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2020年10月11日00:09

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土曜は……

 土曜日、台風接近で雨が降り続く週末の天気予報を見て、今週末は映画三昧で行こう、と決意。

 午前中にかかりつけのクリニックに行き、その後水槽の水替えを済ませたら、午後は映画2本。

 1本目は、ブルク13で、
 「望み」。
 これは、「検察側の罪人」の雫井脩介による同題小説を堤幸彦が映画化したもの。
 出演は堤真一に石田ゆり子。

 建築家の石川一登と、校正の仕事をしている妻・貴代美は、高校生の息子・規士と中三の娘・雅と共に暮らしていた。
 しかし、規士は怪我でサッカー部を辞めて以来、家族との会話が減り、無断外泊が多くなっていた。そんなある日、規士は家を出たきり帰宅せず、連絡すら途絶えてしまう。そこに、規士の同級生が殺害されたというニュースが流れる。警察によると、規士もその事件へ関与した可能性が高く、現在、規士を含む3名の少年の連絡が途絶えている。そのうち死体を遺棄して逃走した少年は2名。
 規士も無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。果たして規士は犯人なのか……

 これは、犯罪者の家族にも重い責任を求める日本社会を背景に、息子が「犯罪者」となるか、「死体」になるかのどちらを望むのか、と言う究極の選択を求める物語。
 家族を支える大黒柱として、仕事を続ける必要からも、息子が犯罪者ではない事を望む父……それは同時に息子の死を容認する、と言う、ぞっとするような決意なのだが、それを強いてしまうのが日本社会、と言う事か……
 その一方で、ただただ息子が生きて戻る事を望む母は、本来、そうあるべきであろう、とは思うのだが、それがむしろ現実離れしているように描写される辺りが、本作としての方向性だろうか……

 物足りなかったのは、規士の妹の雅が、有名私立校進学の為、兄が犯罪者であって欲しくない、と言うのだが、それは兄の死を願った事になる。これはさすがにトラウマになるのではないだろうか?映画はその辺りを上手く避け、志望校に入学した姿をエピローグで見せているのだが……

 映画としては、犯人捜しは警察に任せ、主人公夫婦をひたすら待ちの姿勢にさせ、その葛藤を描く、と言うのはなかなかない内容で、演者の力量もあって見応えあり。
 ただ、泣きの場面や、犯行の真実などの描写がいささか冗長なのは、気になったところ。
 こう言う場面でいたずらに涙を誘うより、物語を進めて欲しいのだがなぁ……あと、エピローグもやや長く画竜点睛を欠く印象に終わったのは残念。

 映画の後、みなとみらいのマクドナルドで休憩しつつ時間を調整。
 本日2本目は、Kinoシネマみなとみらいで、
 「異端の鳥」。
 これは、ポーランドで発禁となった小説「THE PAINTED BIRD」を、ヴァーツラフ・マルホウル監督が11年がかりで映画化したもの。

 第二次大戦中、ユダヤ人の少年が、ホロコーストを逃れる為に東欧の辺鄙な村に疎開していたが、預け先の一人暮らしの叔母が病死した上、火事で家を焼失。行き場をなくし、家に帰ろうと、一人で旅に出た少年は、行く先々で周囲の人間たちから酷い仕打ちを受けるが、なんとか生き延びようと必死でもがき続け……

 原題の「PAINTED BIRD」とは映画内にも出て来る、群れなす鳥の一羽を捕らえ、色を塗って群れに返すと、同じ群れの鳥たちに異物と見做されて殺されてしまう、と言うもの。
 原作者のイェジー・コシンスキは1965年、原作小説を発表後から激しいバッシングを受け、近年では盗作疑惑なども浮上し、1991年には自殺――まさに、“PAINTED BIRD”となってしまったのだろうか?
 ただ、物語は、叔母の死以降、九つのエピソードを旅をしながら繋げて行く“地獄巡り”で、さすがにこれが自伝とは思えない。恐らく、叔母の死と、司祭のエピソード辺りがイェジー・コシンスキの体験に基づくもので、後は様々な体験談を組み合わせたものではないか、と思う。

 当初は幼く、頼りないと共に動物を愛する心優しい少年が、旅の過程で、ひとり生き抜く知恵を得、嫉妬や性愛を知って、過酷な現実を生き抜いて行く……動物や鳥の死にも心痛めていた少年が、生きる為に老人を殴り倒して追い剥ぎをし、山羊の首を切り、報復の銃弾を浴びせる……成長物語と言うには余りに陰惨なドラマが展開する。

 そんな成長を少年に促した残酷な現実、女子供にも容赦ない暴力――全篇モノクロームの映像は、こうした描写のインパクトを和らげ、幻想的に見せるのには有効だが、これには賛否が分れそう――その残酷さを見せつけるにはやはりカラー映像には強い力があると思いますが……即物的な見世物になってしまう事を危惧したものとは思うのだが。

 映画としては、“地獄巡り”の物語は寓話性が高く、国や地域を限定しないのは、ユダヤ人問題の難しい所だろうか?
 また、人間の悪意と暴力をいささか露悪的に、かつグロテスクに描く本作だが、少年を生き延びさせたのは、その中でも少年に手を差し伸べた善意であり、その善と悪は、同時に、そして時に同じ人にあったと言う事は忘れてはいけないだろう。
 九つのエピソードを“地獄巡り”として少年の目線で描くドラマは、前半は間延びした感じを受ける一方、終盤は今度はカットの繋ぎが粗く、物語が繋がらない所もしばしばあるなど、バランスの悪さを感じる。
 最後、父親が迎えに来た事で少年の地獄巡りは終わり、ラストシーンで、少年は名前を取り戻し、家路へと向かうのだが……ここは、ちょっと綺麗にまとめ過ぎで、とってつけた感があり、むしろ、この物語には終わりは要らなかったのではないかなぁ、と……
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