友達を作るのは酷ヨ

文房具や事務機器の販売でお馴染みの会社【コクヨ】に、
社員が二人集まると、それぞれが無料でドリンクを貰えるという自動販売機があるそうですね。


【社長のおごり自販機】と名付けられたその自販機は、
テレワークの普及に伴いコミュニケーションが減少してしまったため、
社員同士が話すきっかけを作る狙いで設置されたんだそうですね。


サントリー食品インターナショナルが開発したこの【社長のおごり自販機】は、
社員が二人揃って自販機の対象部分に二枚の社員証を同時にタッチする事で、
それぞれ一本ずつ、無料で飲み物がもらえる仕組みになっているんですね。
・・・核ミサイルの発射ボタンと同じような仕組みですね。


無料という事は会社が飲み物の代金を払うという事になりますから、
まさに社長のおごりという事になるわけですね。


社員たちからは
『今日は一人作業の予定だったが、【自販機行かない？】と声をかけてもらい、
流れで雑談のきっかけになった』とか
『たまたま同期とすれ違い、数年ぶりに近況を話し合うきっかけになった』といった意見が聞かれ、
実証実験を通して、九十七・八％の人が『自販機がコミュニケーションのきっかけになった』と
回答してますから効果大ですよね。


これは発案者の社長さんとしては鼻高々ですよね。
「どうだ、社長の俺が考えたんだぞ。お前たち社員に対する施しみたいなものだな。
どうだ、凄いだろ、ハッハッハッ・・・」
これが【社長の驕り自販機】というヤツですね。


ただ後輩社員は先輩社員から
『おい、俺の社員証もって自販機行ってこいよ』なんてな事を言われて、
新たなパシリの形が生まれそうな気もしますね。


「先輩、飲み物買ってきました」
「ご苦労さん。・・・おい、俺の社員証は？」
「あ、すません！失くしました」
後日『ご自由にお使いください』と書かれて自販機に貼られた、
先輩の社員証が目撃されたりなんかしてね。


「社長のおごり自販機があるから、残業してても、缶コーヒー代がタダになるから助かるよね」
なんてな事を言ってる社員が、ふと気づいたら遅くまで残業してるのは
自分ひとりだったりしましてね・・・これは悲しいですよね。


「社長のおごり自販機は随分と好評のようだね」
「はい、確かにそうなんですが・・・社長、経理の方から
『飲み物代がかさんでいる』との報告がありますが」
「大丈夫だ。役に立たない社員をリストラすれば、そんな経費はすぐに出るよ」
「と申しますと？」
「社長のおごり自販機を使ったら、誰が社員証を使ったか使用履歴が残るようになってるんだよ。
この自販機はね、そういうサボってコーヒーばかり飲んでる役立たずの社員を
炙り出すためのシステムなんだよ」
社長のおごり自販機の真の目的が、そんなところにあったら怖いですよね。


微笑亭さん太