２年２ヶ月ぶりにアルクトリオのコンサートへ行った。前回が2016年12月で、その公演が
青山音楽賞バロックザール賞を受賞して今日の公演となった。
2019年02月16日 15:00開演
会場：青山音楽記念館バロックザール
出演者(敬称略)
ピアノ：小澤佳永
ヴァイオリン：依田真宣
チェロ：山本直輝
曲目
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)作曲
ピアノ三重奏曲第５番ニ長調「幽霊」Ｏｐ．70−１
ジェルメーヌ・タイユフェール(1892〜1983)作曲
ピアノ三重奏曲
フランツ・シューベルト(1797〜1828)作曲
ピアノ三重奏曲変ホ長調Ｏｐ．148、Ｄ897「ノットゥルノ」
15分休憩
ヨハネス・ブラームス(1833〜1897)作曲
ピアノ三重奏曲１番ロ長調Ｏｐ．８
ドイツ３Ｂからベートーヴェンとブラームス、そこにシューベルトとドイツ系が多い曲目だが
非常に興味深い。私はベートーヴェンが好きなのだがシューベルトもブラームスも
ベートーヴェンを敬愛していた音楽家である。ベートーヴェンの「幽霊」トリオはＯｐ．70
という中期の”傑作の森”の作品。「運命」「田園」「皇帝」という代表作が書かれた時代。
Ｏｐ．70は２曲セットだが本曲はニ長調でもあり非常に華やかなユニゾンから始まる。
これを息ピッタリに駆け上がるのが室内楽の醍醐味。繰り返しがあるので都合５回出て来る
が３回目が展開部でユニゾンにならない。このトリオに「幽霊」と名付けたのは例によって
作曲者ではないが長大な第二楽章に由来する。説も幾つかあるがシェークスピア作品に
由来する説がどうやら有力。終楽章はPresto。物凄い速い演奏。
タイユフェールは20世紀フランスの女流作曲家。フランスものは、あまり好きではないが
分かり易い部類の作品だろうと思う。４楽章構成、演奏時間12分の作品。第１楽章はエスプリ
第２楽章Allegro vivaceが個人的に最も気に入った。第３楽章Moderatoはピアノが活躍する。
前半の最後はシューベルトだがＯｐ．は付いているものの出版は1846年つまり死後であった。
1827年にシューベルトは憧れのベートーヴェンと対面を果たすがベートーヴェンは病床にあり、
２月に亡くなる。その棺をシューベルトは担いだ。悲しみのあまり「この中で最も早く死ぬ奴に
乾杯！」と酒場で言ったとか。その真偽は兎も角1828年11月に早逝してしまう。
この１年９ヶ月という短い期間に書かれた。単一楽章であるが歌曲王の面目躍如たる佳品。
ノットゥルノとは夜想曲の意味で出版社が付けたらしい。そして本曲も変ホ長調。
休憩を挟んでのブラームスの１番は20歳の作品なのでＯｐ．８だが今日演奏されるのは60歳
目前に主題の差し替えや楽章の短縮という大きな改訂を加えた版が一般的で今日も改訂版
での演奏。冒頭は美しく壮大な旋律をピアノ、チェロと聞かせる。第２楽章はスケルツォで
軽快さもあるがＴｒｉｏは冒頭の曲調。第３楽章は緩徐楽章、終楽章はロ短調でＢ音は元来
不安定で、それが前面に出る。一瞬の光もあるが結局、突き落とされて終曲。考えてみると
長調で始まって短調の終楽章というパターンはブラームスの十八番であった。
(つづく)
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