免許更新

忘れた頃に来る『免許更新』。後４か月で千葉に帰るってタイミングなのだが、こればっかりは仕方がない。実家に届いた更新葉書を大阪に転送してもらい、住所変更したっけ？してなかったっけ？その場合は何の書類が必要なんだ？とすったもんだの末、大阪府和泉市の光明池運転免許試験場にやって来ました。
うち(りんくうタウン)から一旦天下茶屋まで行き高野線に乗り換え。アルファベットの『Ａ』の左下から上まで行き、また右下まで降りる様なルート。クルマなら真横に25km、約30分だが、電車だと１時間である。

４月は新しく始まる生活への期待と不安。それまでの生活に終止符を打つ寂しさ。そして俺の誕生月でもあり、年齢を１つ重ねる(残念だったり悲しい気持ちが強くありつつも、僅かに感じる)充実感や達成感がないまぜとなる季節。
天候も暑かったり寒かったり不安定で、実際今日も部屋の中が蒸し暑く感じたのでＴシャツと半パンで出たが、若干肌寒い。
傘を持つ人が散見されたが、雨がパラつくと何処かで耳にしたな。手ぶらにサンダルだがまぁいいか。

初めて乗る高野線。いつかこれで高野山に行こうと考えているので一足先に乗る形となったが、車窓を流れる景色はいたって普通。
免許試験場は駅から５分ちょっと。小高い丘で、桜の樹に囲まれていた。遠目にはピンクの帯。近付くと、ハラハラと舞い落ちる花弁が春の到来を告げる。



去年の桜の時期だから丁度１年前になるか。何処だか忘れたが、ある床屋に行った時の話。今年の開花宣言は西日本より東京の方が早いそうだ、って話になると
『あちら(東京)さんは何でも１番じゃないと気が済まへんからw』
と理容師が苦笑いした。曖昧に相槌を打ったが、まさか俺が、東京ではないがその隣の千葉県、つまり、ガッツリ関東圏の人間とはまさか思っていなかったであろう。

以前から、東京に対する大阪人の態度は気になっていた。やたらと張り合って来て、あまつさえ『東京もんには負けへんで！』と敵対心すらあらわにする。こっちは『大阪弁て漫才みたいで面白い』とか『たこ焼きが旨い』程度のフワッとした認識しか無いのだが、向こうがケンカを売って来るならこっちだって態度が硬化する。
しかし実際大阪に住んでみると、そんな彼等の気持ちが非常によく理解できる気がするのだ。

東京の方が街の規模が一回り、いや二回りは大きいかな？知識としては知っていても、１個人としてそれは実感できない。『どっちも大都市やん。ここまで来たら同じやろ』ってのが肌感覚だ。にも関わらず、世界的に見て日本は『Tokyo』であり、次に来るのは『Kyoto』だろう。その次に何が来るかはそれぞれで、『Hokkaido』や『Okinawa』辺りになるだろうか。『Osaka』をイメージする人もいるだろうが、『京都に行く為の玄関口』程度の扱いである場合もあり、世界的にはあまり認知されてない気がする。あくまでも俺個人の感覚で、他の大阪人も皆そう感じてるかは判らない。だが大阪という街には、何処となくそんな劣等感が漂っている。

テレビ番組で人気のラーメン屋とか有名なパン屋とかの特集を観ても、その半分以上が東京の印象が強い。その店に興味を持ったとしても東京の店だったりすると、『結局また東京かいな』となる。
日本の人口の１割が集中してるのだから東京の話が多いのは解る。解るけど、それにしても東京ばかりでないかい？うちら(大阪)かて良いモンたくさんあるんやで？と言いたくなるだろう。大阪人は東京の店を『格好つけて気取ってるけど、高いだけで旨くない』とこき下ろすが、あながち間違ってないと俺も思う。それが全国放送で、さも『これが日本を代表するグルメだ！』みたいに扱われるのだ。そりゃ文句も言いたくなる。

歴史の深さもある。豊臣秀吉を筆頭に戦国時代は『大坂』が舞台の中心だし、それ以前の聖徳太子とかも関西圏だ。堺には古墳も唸る程ある。邪馬台国が何処にあったかは未だ不明だが、日本の歴史は関西が中心だった。
大阪に住んで驚いたモノの１つが地名だ。見た事も聞いた事も無い地名が幾らでもあり、如何に歴史が長く深いのか思い知らされた。
なのに、である。
なのに、テレビを点ければ『東京』。
外国人からも『Tokyo』。
ふざけるな！俺たちかておるんやで！
と叫びたくなるのも当然だ。

かつて隆盛を極めた者が、老いて落ちぶれて、新参者に蹂躙されるのは悔しい事だ。だが、大阪が東京にその座を奪われたのと同様に、今日本という国自体が他の新興国に抜き去られつつある。日本全体がやや残念な時代に入って行きつつあるのかもしれない。
盛者必衰は世の常。桜の花の様に散り際は美しくありたいものだ。
ピカピカの免許証を手に、そんな事を思った。次の免許更新、俺は何処で何をしているのだろうか？ま、取り敢えずその日までは元気でいたい。