思い出だけであとはもう十分なくらい
忘れかけてはいるけれど
偏っている記憶や物語でもしょうがない
古いものにしか価値がないわけじゃなくても
腐敗するよりうまく発酵されてしまった
夢の中にいるときだけ過去にいる気になれる
逆算してみると先細りする何もかもを
ちびた鉛筆を削るように
涙を浮かべた蝋を灯すように
大事に大事になんて過ごせやしなかった
肥大する不安の中で裸にもなれず
纏っているのが厚手の手垢がついた
やけに薄っぺらく見える鏡がある
私はいつだって被写体としてたたずんで
決める表情やポーズを持たずにそこにいた
あなたの瞳にうつる残像であったり
耳元に囁ける風のようになりたかった
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