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とにかく怖い話。コミュのKの物語。-1967出会い-

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私の友人に、Kと呼ばれている友がいる。
奴は、・・・なんて言っていいのだろう。
とても優しく友達に慕われている。
でも俺は知っている、奴は本当は悪魔など足下にも及べないくらい残酷だった。 

彼には私たちとは違った力があった。
それは、視る力である。
決して見てはいけないものも視てしまう力だった。
そして見えない者にも視せてしまう力だった。
・・・それは、本当に残酷だ。


彼は、昭和30年代後半に生まれたと聞いている。
彼は、いわゆる「捨て子」だった。
東京の都下多摩地方の国分寺と言う街に彼は生まれ育った。
彼の育ての母は茶道・踊りの先生として生活を営んでいたと聞いた事がある。
彼には、母と祖母・片足を棺桶に入れたようなひい婆さんと暮らしていた。
その当時彼は7才だったと聞いた。

ある日・・・。
「あら、今日もこの草履が残っているわ、お弟子さん皆帰ったのに・・・確か先週のお稽古の日にも?」
「でも、気にも留めなかったら、いつの間にか無くなっていたから」
「不思議ね・・・まっ明日取り来るかしら・・・」
彼の母は独り言が得意だった。
彼は母の言葉の意味を解らずその草履を見ていたと言う。

「まだ、いるんだ・・・」
彼は呟いたと聞いている。

二週間も過ぎた稽古日に彼は学校を休んだ。もちろん仮病だ。
一階の稽古場が騒がしくなってきた。
若い女性の声が窓越しから聞こえてくる。

それを確かめると玄関に向かいその草履を見つけた。
「いる・・・」
その日、彼は靴の数とお弟子さんの数を確かめたと言う。
母とお弟子さんの笑い声の聞こえる教室の襖を静かに開けた。
一人・二人・三人・・・八人・・・。
・・・数は合っている。
あの中に、いてはいけない人が交じっている。
誰なんだ・・・?。

その部屋には午後の日差し、春の風が吹いている。
母も、お弟子さんも絶え間ない笑みを輝かしている。
でも。
一人だけ居た。
中に一人だけ、真っ青な着物を纏い佇む姿があった。
とても奇麗な黒い長い髪。細面の白い笑顔。
彼は初めて見たと言っていた・・・あんなに美しい笑顔は初めてだと。
でも、それは、唇を噛んでいる。
唇を噛み締めて微笑んでいる。

彼は、瞬間思ったらしい。
彼女は違うと・・・。

「なに、・・・K ! そんな所から覗いていないで挨拶しなさい」
「私の息子の・・・Kです。よろしくね」
彼は後に母の無邪気さを恨んだと言っていた。
それがすべての始まりだったから・・・

「Kと言います」

「可愛い・・・」
「きゃ。可愛い」
「先生、男の子なんですか?」

お弟子さんは皆、頬を紅色に染め笑い合っている。
その中で静かに唇を噛んでいる彼女が居る。
彼は照れくさくぎこちない笑顔で、でもとても恐怖を覚えていたと言う。

とても美しい姿。廻りのすべてを隔絶した美しさ。

その彼女が唇を解放し俯いた顔を上げた。
真っ赤な唇・・血の赤色の噛み締めた唇・桜の桃色の頬。漆黒の結った髪。紅色の簪。
とてもひとつひとつが生きている者の現実感が感じられてこない。
長い睫毛、切れ長の眼が視線を合わそうとしている。
廻りのお弟子さん達との動きが違いすぎる。
彼は初めて女性の美しさからの恐怖を覚えたと言う。

「は~~~い。今日はこれでお終いよ!!!・・・」
母が両手を叩き、彼は瞬間に現実の世界に舞い戻った。

でもその娘はそこに佇んでいた。・・・静かに、ただ。
その、微笑みは絶やさなかったと言う。


二日後、彼は玄関に恐る恐る近づいていく。
長い廊下は真っ暗で玄関の障子から入り込む日差しがその草履を照らしていた。
一足の草履が。
「まだ、帰っていない」
彼は恐怖を感じた。


今日は母も祖母も出かけている。
今、この家にいるのは死にかけのひい婆さんと彼だけだ。
彼は幼心にも・・・「俺がこの家を守ってやる」と呟いていた。
そして、廊下から台所・風呂場・便所と一つ一つの部屋を怖々と廻り始めた。
なにも異常は無い。何も不可思議な感覚を感じない。
不可思議な感覚・・・彼は初めて経験したあの感覚を忘れてはいない。
世界がモノクロになり神経を注視した物だけが鮮やかな色を醸し出す世界。色と共に香り・音も鮮やかに記憶に残っている。

一階に残す部屋は稽古場とひい婆ちゃんの部屋と仏間。
二階は彼と母と祖母の部屋。

彼は勘がいい。
何を思ったのか二階に足が運び出していた。
暗く急な狭い階段を上ると春の日差しを無造作に取り入れる窓があり、三人の部屋が存在している。
彼は一つ一つの部屋の障子を開けた。
何も変わった事は無い。開けた障子の隙間から日差しと風が入り込み埃の渦を作り出す。
ただ、彼の部屋は片付けられていた。
「母さん・・・また片付けた、ちっ!」
彼は怒ると口が悪い。

残る部屋は一階の3部屋。
ひい婆ちゃんの部屋・仏間・稽古場だ。
暗い階段を降りるとひい婆ちゃんの部屋、その奥に仏間。
ひとつ通り過ぎた部屋が稽古場。
すべての始まりの部屋だ。

「K~~~K~~~」
ひい婆ちゃんの俺を呼ぶ声が聞こえた。
「何だ婆ちゃん・・・どうした・・・」
俺の悲鳴に近い問いが終わる前に・・・障子が枠に当たる甲高い音が響いた。
その部屋は八畳は在るこの家では一番大きな部屋。
その部屋で婆ちゃんは半身を起こし左手を上げて指差す。
「ここの奥は仏間、お前は入ってはいかん、この障子を開けていきな」
婆ちゃんの左手の指し示す部屋。
「この部屋か・・・ちっ!」
彼は勘は良かったが口は悪かった。

パーーンと乾いた木のぶつかる音が部屋中に響いた。一間ある右側の障子を開け放した。
そこにはあの日の俺が居る。
その背後から今の俺が存在している。
不思議な光景。あの日のあの風景・・・その先に彼女が居た。
唇を噛み締め泣いている彼女が居た


「どうしたの? 唇・・・。そんなに噛んだら痛いよ・・・」
僕の人差し指は無意識に彼女の真っ赤な唇に触れていた。
「痛っ!!! 」
彼女は僕の人差し指を噛み・・・視線を離さない。
「痛いよ! 放してよ!!!」
「痛いよ!!! お願いだ!!! 」
僕の左目から涙が流れていく。

「ごめんなさい・・・」
彼女は僕の指を放した。
そして、瞬間見せた笑顔。

君のなまえは?
・・・・・僕がその問いを言い終わる前に。
「私の名前は・・・華音。・・・華の音と書いてかのんと呼ぶの!!!」

「かのん・・・って言うんだ。素敵な名前だね」
「僕は・・・」

「言わなくていい! 知っているから」

「知っているって・・・?」

「だって・・・貴方。私を見つけてくれたじゃない」
「・・・私を・・・・・一人で震え、泣いていた私を」

泣きじゃくる彼女の。佇むその背後に様々な美しい花々が咲き始める。
そして聞いた事も無い・・・美しい音の共編が響いてきた。

「私・・・貴方に逢いたくて・・・逢いたくて」
彼女の悲鳴の様な叫び声が部屋中に・・・・。
・・・響いた!!!


パーーーーンと木々のかん高い音が現実の世界を呼び込んだ。


僕は・・・何を見たのだろう?


気がつけば母さんが。
僕の肩を揺らしおばあちゃんがその肩越しで泣いている。

「K~~~。大丈夫なの!!!」
「もう!!! 母さん・・・」
初めて母さんの涙を見た。

「ごめん。母さん」
「ごめん・・・」
「母さん・・・僕は何を見たの?」
「僕は、誰と出会ったの・・・?」

・・・昭和42年の春。
僕の人生が始まった。・・・・・

コメント(8)

話しが、怖くなく、僕には華音さんの、妖艶な美しさだけが、イメージできました。実話ですか?
勘がいいといいつつ2階は空振りだったのね(笑)
Kに見つけて貰ったから憑いた感じになってるけど、地縛霊になってた理由は何だったんだろうね?

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