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2019年02月23日16:32

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BREXITと欧州経済 (下)



 英国のEU離脱が無秩序に行われた場合、同国の経済に大きな影響を与える。英国の中央銀行・イングランド銀行(BOE)は2018年11月に公表した報告書の中で、BREXITの最悪のシナリオについてシミュレーションを実施している。
 BOEが想定した最悪のシナリオとは、英国がBREXIT後にEUとの全ての通商協定を失い、2023年までにEUと新たな通商協定を結ぶことに失敗し、英国の国境で関税検査が導入されるために物流が停滞して混乱が起こる「無秩序な離脱」である。
 BOEは、「最悪のシナリオによると、BREXITは英国のGDPを2019年第1・四半期に比べて8%減らし、個人世帯向け不動産価格を30%、商業向け不動産価格を40%下落させる」と予測。その理由は、EU貿易に関税が導入されるので英国からの輸出額が激減することだ。
 さらに英国の輸入額も減るのでEU経済も悪影響を受け、英国の製品への需要が減少する。英国では生産性が下落し、市民の可処分所得も減る。関税はEUからの輸入品の価格を引き上げるほか、ポンドの為替レートの悪化も輸入品を割高にする。
 2018年の第3・四半期の英国の失業率は4.1%だが、BOEは「無秩序なBREXITは失業率を7.5%に引き上げる」と予測する。
 BOEが予想するGDPの減少率(8%)は、リーマンショックが引き金となった2008〜2010年までの世界同時不況の際の減少率(6.25%)を上回る。つまり同行は、無秩序なBREXITが英国に第二次世界大戦以降最悪の不況をもたらすと警告しているのだ。
 英国にとってEUは世界で最も重要な貿易相手である。英国議会調査局によると2017年に英国の輸出額の47%がEU向け、英国の輸入額の53%がEUからだった。英国はEUとの貿易の際に関税が全くかからないことで、大きな恩恵を受けていた。たとえば英国にある自動車組み立て工場は、部品の在庫を最小限に留めておき、受注状況に応じて欧州大陸の部品メーカーから小まめに部品の供給を受ける。これが可能なのは、欧州大陸から英国に部品を輸入しても、税関検査が不要であるためだ。だがBREXITによって税関検査が導入された場合、このような国境を超えたカンバン方式は事実上不可能になる。
 日本などEU域外の企業は、英国をEUへの入り口と見なしてきた。言語が英語であることと並んで、英国がEU加盟国であることは多くの企業にとって、この国を選ぶ大きな理由だった。BREXITはそうした筋書きに大きな影を投げかけるかもしれない。
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de


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