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2022年04月05日12:19

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3月の。

3月に観たのは『来る』『ウィンチェスターハウス』『IT』『2012』の4本。

●『来る』
娘も生まれ一見順調に幸せな秀樹の家庭は、妻が一方的にフラストレーションを溜める歪なモノだった。其処に大きな隙間が生じ、その隙間にバケモノがやって来る。子供を連れて行くと云うバケモノを撃退し家族を守るため、秀樹は友人の伝を頼って拝み屋を訪ねるが……。
表現は違えど、芯の部分は概ね原作に忠実に映画化して居る印象。キャストもなかなか良い。イメェジに合って居る。中でも津田、原作だと唐草か、の立ち位置はだいぶ判りやすくなって居ると思った。
秀樹。イクメンで通って居るが、ちゃんと夫と父をやって居るつもりでイロイロやらかして居る。強引で人当たりも何処かズレて居て友人から顰蹙を買って居るとか、旧態依然とした男尊女卑の息づく実家の描写とかも新たに加え、その辺は少し戯画的ではあるがキッチリ押さえて居る。コレが元凶だからね。
怪異の描き方もまぁまぁ好み。姿カタチのあるモノではなく、『にじり寄る怖さ』『怖いと云う感情』そのモノ。実態を持つモンスターではなく、『お山』て云う名のフィールドのようなモノ。ヒト的な形を取るコトはあっても、それはフィールドがそう見えるだけ、みたいな?そう思うととても日本的。
ぼぎわん=ブギーマンは『正体が判らないけどヒタスラ怖いモノ』だからね。その路線で見るとゴア描写は若干多めかも。まぁ『多過ぎる』にはギリギリ届かないレベルだけど。そう云やタイトルから『ぼぎわん』を除いたのは何故だろうな。作中でも殆ど使ってなかったし。忌み名の性質を強めたのかな。
終盤の、サマザマな宗教や拝み屋や科学チームが入り混じったごった煮空間はケッコウ愉しい。まぁ、其処で起きるコトはとてもじゃないけど愉しいなんてモンじゃないけどね。『双亡亭壊すべし』の破壊者チームを思い出した。あーそう云や双亡亭もアレ『フィールドそのモノが怪異』的なアレだったな。
妻を殺す必要はなくない?て思ったけど、全てが嵐のように吹き過ぎたアトにポツンと打ち上げられたような歪な『家族』を創るには必要だったのかな。作劇上。「子供は嫌いです。災いを呼び込むから」て云う真琴の姉。「誰も愛さへんし誰も信じへん。出来た子供も降ろさせる。死人や」て云われる野崎。「子の産めない女が他人の子に一生懸命なの、痛々しい」て云われる真琴。全部『子供』て云う存在に対する歪な感情。それに対する回答のような、そうでないような。続く脱力のラストシィンはまぁ御愛嬌。
真琴の姉。原作のクールな感じがクライマックスの混沌の中でブッ壊れて「こんな無様な祓いは初めてよ!」てブチ切れるのがケッコウ新鮮で面白かった。かな。コレも原作にはないパァツだけど、でも。

●『ウィンチェスターハウス』
銃製造販売会社ウィンチェスター社から大株主の精神鑑定の依頼を受けた精神科医。その大株主は何かに憑かれたように自らの屋敷にヒタスラ増築を重ね、7階建ての迷宮と成り果てた屋敷を更に増築し続けて居る。屋敷に赴いた精神科医だが……的な。
北米に実在する超有名なオバケ屋敷『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』。主が亡くなるまでひたすら増改築し続けた迷宮のような館。何故そうなったの?そして其処で起きる怪異とは?的なお話。
ある意味主役たる迷宮屋敷。その再現はなかなか頑張って居たと思う。まぁ残念ながらホンモノを実際に見たコトないからアレだ、アレだけど雰囲気はめっさあったな。まぁ現存する建物だしな。実際に訪れたヒトもおおぜい観るだろうしな。それを考慮しなくてもセットがチープだと成り立たない映画よね。
その舞台で展開するお話自体は典型的ビックリ箱ムービー、オバケがバーンの繰り返し。場の力もあり、オバケ自体もチープではないので普通に観られるけど単調ではあるな。映像で見るお化け屋敷だね。
話運びは理路整然とスジは通って居て好ましい反面、残念ながらあまり怖くはないのだよね。恐怖は理解出来ないトコロに生じるからね。余すトコなく理解して仕舞ってはダメなのだよね。多分。きっと。
ただまぁ、廊下に並ぶ封印された部屋の扉。その封印の釘が次々に自然にキュルキュル抜けて落ちてゆくシィンとか、なかなか良いシィンもありましたよ。悪くはないのだよね。本当に。悪くはない。
オバケがとり憑くと『ビューティフルドリーマー』を歌うのは何か『悪魔を憐れむ歌』とかアト何だっけ、題名忘れたけど他にもあったな、あの辺を思い出す。ベタだけどいい演出よね。そして割と怖い。
この館で起きるパニックが主人公の精神科医の過去と結び付いたトコなんかもかなり好みでしたよ。ガーデンルームでの妻の死の場面の再現、からの「貴方は生きて。私も自分を許すから」に至るまでの流れ、悲しくて優しい。死者が怨み以外のモノを抱えて生者を訪れるシチュに僕が弱いのも、あるけど。
キャラクタで云えば頬髯の使用人、いい奴だったな。死んじゃったけど。そして執事も職務と主に忠実で悪い奴ではなかった。死んじゃったけど。終わってみれば割と善意に満ちた空間でしたねあの屋敷。
なかなか消せない深い怨みを抱いて居るハズの悪霊たちが、主の一声で皆おとなしく自室に帰ってバタバタと扉が閉まるのはちょと可愛かったかな。割と此処の暮らし、気に入ってないか君ら?みたいな。

●『IT』
子供の頃に出会い、トラウマとなって居る『子供を殺し、或いはさらう』怪異。7人で力を合わせて対決し、退けたハズの『それ』が再び現れた。「もしアレが復活したら再び集まろう」と云う昔の誓いを守り、疎遠になって居たかつての仲間たちが30年ぶりに再度集う。
昔の映画なだけにショック演出も牧歌的と云うかお化け屋敷的と云うか、今の目で見ると微笑ましくさえあるけどそらまぁしょうがない。ペニーワイズも何か可愛いのだよ。牙を剥いて居るトキでさえ。その辺は日本人たる僕の中に『クラウン恐怖症』的パァツがないから、かも知れないけど。文化の違い?
200年前の記録にも残るペニーワイズ。恐怖のあまり見て見ぬ振りをして、それを知るコトを拒否する大人たち。街全体が、街の住人の意識の集合体が、それが身を隠す『巣』になって居る。長年掛けて糸を張り、街を支配して来た彼が子供を殺すのは、怖いからかも知れないね。子供のまっすぐさが。
大人になり、しかし子供の頃の気持ちを失くして居ない彼らをそれは脅す。「今のうちに町を出てけ。お前らは年を取り過ぎた。俺を倒せはしない」と。それは彼の恐れの裏返し。それの存在を真っ向から認め、しかしそれがもたらす絶望は信じず、立ち向かう存在。それが彼にとっての脅威なのだろうな。
そして、大人になったスタンだけは『逃げる』。リアリストで子供の頃、一番最後までペニーワイズの存在を信じなかった彼だからこそ、心の中に『それ』への対処法がなかったのだよね。このスタン、奇妙に印象に残るし感情移入して仕舞うな。そうだよな。立ち向かおうとは思えないよな。なかなか。
『それ』に弟を殺されたビル、父親から暴力を受けて居るベブ、逆に過保護過干渉の母親を持つエディ、そして不良にタゲられいびられて居る彼ら弱虫クラブ。そう云った子供特有の『周囲からの軋轢』。それが心に影を落とし、その影の中にやって来るのかもね。ああ云うモノは。その姿を象って。
その、トラウマになって仕舞って居る子供の頃の傷。それを克服する物語、なのかも知れないね。まぁ、にしてはラストが思いっきり肉弾戦でアレもまたメリケンぽくはあるのだけど、悪いけど少し笑って仕舞ったのも事実。アレも文化の違いかな。何かで前にも云ったけど、メリケンは肉体があって肉体的に危害を加えて来るバケモノのが怖いのかもね。日本風の、実体がなく精神的に危害を加えるモノより。
余談ながらリッチーがサングラスをしてたのは子供の頃の面影を表すためかな。と少し思ったり。

●『2012』
巨大な太陽フレアにより地球のコアが熱せられ、地殻崩壊、噴火、巨大津波など様々な天変地異が爆発的に地球全土を襲う。それを予見し秘密裏に建造された『方舟』には政治家、お抱え学者そして金持ちの席しかない。別れた家族と共に主人公は方舟を目指すが……。
主人公、何も持って居ない男なのだよね。でもたまたま狂人ぽいヤツから政府の秘密裏の計画を聞き、たまたま元妻の恋人が飛行機の操縦経験があり、たまたま雇い主が『方舟』のチケットを手に入れられるレベルの金持ちで、と強運と巡り合わせで危機を乗り越えてゆく。ま勿論本人もめっさ頑張るけど。
たまたま通り掛かったのが船に潜り込む伝を持って居るヤツだったりね。たまたま方舟計画の中枢に居る科学者が彼の著作を読んで居て、その引用を交えた演説がギリギリのトコロで人類の人間性を救ったりね。イロイロ都合いいけどギリギリでもあるから許される。まぁ映画だからそれでいいのだろうね。地殻変動で大陸がガッツリずれ、燃料不足で届かなかった筈の陸地に届くのは少し笑っちゃったけど。
金持ちのユーリ。終盤で主人公たちを見捨てるけど別に悪人と云うワケでもないのだよな。その息子たちも主人公の息子ノアと打ち解けても居たし。ただ下々の者に気が払えないだけ。そう云う回路を持って居ないだけ。その辺が嫌な感じにリアルだったし、何かアッケラカンと見れちゃうよね。仕方ない。
実業家になる前はボクサーだった彼。コーチの口癖「何があっても負けるな。命がけで戦え」を大切に抱え、パトロンをして居る若いボクサーに云ったりして、ちゃんと継いで居るのは好感が持てたよ。
ノア。母の恋人のゴードンに懐き、父親のコトはダディではなくジャクソンと呼び捨て「僕ら家族じゃないだろ」と拒絶する。でも極限状況で思わず「ダディを待つんだ!」と口走り、あー反抗期プラス両親の離婚でぶすくれて居ただけでちゃんと父親は父親として愛して居たんだと判る流れもまたよい。
世界が滅びて行く中、船に乗れない、或いは乗らない人々は、皆冷静に自分の役目を果たしつつ、隣人を助けつつ、離れて暮らす家族と最後の通話をし、共に居る者と抱き合い、そうして穏やかに自分の人生を閉じてゆく。暴動が殆ど起きなかったのはまぁ絵空事かも知れないけどでも映画だしね。夜になるにつれ世界が暗く沈黙してゆくのは昼夜を上手く利用して居て、少し怖くて寂しくてなかなかよかった。
サブキャラでは陰謀論者の狂人チャーリー、個人的にかなり好物でしたよ。その最期も含め。
終盤でゴードンとタマラがケッコウ雑に片付けられたのはちょと気になったな。ゴードンはまぁ、メタな視点で云えば主人公の家族を元サヤに戻すのに邪魔なキャラだったのだろうけど、そんでもね……。

●●●
月間賞は、うーん、『来る』かなぁ。
王道としては『2012』になるのだけど。
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