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2013年08月18日22:21

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(読書)マンジット・クマール著『量子革命』(新潮社)

久しぶりに夢中になって読んだ本だ。本当に面白い。量子力学は、大学2年のときに、「近代物理学序説」のような講義題目で講義を受けたことがある。そのときの講義内容は、量子力学については、ハイゼンベルクとシュレージンガーの量子力学を簡単に説明しただけだったような気がした。

この本を読むと、アインシュタインとボーアを中心とする量子力学の泰斗たちが、量子力学の解釈の仕方をめぐっていかに激しい論争を続けてきたかが生き生きと描かれている。アインシュタインは最後まで量子力学の完全性に疑問を抱き続け、量子力学に論陣を張る泰斗たちに論争を挑み続けた。アインシュタインの物理学の核心にあったのは、観測されるかどうかによらず、「そこ」にある実在へのゆるぎない信念だった。一方、ボーアの物理学への考え方は、物理学とは、観測行為をつうじて自然界がどのように記述できるかを論じることであって、観測行為に依存しない客観的実在のモデルがどうであるかを構築することにあるのではないというものだった。

やがて、ジョン・スチュアート・ベルという物理学者が「ベルの不等式」というきわめて斬新な発想を生み出す。もしもベルの不等式が成り立てば(実験データがこの不等式の成立を示唆すれば)、量子力学は不完全だというアインシュタインの主張が正しいということになる。一方、もしベルの不等式が破られれば、ボーアが勝利者として立ち現れるだろう。そしてアインシュタイン対ボーアの対決は、実験室に持ち込まれた。

そんなとき、アラン・アスペという才能ある実験物理学者が現れた。彼はカルシウム原子から同時に放出されて、互いに逆向きに飛び去るエンタングルした2個の光子を使って偏極の相関を測定した。すると、それまでに行われたどの実験よりも、ベルの不等式が大きく破られていることが示され、その結果は量子力学の予測と見事に一致したのだ。

アインシュタイン対ボーアの論争は、一応ボーアが勝利したと考えられた。だが、最近、この判定は見直しを受けている。実際、量子力学の数学には、観測者は存在しない。また、いわゆる「波動関数の収縮」については、量子力学は何も語っていない。数学者で物理学者でもあるサー・ロジャー・ペンローズは「私自身は、微視的なレベルよりもさらに下層の世界が実在し、今日の量子力学は根本的に不完全だというアインシュタインの確信を強く支持している」と述べている。
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