風の俳句サロン◇中岡毅雄コミュの幻の句集『盗汗集』藤原月彦　

藤原月彦（龍一郎）氏、若き日の幻の句集『盗汗集』を入手いたしました。

昭和59年10月・端溪社・函・限定100部・頒価3000円・１頁１句組・121頁。

藤原龍一郎氏は、現在、主に、短歌の世界で活躍されていますが、20代より、俳句も作られていて、幻想的かつセクシュアルなイメージで、独特な作風を築かれました。

『王権神授説』（昭和50・12，深夜叢書社）、『貴腐』（昭和56・８，）の２冊の句集が有名ですが、この『盗汗集』は、第３句集。

部数が少ないこともあって、20年以上封印されていた稀覯本でした。

古き日本のムラ社会の「血の系譜」と、妖しげなロマンチシズムをたたえた「セクシュアリティ」が句集全体のテーマとなっている一巻です。

無季俳句も、いくつか含まれています。

初心者の方には、難解に思えるかもしれませんが、抄出した作品は、いずれも秀吟だと思います。

あえて、解説をつけずに、作品のみを抄出しておきます。

「花鳥諷詠」に留まらない、「幻燈」を眺めるようなミステリアスな世界を、ご体験下さい。

　『盗汗集』10句選　風選

　返り花絲からくりの姉いもと

　姉が泣き母は赤飯炊く日暮

　紅梅やわれに知らざる乳兄弟

　近眼の女教師を草矢責め

　すっぽんの血は父のみに半夏生

　恍惚と叔父の軍靴の汗を嗅ぐ

　優曇華や月の障りの母と寝て

　そのかみの母は眞處女夏千鳥

　喀血の痕ある叔父の竹夫人

　錦木やパンパンごつこ縊死ごつこ

　あやかしの血のからくりも朧かな