑問もあったが、その時は特別怪しむことはなかった。

2009年9月21日
いつもの様に仕事を終え家に帰り、おばぁちゃんと囲炉裏の前で夕飯を食べていた。
その時昨日見つけたお守りの事を聞こうとおばぁちゃんにこれは何かと尋ねた。
するとおばぁちゃんは今までには見たこともない恐ろしい形相で私からそのお守りを奪い、すぐさま囲炉裏の中に投げ捨ててしまった。

おばぁさんは私を睨みつけるようにいった。

おばぁさん:「これをどこで手に入れたんだ。これはこの村では不吉なものなのだよ。もしまたみつけたら私にすぐにいうんだよ。」

私はその時あまりにも今までにみないおばぁさんの反応に驚き何も言い出せなかった。

2009年9月22日
昨日の事が嘘の様におばぁさんはいつもの優しい顔に戻っていた。

農作業中おばぁさんがふと昨日言いそびれたかの様に話しかけてきた。

おばぁさん:「庭先に池があると思うんだけどあそこは小さいけれど昔井戸だったこともあってとても深くて危険だから近づいちゃいけないよ」

その時とても優しい口調ではあったけれどおばぁさんの唇はとてもこわばっていた。

2009年11月11日

この日、村では作物の豊作を願う恒例のお祭りがあるとのことでおばぁさんから息抜きに行ってくるように勧められた。

お祭りは小さな村なだけに、規模もそこまで大きくなかったが神社の真ん中に大きな焚火があり、その周りで豚汁などがふるまわれていた。

帰り際に神社にお参りをしていこうと思い境内に近寄ると中に住職が座禅を組んでいるのが分かった。
ふとそちらに目をやると袖の中からあの屋根裏から出てきた物と同じお守りが見えた。

このお守りがどういうものなのかという疑問と底知れぬ言葉では言い表せない不安が頭の中を駆け巡ったが、たかがお守りと自分に何度も言い聞かせすぐに帰った。

2010年3月21日

気が付けばこの体験期間も終わりが近づいてきた。

おばぁさん「今まで本当にご苦労様、君の様な子がいるとここも助かるよ。短い期間ですぐにここを任せるとは言えないけれどもう少し続けてみないかい。」

私の中で実質合格判定だった。
今までの苦労や疲れがすべて飛んだ気がした。

おばぁさんは今までの体験実習から今後どうするか決める必要があるだろうからいったん実家に帰って家族と話し合ってくるようにと言い残し床についた。

2010年3月25日

今日でいったんこの研修が終わり、明日朝早くからここを立ち実家に帰るのだ。
私はこの日の夜気分よく帰宅の準備を進めていた。
部屋を元通りに掃除を済ませ、私物をかばんにいれる。
屋根裏にある本を忘れずに回収し、かばんにいれた。


私はこの時どうしても気になることが一つあった。
屋根裏だ。思えばここでの生活はとても快適だった。

だがそれゆえにあの時のおばぁさんの反応がどうしても印象として強く残っている。
あのお守りが落ちてきた屋根裏には何かあるのか。
普段は手しか入れない屋根裏をこの目で見たことがなかった。

私は薄い板をなんとか人が入れるぐらいのスペースまで広げ中をのぞいてみた。

すると薄暗い空間の中に一冊のノートがあった。

中には急いで書いたとみられる荒々しい字でこう記述されていた。


≪以下ノートの内容≫

この部屋に泊まるものがあればこれを読んでくれる事を祈る。

読んだならすぐにここを離れる事をお勧めする。

この村にはこの世のものとは思えないモノが住み着いている。

だがこれに関して村人は誰一人として口にしない。

ここの住人であるばばあには気をつけろ。

そしてここに残すお守りは、ばれないように肌身離さずもっていろ。

このお守りはお前を守ってくれる。

俺はこれを持っていたが為に狙われず奴に襲われず、変わりにジジイが生贄になった。

ジジイはお前の泊まっている部屋の外に見える池に引きずりこまれていった。

あの中に今まで何人が連れて行かれたかは分からない。

だがこの村で行方不明になった人間は恐らくは…。

奴がでてくるのは年に一度だ。

俺は奴に連れていかれることはないが、あのばばぁの形相から俺がこの後どうなるかは分からない。

だがここに記録を残すことはできる。

3月25日までにここを出ろ。


≪ここでノートは終わっている≫

私は急いでここを出ようと荷物をそのままおいて部屋をでようとした。
しかし扉の前で何かが邪魔をして開かない。
昨日までは普通に開いていた窓も今は釘で打たれているかのようにびくともしない。
窓から見える池からタール状のベールを被った様な得体のしれない何かがゆっくりとこちらに近づいてくるのがわかる。

扉の向こうからおばあぁちゃんが話しかけてきた。
おばぁさん:「ごめんねぇ毎年恒例なのよ。こうでもしないと私たちが危ないから許してねぇ」

そして窓の隙間という隙間からその黒いものが部屋に入ってきた。


コメント(8)

こーゆう終わり方の話好きです!
バッドエンドなのに歯切れ良くてスッキリする。
就職活動のきつさとか、説得力がありました。面白かったです。先生が恐すぎますよね……。


リアリティーがあって怖かったです
先生は知ってて行かせたってことですよね(-_-;)?

最初から仕組まれていたのがわかると
更に怖くなりました
何か、クトゥルフ神話にも通じるところがある終わり方ですね。わーい(嬉しい顔)

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