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2018年04月16日21:58

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私のベストテン(第9回)

(9) 高坂 研
Belgrade 2016 16th Japanese Sake Tourney, Special Prize (v)
フォト
H#2 Colorless Chess (20+0)

1.axb3 e.p. 0-0 2.Bxe3 fxe3#

Colorless Chess:出題図においては便宜上すべての駒を白で表記するが、どの駒もどちらの駒なのかは予め決まっていない。そして、所属が未確定の駒については、白黒双方とも手順中に動かすことができ、そのことから駒の色を確定させることができる。(勿論、先に動かした側の駒となる)

作意順中に色が確定している駒は以下の通り。
白 : Pb4 Pd2 Ke1 Pe3 Pf2 Pg2 Rh1 Bh8
黒 : Pa4 Ba7 Qd8 Pe7 Kf8 Pg7 Rg8

また、Pe7,Pg7がいずれも黒であることから黒Ba7は成駒であり、成った場所はg1に限られるので(∵1手前には白Pb2が存在していたから)、Pg3は黒である。色がまだ不明な駒はPa5, Sc7, Pd6, Ph3の4枚。以下でこれらの色を確定していく。

Step 1 Ph3は黒ではない

 Ph3が黒だとしよう。更に、色が不明なPa5, Sc7, Pd6が全て黒だと仮定すると、黒は全部で9回駒取りをしていることになるが(Pg3で1回、c筋のPが成ったとして6回、白Bc1も初形位置で取られていて、更にa筋で黒Pによるものが1回ある)、この場合白の配置は8枚なので矛盾。ここで更にPa5やPd6を白に変更すると、黒の駒取りは1回減るが、白の配置も1枚増えるのでやはり不成立。
 以上より、Ph3は白であることが示された。

Step 2 Pd6は白ではない

 Ph3が白ということは、Bh8は白Pc2が5回駒取りをしてh8に辿り着いたことになる。すると、もしPd6が白ならば、これはa2から来たものということになり、白は初形位置の黒Bf8も取っているので、駒取りは全部で9回。しかし黒の配置は既に9枚あるのでこれは矛盾。よって、Pd6は黒である。

Step 3 Pa5は白ではない

 Pa5が白だとしよう。前述の通り白は少なくとも6回駒取りをしているので、このPが駒取りをしているとすると全部で8回ということになるが、黒の配置は既に9枚なので矛盾。よってこの白Pは駒取りをしておらず、直進している。

A) Sc7が白の場合
黒はPg3が1回、そして成Bを作る為に3回、更にBc1も取っているので、全部で5回駒取りをしている。更にPa5が直進していることから黒Pa4も駒取りをしていることになるが、これは白の配置が11枚あることに矛盾。

B) Sc7が黒の場合
A)と同様に考えると、やはり黒は6回駒取りをしている。白も駒取りは尽きている。しかしそうなると、白がa筋の黒Pを取る手段がない。
 以上より、Pa5は黒である。

Step 4 Sc7は黒ではない

ここまでで黒の配置は10枚。白の駒取りは全部で6枚だったから、Sc7は白でなければならない。

以上で、配置駒の色はすべて決定した。つまり、出題図は以下のような局面だったことになる。

フォト

 以上より、Sc7が白駒であることが証明できたので、確かに作意手順で詰んでいることが示された。Q.E.D.

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 チェスプロブレムの世界大会で、日本チームはいつもヘンテコなフェアリールールを使ったTourneyを開催するのだが、Caillaudはそれに結構な頻度でレトロを絡めた作品を投稿してくる。しかも、どの作も「何でそんな短期間でルールの特性を見抜けるの?」と思ってしまうような傑作ばかりなのだ。きっと頭の作りが根本的に違うか、或いは彼はそもそもこの惑星の住人ではないかのどちらかなんだろう(笑)。

 2016年度のSake Tourneyのお題はColorless Chessだったが、これは既に透明駒にある程度馴染んでいた私にとってはとっつきやすいものだった。twitter上で相馬君と作品を潰し合い(すぐに解図ソフトにかけて作意だけ見るような人には、この楽しさは分かるまい)、最終的に5作ほど作っただろうか。フェアリーレトロの創作は初めてだったが、頑張った甲斐あって本作で特別賞を頂けた。しかもあのCaillaudと一緒に!
 その作品も、以下に引用しておこう。拙作と似通った部分もあるので、ルールが理解できた方は是非、作意順が確かに成立していることを確認してみて下さい。

(9-a) Michel Caillaud 
Belgrade 2016 16th Japanese Sake Tourney, Special Prize
フォト
H#2 Colorless Chess (16+0)

1.axb3 e.p. 0-0 2.Bb7 d8=Q#
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