雄大な自然の中で、雲海から襲い来るUFOと、ボンクラ兄妹+ヤマダ電機のアンちゃんのバトルを描いた傑作SF「ノープ/NOPE」。
ボンクラ映画愛好家たちの「空のジョーズ」「空のトレマーズ」という誉め言葉の中。
意識高い系の映画ファンや、映画サイトでは。
ジョーダン・ピール作品にお馴染みの、「これは、エンタメ業界の人種差別や搾取を描いた作品だ!」みたいな論が張られていますが。
えっ?
恐怖の円盤生物の話で?
そもそもジョーダン・ピール監督は。
日本で最初に話題になった「ゲット・アウト」(何故かシネマロサで見た記憶)からして。
「黒人青年が、白人の彼女の実家に行ったら、やたら白人の親戚に持ち上げられて、不健康な白人は、みんな黒人の肉体を乗っ取ろうと狙ってました」という「手塚治虫の嫌な短編漫画か!」という話でしたが。
「いやこれは、黒人が差別され、搾取されてきた歴史がテーマ」みたいに言われると「でもエイトマンみたいに、凄いスピードで走る黒人とか出してたよね」とか突っ込んでしまいますが。
今回も、ジョーダン・ピールというか、作り手側が込めるのは、わかるのよ。
映画に「不穏な空気」とか、「厚みのある不気味さ」を出す為に。
主人公の兄妹は、映画に使う馬の調教師もやってるけど、父の死後、その仕事も上手くいってない。
近所にあるテーマパークの館主は、アジア系アメリカ人で、人気子役だったけど。
大人になったら売れなくなって、昔、自分が出た西部劇をモチーフにしたテーマパークにしがみついている。
おまけに子役時代に共演したチンパンジーが、暴れだして役者を襲った事件のトラウマがある。
これだけ見ると、映画サイトで書かれている「登場人物は皆、エンタメ業界で搾取され、差別されてきた存在であり、彼らを食おうとするUFOは、搾取する側の象徴なのだ」という批評も、頷けそうですが。
恐怖の円盤生物が、搾取の象徴かあ?
繰り返しになりますが。
作り手側がこめるのは、いいと思うんですよ。
でもそれは、僕ら観客が、いちいち「テーマ」として拾う事かしら?
メッセージというより「不穏な空気を醸し出す為の仕掛け」でしかないと思うんだよね。
テーマパークでUFO呼ぶ時、客席に、恐らく昔、チンパンジーに襲われて顔がボロボロになった女優さんが来てるとかさ。
頭からフード被ってる人。
あの人は「不穏な空気」を醸し出してるけど、あまり作品のテーマに関係してはいない。
結局、この映画は、閉塞した今を生きる人が、強大な困難にぶつかって、それを打ち破る話でしょ?
あんまし、今の流行りで、差別だの多様化だの、搾取だの言うと
ちょっと違ってしまうのではないかと思う
テラスの午後三時
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