ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

とにかく怖い話。コミュの異人たちとの夏。 初恋。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

もう9月だと言うのに日差しは遠慮なく地面を照りつける。
アスファルトは熱気を帯びて遥かな先に蜃気楼を作っていた。

そんな・・・残暑の辛い夏だった。




俺はいつも通学路の途中で視線を止めていた。
仲間達はいつもの事と俺を無視してくれている。
Kもその友人の一人だった。
彼は、いつも俺を心配そうに見つめていた。

時間にしてそろそろ、俺の視線の先に彼女が現れる時刻だ・・・


そして・・・

20mも離れた十字路の手前の玄関から、彼女は現れる。
まっ白なつばの大きな日陰帽子と右手には白いステッキを持ち。
いつも迎えにくるバスの停留所に歩いてくる。
その停留所は目の不自由な人々が5人ほど並び、盲学校に通っている様だ。
俺は、まっ白な日陰帽子をかぶった彼女に恋をしてしまった。



初恋だった・・・・



ある夏の夕方・・・俺は彼女が帰ってくる時間を待っている。
30分ほどして、送迎バスが止まった。
何人かの生徒が降りて最後に彼女の姿をとらえた。

俺は、腹を決めて告白する事にした。

「すいません・・・」
「はい?」
「俺、この先の高校に通っている浜田と言います」
「はい?」
「なにか?」
彼女は明らかに不信がっている・・・

「突然ごめんなさい・・・」
俺もかなりテンパっている。
「本当にごめんなさい・・・」

彼女は、俺がテンバっているのがわかってくれたみたいだ。

「はい、落ち着いてください・・・・何か私に御用ですか?」
彼女の驚くほどの落ち着きさに、いささか俺も冷静になれた。


「良かったら・・・俺と付き合ってください・・・」
「貴方を初めて見た時から好きになりました」

俺は、テンパってしまい早口で彼女に告白をしてしまった。

「あっ、・・・はいありがとうございます」
「でも、私は目がよく見えないんです」

彼女は少し俯きながらはにかみ・・・
「ありがとう・・・お友達からでいいですか?」

「はい、お友達からで・・・ありがとう」
「俺、浜田と言います」

「私は、福原さとみ・・・」
「よろしくね」

その時には、送迎バスもなく、彼女の友人達もいなくなっていた。

「向かいの方は来るの?」
俺は尋ねた。

彼女は視線を落とし、
「今日は、向かいは在りません・・・一人で帰ります」

「家まで送ろうか?」

「いえ、大丈夫です。さようなら」

彼女は一礼をして・・・逃げ水の見えるアスファルトの道を小さくなって消えていった。







「告白したのか?」
奴が聞いて来た・・・

「ああ、話したよ・・・綺麗な人だったよ」

彼は、視線を避けながら俺につぶやいた。
「深入りするなよ、後が辛くなる・・・」


俺は、まだその時には奴の優しさには気づく事はできなかった。


毎日、通学時に微笑む彼女・・・
夏の夕暮れのたわいもない会話・・・

彼女はよく笑い、その笑顔に俺は夢中になっていく。

・・・初恋か・・・


「浜田さん・・・いつもいらっしゃるお友達は・・・?」

「気を気かしているのかな・・・」
「今日は、いっしょではありません」

「浜田さん・・・私の事どう思っているのですか?」

「俺は、貴方の事を真剣に考えています」

「本当に・・・私を・・・良いのですか?」
真剣な彼女の瞳を私は、裏切る事は出来ない・・・

「はい・・・貴方と何処までも・・・」

彼女は、うつむきながら・・・

「ありがとう・・・」
「私も、貴方の事忘れません」
「決して・・・一生・・・私に死が訪れようとも・・・」

彼女は、その瞳からいくつもの涙を流していた。

そして、その日から二人の歩みが始まり・・・

俺たちは、下校時の短い時間の中で、互いを理解する事が喜びとなっていった。





数日が過ぎ・・・いつもの停車場には彼女の姿が見えない・・・


2日・・・3日・・・4日・・・5日過ぎても彼女の姿は見えない。

俺は、毎朝夕彼女の姿を探していた。

そして一週間が過ぎる頃、友人のKが俺の所に訪れた。

「彼女・・・待っているのか?」
「ああ・・・」

彼は、ため息をついて。
「もう、答えを出さなくては、でなければ、お前も連れて行かれる」
「よく見ろ・・・彼女の姿を」

一週間ぶりだろうか彼女の乗るいつものバスが、いつもの場所に止まっていた。

そして、いつもの通り彼女は最後に降りて来た。


俺の、見た彼女の姿は・・・・

透き通っていた・・・共にバスから降りる友人たちの体に重なり透けていた。

透けて・・・誰にも相手もされず立ちすくんでいる・・・

俺はたまらず彼女のもとに走っていた。


ハアハアハア・・・少し息があがっていた。

「こんばんは、福原さん」

「はい、こんばんは・・・・浜田さん」

彼女は、いままでにないほどの笑顔を俺に注いでくれている。
俺は、あまりにも優しく満面のその笑顔にふれ・・・
涙があふれてしまった。

「楽しかったです・・・短い間でしたけど・・・ありがとう・・・私を見つけてくれて・・・
 貴方が私を見つけてくれなかったら・・・私は永遠に孤独だったでしょう。だから本当に嬉しい  
 のです。本当にありがとう」

「私は、短い人生だったけと・・・とても満足。貴方に会えたからとっても満足です」

俺は、うつむき涙が止まらず泣き続けていた。

「貴方は、この世の人ではなかったんだ・・・」

彼女の瞳からも・・・

「はい・・・私はもうこの世の者では・・・貴方からみたら異人です」

「俺は・・・君が何者であろうとかまわない・・・・

彼女の指が、俺の唇を触れ・・・言葉を遮った。

「もう、私の姿も見た通り・・・終わりが訪れたのです」
「けして、この世界には永遠は無いのです」

「だから・・・ありがとう、さようなら」
「また、いつか会える時まで・・・」

彼女の姿が薄くなっていく・・・
そして・・・満面のその笑顔が・・・きえた・・・

俺は、号泣してしまいその場に泣き崩れてしまった。
奴は、俺が泣き止むまで黙っていてくれた。


俺の異人との初恋は終わった。
遠くの空から遠雷が聞こえて来た夏の夕暮れの事だった。


































あれから幾年が過ぎた・・・俺は新しい恋を受入れて年もとり子供も出来た。

至福の時を過ごしていた。


そして・・・突然友人から連絡が訪れた。

奴が病に倒れ・・・長くはないと。


俺は、奴に久しぶりに会う為に旅に出かけた。


俺は、旅の中、奴との色々な思い出を振り返る。

見える事の無い異人達との交流を・・・

俺の初恋・・・

仲間となった異人・・・

忘れられない少女の悲しみ・・・

すべて彼がいたから経験出来た記憶だ。


奴は、信州の小さなサナトリウムで養生していた。

「空気がうまいな、元気か・・・?」

「今ひとつだ・・・久しぶりだな」
奴が微笑んで俺を迎えてくれた。

「具合はどうだ?」
「良くは無い・・・そろそろだろう」

俺の苦笑いを奴は見逃さなかった・・・

「相変わらずだな・・・」
「お前は純粋すぎる・・・」

「だから、お前とここまで付き合えたのだろう?」

「そうか・・・」
奴の笑顔がなつかしい。

「お前と出会えて、俺は不思議な経験をしてきた」

「この世に存在しない少女とも恋もした、今となっては不思議な記憶だよ」

「不思議なんかじゃ無いんだよ・・・お前は出会うべくして彼女と恋をしたんだよ」
「出会うべくして出会い、別れ、今のお前が生きているんだ」

 彼が続けた・・・
「人には、前世・現世・来世・・・」
「確かに存在しているみたいだ」
「俺にも、お前にも」

「だったら、あの時に彼女に出会ったのも・・・」

「そうだよ・・・」
「今も、彼女の意識はお前のカルマに繋がっている」
「お前に死が訪れたときに彼女は・・・必ず迎えるだろう」

「その時には、俺もな・・・」


 夏の西日が奴の笑顔を照らしてくれた。
 やさしい笑顔だった。

 そして・・・


 彼は、つぶやいた・・・

「人は、一人で生きているのではない・・・」
「すべてのかかわりと共に生きているのだ」
「それは、生きるもの、死しているもの・・・と変わらず」
「私たちは、一人ではないんだよ・・・」

「一人ではないんだよ」




俺は、いままで支えてくれた人々と一体になっている。

 


































俺は、ひとりではない。

みんな、ありがとう。

コメント(22)

前世、現世、来世。
こんな概念が本当に存在してくれたら…
何か切ないけど引き込まれる良い話でしたexclamation ×2
また、次回作も楽しみにしていますねexclamation ×2
これはリアルな話ですか?
って、そんな事はどうでもいいexclamation ×2この話に感動した…。切ないけど良い話涙こんな事があったなら、何か人生変わるかもしれないし、生き方変わると思う。素晴らしい語り有難う御座います。m(_ _)m

長文で失礼しました。
すいませんがまん顔
めちゃくちゃ感動話しですexclamation
だからここのコミュニティーでは読みたくなかったです涙
R嬢様・・・・
生在るものと無いものも・・・心が通ってしまえば恋愛は存在するみたいです。
故に、切ないですね。
人を愛する事は・・・
・・・異人も人なのです。
be*ti様・・・前世・今世・来世・・・・
存在するかは貴方の想像次第かも・・・
でも、私は、信じています。
そんな、経験をしてきました。
あのね、、様・・・
ありがとうございます。
さらに精進致します。
貴方を満足させられる様頑張ります。
涙が,,,
本当に止まりません!

布団の中で
横になりながら
読んでたんですが
感動し過ぎて
切なくて
それから,
ある出来事から
リンクする所があって…

目からは,涙が
とめどなく
止まりません
でした!!

とても,深い話しでした!
人は出会うべくして
出会ったんですね!?

偶然なんかじゃなく
必然なんですね!


あたしは今
腐れ縁で
一年以上続いて
るんですが
あるコの事で,
なんで出会ったんやろ?

出会わなければ
良かった。

と思う自分が居て…


この文章を読んで
重ねてしまって
更に,号泣して
しまいました!!。。。


童遊斎教授@メグ600RR様・夜逃屋@天下無双・改・平様・・・お褒めありがとうございます。さらに精進します。
-・ -・-- ・・・・-様・・・新たなお褒めありがとうございます。
゚*。†來未姫†。*゚様・・・人との出会い、特に恋愛・結婚に偶然は無いと想います。
何百億個の偶然が必然と変わり貴方と彼が出会ったのでは・・・後悔の無い日々を。
怖い話で はじめて感動したような いい話でした涙
闇の支援員様・・・濡れていただき感謝です。
おばびー様・・・ありがとうございました。
切なくて、色々考えさせられるお話でした。
素敵なお話、ありがとうございます。

ただ、カギカッコが別れすぎてて誰が発した言葉かわかりづらい部分が残念でした。
‥‥自分だけでしょうか(汗)

ログインすると、残り4件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

とにかく怖い話。 更新情報

とにかく怖い話。のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング