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2016年07月19日19:55

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映画 セトウツミ

セトウツミ

関西の高校生の放課後無駄話映画ってことで、ちょっと気になってた映画。
ところが何かの記事で、原作マンガの舞台が私の育った大阪・堺で、
映画のロケも堺で行われているということを知って観に行くことに。

放課後、塾までの時間を潰すクールな内海(池松壮亮)と
部活を辞めて時間を持て余すお調子者の瀬戸(菅田将暉)が
今日も街中のきれいに整備された小さな河原で無駄話。 
くだらない言葉遊び、背比べ、好きな女の子へのメールの文面、
怖い話、花火、家の蜘蛛、たまに家族のことや将来のこと、、、。
時々現れるヤンキーの先輩、瀬戸が好きな女の子・樫村(でも内海のことが好き)、
瀬戸のおかん、バルーンアーチストが少しだけ波風立てていく。
季節はまったりと過ぎてゆくが、何も生み出さない二人の無駄話は
今日も変わらず続いていく。
河原で暇をつぶすだけの青春があってもええんちゃうん、、、。

これはおもしろい!
二人の会話がもうリアルな普段着の関西人の会話で笑えるし、
それをまったく違和感なく演じた二人の演技、間が素晴らしく、
そのただの無駄話を余計なカット割りや説明を省いたシンプルで静かな演出と、
短い章立ての飽きさせない構成で見せた監督の手腕も見事でした。

冒頭からヨーロッパの映画かと思えるような哀愁漂うタンゴが流れ、
そのタンゴに導かれて章が変わっていったり、画面があまり動かず、
くすっとしたら笑いが繰り広げられる様はアキ・カウリスマキ監督の作品を思い出し、
あるいは会話の面白さやテンポではデビュー当時、”ちんぴらの立ち話”と
横山やすしに激怒されたダウンタウンのゆっくりしたテンポの漫才や
シュールな笑いの伝説の名作コント”とかげのおっさん”を思い出したり。

で、やっぱり自分の高校時代を思い出しました。
ちょうど学校から駅までの10分ぐらいの道のりをクラブやクラスの
ノリのあうツレ(関西では男友達のことをこう言います)と
こんな無駄話しながら帰ってたなと。
内海みたいな理屈っぽい笑いが得意なやつもいたし、
瀬戸みたいなみんなからツッコまれる天然のやつがおったり。

関西以外の人は吉本の芸人とかを見て、関西人はみんなツバとばしながら
相手のスキも与えずボケとツッコミしているように思われがちやけど、
実際、大抵はこんなテンションなんです。ちょっと笑えて、間もあって、ぐらいの。 
なんかそれを過剰な演出なくリアルに描いてくれてたのが嬉しいし、
実際原作マンガが人気あるのもそこが評価されているからのようです。
関西人もちゃんと”間”の面白さを知っているんやと。

それにしても二人のする、神妙な面持ち、”ふし”がある選手権、
敵に見つからないよう身体を細めるフクロウのマネして
ヤンキーの先輩に絡まれた時に必死に身体細めて頬もすぼめたり、
このくだらなさがすごく懐かしくも愛おしい。

堺でロケされているということで期待しながら見ましたが、
冒頭の海から入っていくとこで26号沿いのジャパンの黄色い建物が映った時は
おおっ、懐かしい!と思ったけど、そのあと出てくるのは全然馴染みのない場所ばかりで、
映画のHPで調べると河原はザビエル公園の近くで、学校は泉陽高校周辺
(与謝野晶子、沢口靖子の母校)がロケ地だそう。
私は堺でも内陸の方だったのであまり縁のない地域だったのでその辺は少し残念。

菅田は大阪出身なんで言葉は完璧、
池松は九州出身ですが、これも違和感なかったのは見事。
ヒロインの女の子・中条あやみは阿倍野出身なんで言葉は完璧でしたが、
谷村美月があと5歳ぐらい若かったら、まさにこのロケ地あたり出身なので
ドンピシャだったのに。谷村ファンとしては残念。(谷村が大阪・十三の女子高生を演じた
映画”かぞくのひけつ”はおすすめです。桂雀々、大空テントも名演)

若手の人気俳優二人も使いつつも、
ありがちな映画と関係ないJ-POPのタイアップがエンディングに流れることもなく、
他にも詰め込めるエピソードはいっぱいあったろうに(HPでいくつか使われなかったものが
公開されてます)、潔く75分という絶妙な長さに仕上げた大森立嗣監督のこだわりも好感。

二人の服装で春から夏、冬への季節の流れを感じます。
当然その先は受験や就職、家族の問題とかがあったり、
今までの無邪気な無駄話のモラトリアムの終わりがやってくる。
それまでのつかの間の暇をつぶすだけの青春、
それも大事なひと時やと、”神妙な面持ち”しながら思いました。

この映画、先日日記に書いた”シング・ストリート”と”ブレイク・ビーターズ”を
はしごした日に、3本目のはしごとして見ました。
二本見て疲れたし、ただの無駄話の会話が主体の映画やから
映画館やなくてスカパーとかで放送された時でええかと思ってましたが、
思い切って観てよかった。
いつか映画館で見たことを自慢できる高校生映画の傑作やと思います。

バンドやダンスみたいにやることがまだ見つからない、
探そうともがいている、
これからくる試練を前にどうしていいかわからない、
そんな青春も確かにある。
それを無駄な時間とはいいたくない。
無駄話映画は、全然、無駄ではなかった!ふしがある。

https://www.youtube.com/watch?v=V2iXf8JD7Hc




おまけ:私が好きな普通の高校生映画。

谷村美月が大阪の女子高生を演じた、松竹新喜劇のような味わいの”かぞくのひけつ”
https://www.youtube.com/watch?v=bg4P0_bK830




東京の女子高生のリアルな会話劇 ”ももいろそらを” これもおすすめ。
アメリカの映画祭サンダンスにも出品されて評価を受けた作品。(実際の映画は音楽なし)
https://www.youtube.com/watch?v=FS5Nci7PfG8



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