mixiユーザー(id:7410632)

2023年06月06日15:11

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5月の。

5月に観たのは『逃亡者』『実験室KR-13』『Vフォー・ヴェンデッタ』の3本。

●『逃亡者』
 妻殺しの冤罪を被せられて囚人となったキンブルは護送中の事故に乗じて脱走する。目的は真犯人を見つけて妻の仇を討ち、併せて自らの嫌疑を晴らすコト。有能な捜査官ジェラードが何処までも何処までも追って来る中、キンブルは妻を殺した義手の男を探す……的な。
 正確に云えばこの映画、初見ではなくかなり前に観ては居るのだけど、試写会だったか何だかで劇場ぽいトコで、でもやむを得ぬ事情で途中退出を余儀なくされたので後半を観てないのだよね。んでもって昔のコト過ぎて前半の記憶も殆どなかったのでまぁ初見でいいのでは。いいでしょう。はい初見です。
 物語が進むに従い、敵が徐々に味方の様相を見せてゆき、味方が実は敵であったコトが明らかになってゆく構図は緊迫感があるし面白い。ストーリィの骨組みがシンプルでガッシリして居るからめっさ安定感があるね。メイン二人も名優だし、もう全てをお任せして作品世界を漂って居ればいい類の映画。
 逃亡者キンブルもだけど追跡者ジェラードがいいね。とてもキャラが立って居る。彼が最初に云った「お前が無実かどうかは俺にはどうでもいい」てのは彼の職務的には本音ではあるのだろうね。彼の仕事は飽くまで逃亡者キンブルを捕まえるコトであり、彼の有罪無罪を判断するコトではないのだから。
 そのプロフェッショナルさと、有能で冷徹でしつこい猟犬のような立ち位置はラストシィンを除いて基本的に揺らぐコトはないモノの、キンブルの云うコトを受けてそちらに沿った捜査も『一応』進めてゆくコトで一挙に素晴らしいキャラになる。最大の敵であり最大の味方になる。好きなタイプのキャラ。
 まぁジェラードがそちらに舵を切るのは、彼の無実の可能性に目を向け始めるのは、逃亡中であっても医師として人命救助に手を貸したりするキンブルのまぁ不可解な?行動を受けてのモノでもあるのだけどね。キンブルもキンブルで頑固でタフで、そしてお人よしって云うラインを上手く演じ切って居て。
 この二人がお互いにちょとウンザリしつつ讃え合うようなラストの空気がめっさ素敵。お互いに「よくやるよあんたは。スゲェよ。二度とやり合いたくないね」みたいな空気。それをセリフにする事なく、ラストの車中でキンブルを初めて「先生」と呼び手錠を外すジェラードと、手を差し出し手錠を外して貰うキンブルの僅かなやり取りだけで示す。めっさ良い。ちょと『カサブランカ』とかあの辺ぽいけど。

●『実験室KR-13』
 実験の被験者として内容を知らずにのほほんと集まった4人。いきなり1人が殺され、部屋が閉鎖され、実験が開始される。問いが与えられ、各々が回答し、正解から最も遠い答えの者が次に殺される。残った被験者たちは話し合うが、その思惑は交錯し……。
 よくあるCUBE的映画ではあるけど、管理側が最初から描かれ、しかも主人公はそちら側の新人で、当然管理側の描写や主人公の葛藤も追ってゆくので閉塞感や被験者への感情移入度は薄い。『管理側の視点で観て仕舞う』のよね。無意識に管理側に身を置いて仕舞う。そう云う作りになって居るから。
 それはまぁ『そう云う映画』てコトでいいけど、そのせいで視聴者が傍観者ではなくなり、自らの悪魔性に誘導されるとしたら、それはどんなホラーより恐ろしいかもね。それを意識的に目指したかどうかは知らんけど、もしそうなら製作者は相当クレバーで意地が悪い。まぁ、上手く行って居るならば、ね。
 うん。正直云うと『実験を仕掛けた側』のドラマも描きたかったのは理解する。そちらの雰囲気も悪くはなかった。でもそっちにも軸足を振ったせいで被験者側のドラマとどっちつかずになって、結果どちらも中途半端で薄くなった印象は受けたな。映画全体を覆う硬質で乾いた空気は好みなだけに残念。
 もっとこう、主人公と上司のやり取りを増やし、もっと衝突や葛藤、打ちのめされるサマなんかをバリバリに描いた末でのあの扉を閉める描写→取り込まれオチを迎えて居たら良かったのかもね。ライリーは主人公にするには頭が良過ぎたのかも。まぁ、そう云う学者さんだからあの場に呼ばれたのだけど。
 結論て云うか、ラストで明かされる『この実験の目的』はまぁ陳腐ちゃ陳腐。作中で主人公が指摘して居た通り効率が悪過ぎるしね。結局ライリーは祝福と共にめでたく管理側に取り込まれて終わるけど、ボンヤリ予想して居た『被験者に落とされて終わり』より少しだけマシかもね……マシかなぁ?
 とまぁゴチャゴチャ考えてゆくと『CUBE』はホント優秀な映画だったなってトコに帰結して仕舞うのだよね。似たシチュでアレを超えるのは難しい。でも悪い映画ではなかったよ。惜しい映画って感じ。
 「皆で同じ答えを」て云うクロフォードの提案をポールが土壇場で裏切るのはリアルで良かった。ああしちゃうヒトは居るよね。そのせいでクロフォードの信頼を失い意図的に情報を隠される、のも含めて何らかの教訓を形成しては居たかな。まぁ、最初のルールがごにょごにょだったから無意味だったけど。

●『Vフォー・ヴェンデッタ』
 欺瞞に塗り潰された全体主義独裁国家。秘密警察に絡まれたイヴィーは仮面の男Vに救われる。彼は裁判所を爆破しテレビ局をジャックし1年後の議事堂爆破を予告、国家に対して公然と反旗を翻す。巻き込まれた形になったイヴィーは彼に匿われ……。
 何処ぞの国を彷彿とさせる強権的政府が支配する管理国家の終焉のお話。スピーディでカッチリした展開でダレないのは良い。『民衆よ。自らの力で国家を其の手に取り戻せ!』的な政治的メッセージをストレートに前面に押し立てて来るけどアジテーションとしてではなく、ちゃんとエンタテイメントとして真摯に創って居る印象。殺陣、て云っていいのかな?ナイフアクションなどはとても流麗だったしね。
 古い世界を滅ぼすキッカケを作る仮面のレジスタンス。しかし怨みや復讐に囚われて居る自分もまた滅ぶべき古い世界の一部であり、新しい世界に持ち込んではいけない存在。だからその旧世界を滅ぼすか否かも含め、新世界に関わる全てを『未来を生きる新しい世代』に委ねた。そんな感じかな。悲しいね。
 古い世界に壊され、そして生まれた怪物であるVは、ある意味気が狂って居るのだろう。イヴィー覚醒のために施した行為は何をどう取り繕ったトコで許されるモノではないし。ただ其処で使われるヴァレリーの物語は悲しくも美しい。雨の中で生まれ変わったイヴィー。炎の中から生まれたV。この対比よ。
 最高権力者たる終身議長。エキセントリックなせいで小物感がすごいのよ。で実際小物だけどでも彼が国民に語る「我が国の安全は国民の政府への服従に掛かって居る」これに賛同する人のパーセンテージ、実際にはどのくらいかな。意外と多い気もするのよね。あの結末は夢物語なのかもね。知らんけど。
 一度もマスクを取らないV。それもVは特定の誰かではなく国民自身だってコトなのだろうね。結局は国民が動かないと国は変わらない。Vの呼び掛けに応じて国民は動き、迎え撃つ治安部隊も銃を降ろす。ファンタジィかも知れないけど、でもそうならなくては国は変わるコトはない。それがVの革命。
 結局Vはガイ・フォークスのやり残したコトをやったって認識でいいのかな。其の辺は英国の歴史や社会、そしてガイ・フォークス・デイがはらむ空気を知らんとちゃんとは判らないのかもね。多分。まぁでもその辺を抜きにしてもエンタテイメントとして充分楽しめたし、引き込まれた映画でしたよ。

●●●
 月間賞は、ええと、『Vフォー・ヴェンデッタ』かな。
 僅差で『逃亡者』。1ランク下がって『実験室KR-13』。
 まぁでもみんな面白かったよ。
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