ブロードウェイの大女優マーゴ(ベティ・デイヴィス)と付き人イヴ(アン・バクスター)によるジョセフ・L・マンキウィッツ監督の内幕劇物の傑作。ジル・ドゥルーズの「シネマ」においてマンキウィッツは古典的ナラティヴィティ作品の監督と紹介されているように、この作品はマンキウィッツの典型的な回想式映画(この形式は『野郎ども女ども』以外で『クレオパトラ』まで続く)。まあ、そういってしまえばあまり面白味がありませんが、やはり何度見ても飽きない。それは構成というよりもマンキウィッツの演出と名セリフの数々、そして丁々発止の女優の競演が見所だからでしょう。原作は1946年にコスモポリタン誌に発表されたメアリー・オアーの短編「The Wisdom of Eve」。マンキウィッツは脚本化にあたり、彼がちょうどキャサリン・ヘップバーンの「お気に召すまま」の舞台に招かれ、その楽屋で見たヘプバーンがコールド・クリームで化粧を落としながら訪問客を長時間待たせ、横で同棲中だったスペンサー・トレイシーが酒に手を出す様子をすべて脚本に挿入。映画ではベティ・デイヴィスがヘプバーンの真似を優雅にしています。キャストは当初20世紀フォックス社のダリル・F・ザナックがマーゴ役にマレーネ・ディートリッヒ、イヴ役に『三人の妻への手紙』のジーン・クレインを考えていましたが、マンキウィッツは反対、クローデット・コルベールとアン・バクスターに落ち着くも、映画の撮影開始2週間前にコルベールが腰を痛めて降板、最終的にワーナーとの契約が終わったベティ・デイヴィスとなりました。結果、マンキウィッツ監督が「ミンクのコートをポンチョのように着こなす女」と評した横暴な大女優マーゴ役はベティ・デイヴィスのあたり役となり彼女自身の姿だと錯覚されるくらいの適役となりアカデミー賞にもノミネート。残念ながら受賞とはなりませんでしたが、後年アカデミー賞を取れると思った作品は?と聞かれ『イヴの総て』と『何がジェーンに起こったか?』と答えたのは有名な話です。 デイヴィスの魅力を語るときりがありませんが、彼女のドライマティーニの持ち方には惚れ惚れした人も多いはず。日本のsensitiveの人たちが野村芳太郎監督の『疑惑』での桃井かおりの「あたし、あんたみたい女だいきらい」というセリフの感銘したように、欧米のsensitiveな人たちの間では デイヴィスの"Fasten your seatbelts. It's going to be a bumpy night."というセリフは永遠の座右の銘フレーズとなっています。神宮前のラスチカスのいうカフェレストランでもう何年も前に庭にスクリーンを張ってこの映画を上映していたなんてこともありました(今でもそうかな?)。上記のセリフ以外でも天才マンキウィッツ監督によるデイヴィスのセリフには忘れられないものがたくさんあります。 "Heaven help me. I love a psychotic!" "I'm a junkyard." "You're not much of a bargain, you know. You're conceited and thoughtless and messy." "Remind me to tell you about the time I looked into the heart of an artichoke." "I'm so happy you're happy." "Everybody has a heart, except some people." "Bill's thirty-two. He looks thirty-two. He looked it five years ago. He'll look it twenty years from now. I hate men." 余談ですが、ご存知のようにマリリン・モンローも出ています(どうでもいいですが)。1969年にはブロードウェイで舞台ミュージカル『アプローズ』としてリメイクされ、マーゴを演じたローレン・バコールがトニー賞を獲得しました(本当にどうでもいいですが)。
音声解説2種(セレスト・ホームやマンキーウィッツ監督の息子さんが話しているのと、
『All about All about Eve』という本を書いた人が話しているもの)、
日本語・英語字幕あり、吹き替え音声あり、特典ディスクに30分のドキュメンタリーや
当時のニュースフィルムやオリジナル予告編が入ってます。
数年前からアメリカのDVDは2枚組仕様だったのですが、やっと日本でも
この形で出てくれました!