とにかく怖い話。コミュの【心霊】創られた女

オレの地元に小さな峠がある。

電気のない山道。
峠の先には数件の民家と神社。

その神社の木ではカブトムシがとれた。
小学生の頃は、夜にチャリで峠を越えて、
ミツをぬりに出かけるなんてしょっちゅうだった。

オレにとって、その峠は日常の一部で
特に何の思い入れもない場所だった。

それが３年前から心霊スポットと呼ばれ始めた。

でも、幽霊なんて一度も出たことなんかない。

普通の生活道路。
暗いけれど、カーブミラーもあるし、ガードレールもある。

事故注意の看板や花束なんてあるわけなく、
ガードレールには車がかすった形跡すらない。

それなのに夏になると、どこからかバカップルが集まってくる。

奴らはペットボトルやお菓子のゴミなんかを道路に捨てていく。
しかもふもとのコンビニに集まっては
「何にも出なかったじゃん」「期待はずれ」
とか言ってバカ騒ぎしていった。

オレは幼なじみ５人を集めて、
暇つぶしに奴らになんかしてやろうと思った。
集まったのは、自分とＡ男、Ｂ男、Ｃ子、Ｄ子。

作戦名「そんなに見たいなら見せてやろうじゃん」

オレらは白いワンピースと白い帽子を用意した。
Ｃ子とＤ子、じゃんけんで負けたＢ男がそれを着る。

Ｂ男はスネ毛を剃って、ロングのカツラをかぶった。
スネ毛を剃るときのＢ男の情けない顔に爆笑した。

準備が出来た３人は４つあるカーブミラーのうち
３つの下に１人ずつ立つ。
オレとＡ男はふもとのコンビニで待機。

時刻は午前２時。

赤い車に乗ったカップルがコーラを買った。
赤いワンピースの女が「超怖いんだけど～」って言いながら出ていった。

オレはＣ子とＤ子、Ｂ男にメールを送った。

「今から行くぞ」

３０分後、赤い車が猛スピードで戻ってきた。

赤いワンピースの女は顔面蒼白。

「白い女がいた。白い女がいた。曲がるたんびに白い女が。」

泣きじゃくりながら彼氏の腕につかまっていた。

「ざま～みろ」

午前４時。

オレとＡ男は、Ｃ子とＤ子、Ｂ男を迎えに行った。

騙したカップルは３組。
全員、震えながらコンビニに入ってきた。

オレら５人は大喜び。

楽しい遊びを手に入れたオレらは、
週末ごとに集まっては遊び続けた。
道の脇に咲いていた紫陽花は枯れ、
ひまわりが咲き乱れるようになった。

峠は立派な心霊スポットに創り上げられた。

でも、少しずつオレらはその遊びに飽きてきた。

夏休み最後の日曜日。

この日で終わりにしようってことになった。

いつもの場所に全員待機。
今日もバカップルがやってきた。
案の定、震えながら戻ってきた。

「なんで同じ女が４人もいるの？」

「バカだな、こいつら」

午前４時。

いつも通り、カーブミラーに３人を迎えに行った。

「せっかくだから、神社行くか？」

カツラを取りながらＢ男が言った。

小さい頃に遊びに行った神社。
懐かしい気持ちで車を走らせた。

最後のカーブミラーを越えれば頂上。

そのカーブミラーをすぎる時、オレらは見てしまった。

白いワンピースの女が立っていた。

こっちを見て、手招きしながら。

コンビニに来たカップルの言葉を思い出した。

「なんで同じ女が４人いるの？」

オレらが創ったのは３人。
じゃあ残り１人は？？

オレらは急いで峠を降りた。

全員、何も話せなかった。
あの女は誰だ？
なんでいる？
誰だ？

夏休みが終わり、オレらはそれぞれもとの生活に戻った。
でも誰もあの峠には行っていない。

オレらが遊びを終わらせた後も、噂が飛びかった。

４つ目のカーブミラーの下に女が立っている。

白いワンピースの女が手招きをして。

そして言うのだ。

「私を創ったのは誰？」