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思えば遠くへ来たもんだコミュの思えば遠くへ来たもんだ 『 山寺 - 山形 』

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仙台から一時間におよそ一本走る、仙山線(仙台〜山形)に乗り、しばらく車窓をぼーっと眺めていると。折り重なった山をぬけ、忽然と山寺という駅があらわれる。文字通り、峻険な岩山にかって開かれた古刹、『立石寺』の歴史そのものが集落をなしている。

ここには、俳人松尾芭蕉も訪れていて、「閑かさや 岩にしみいる 蝉のこえ」という著名な句を詠んだところだそうだ。なるほど、自然のなかにいる自分のありさまがはっきりするような、ある種むきだしの山だ。修験の山としても古くから知られているらしい。


山形の特筆なところは、じつは飯が美味いところだ。牛肉たっぷりの駅弁、美味い。いも煮、もちろん美味い。こんにゃくは串刺しに、歩きながら三串も食べた。山寺の地産は麩だったり、大ぶりのにんにくだったり、若竹だったり、山菜だったり尽きない。


山寺のおしょうさんが、そこかしこでほうきを掃いているわけではない。いまでは観光地としても人気なのだろう。アイフォンを持った白人や、サリーを着たインド人、一眼レフを二台ぶらさげた中国人など、成田山かってぐらい賑やかだ。それでも、石段を一段一段登っていると、ある気配を感じる。かって、千人以上の仏門の徒が寝食をともにし、修業に明け暮れていたという時代。いったいどんな営みが、山に囲まれたこの地で運命共同体として、連綿と繰り広げられたことだろうか。


少しはずれた山におもむろに登る。雨露ですこしずつ掘られた岸壁の穴に、人知れず観音様が安置してある。そこからも、細い山道が続き、迫り出した岩山のうえまで導かれる。こうなると、ひとり世界遺産状態がはじまっていく。


想いを静かに、風に視線を泳がせる。日常の仕事のことが頭によぎる。せんないことが、ふいに浮かんでは消える。組織と個人のあいだで生じたふさがりに過ぎない。それは初めてのことではないし、これからも向き合うこともあるだろうし、いまはどれも、とるにたらないことのように思えてしまった。ここに来てよかった。すっきりさせたかったのだ、太陽の下で。

大空にはふたつの小さい白い点が、ゆっくり十字を切って交差した。ぶつかったりしないものだな。この瞬間を目の当たりにすることだって、随分偶然なことだったりするじゃないか。


桜の木のしたにお堂があって、いくつもの仏の姿に手をあわせ、賽銭を落とし、願った。ああ祈った。これでもかって念じた。最後に良縁を・・・、と思いこんだとたん、その後の茶屋からそわそわしはじめた。はらはらと散っていく桜は、いつまでも美しかった。


帰路につく山形新幹線つばさの車窓から、まだ水のはられていない田園のあぜ道を、夕日のひかりがいっぱいに落ちていくなか。自転車をこぐ少年は、大地のうえをひとり、追っかけるように懸命にペダルをこいでいる。なにを想っているのだろうか、それともどんな歌を歌ったりしているのだろうか。そういえば、山頂でロッキーのテーマとか、べたにやっぱり今日は浮かんだりしていたんだっけ。


2009-4-20

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