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2020年06月01日16:19

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年賀状の思い出、「妻の日の愛のかたみに」原作者・池上三重子さん


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大映映画「妻の日の愛のかたみに」は水郷として名高い福岡県柳川市で、昭和28年
ころ小学校の教師をしていた池上三重子さんの同名手記を木下恵介・脚色、富本壮吉
が監督、主演は若尾文子・船越英二という作品でした。柳川は水と白壁に囲まれた美
しい町ですから、ロケは絶対に必要だとなり、私は原作者とロケ報告にはじまり、監
督たちとロケハンに同行したり、柳川市長をはじめ関係先へのご挨拶と地元とのタイ
アップなどに当たりました。
そして柳川で姿美千子扮する教え子が花嫁姿で川を下って行くシーンからロケが始ま
りました。ロケは順調に進み、途中で若尾ちゃんを連れて池上さんのお家にお見舞い
に行ったあたりから、池上さんとの間隔が縮まったような気がします。そして映画が
完成、柳川市で最初の試写会をやろうと、監督以下俳優も全員揃って再び柳川に入り
ました。もちろん原作者の池上さんもお招きしたのですが、「私はきっと泣くでしょ
う。その姿は人に見られたくない。中島さんお願いだから私一人で見せて」と、私は
気持ちよく了解しました。
池上さん欠席の試写会でも大好評で、悪い夫に描かれるのではないかと心配していた
元旦那さまもご覧になり、満足ですと涙ぐんでおられ、ホッとしました。
次の朝は池上三重子さんひとりの試写会です。6人の教え子が担架に乗せて映画館に
来場。映画が終わってやっぱり彼女は大きな声を上げて一時間ほど泣き続けました。
とても良かった、もう泣かないよ有難うと言われて面目をほどこした私に、「中島さ
んもう一つお願い、映画のように舟に乗りたい」ここ数年家から出なかった人の願い
ですから、私は気持よくOK。お弁当を買い、教え子と私も舟に乗りました。約一時間
の川くだりが終わったら、彼女が「中島さん、もう一つ私の望みを叶えて・・・と」それ
は映画のラストシーンに使った"柳川市沖の端干拓の海の夕日"を私にも見せて・・・でした。一日中、赤ん坊のように喜ぶ彼女を見て、私もどんなに嬉しかったか。これこそ
宣伝屋冥利と今でも思っています。
池上さんとの交流は彼女が亡くなるまで続きました。毎年のように頂いた私への年賀
状は、動かない手・指を使って書かれたもので、私の宝物の一枚です。

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