30歳を目前にしたキャシー（キャリー・マリガン御嬢様）は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアン（ボー・バーナムさま）がカフェを訪れる。この偶然の再会こそが、キャシーに恋ごころを目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになる……。
本作を観てみてまず驚くのが、『ザ・クラウン』第三シーズンで敵役のカミラ夫人を演じていた女優でもあるエメラルド・フェネル監督が、以前幾つかの脚本を手掛けた経験はあるものの、今回が何と長編デビュー作とは思えない程、キレキレの演出と挿入される音楽の使い方が卓越しております。本作は本年度アカデミー作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、主演女優賞、そして編集賞にノミネートされ、オリジナル脚本賞でエメラルド・フェネル監督がオスカーを受賞しましたが、作品賞は兎も角、監督賞と主演女優賞はキャリー・マリガン御嬢様に是非獲らせたかったと観ながら何度もそう思いました。
(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)(>_<)
以下、映画本編をご覧になった方だけが読んで下さい。
(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T))(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)
本作の秀逸なところは、レイプの加害者であるアル・モンロー(クリス・ローウェルさま）を筆頭に「下半身の衝動によって動かされる男」とその行為を目撃しながら何もしなかった傍観者ライアン・クーパー（ボー・バーナムさま）、「証拠が無い」と訴えを撥ねつける女性の学部長のエリザベス・ウォーカー＿(コニー・ブリットン姐さん）、そして医学生の中では美貌と男への取り入り方が上手かった故、ヒエラルキーの上位に立つ女性マディソン(アリソン・ブリー御嬢様）等と言う古今東西哀しくなる位変わっていない権力構造を描いている点です。
大概の事は皆様が書いてある通りなのですが、自分が驚愕したのは主人公キャシーの本名でしてカサンドラ・トーマスと言うんですね。劇中で彼女の本名が名乗られるのはライアンがコーヒーショップに立ち寄った時と、そのライアンの元に刑事が訪れるシーンの二か所だけなんです。
カサンドラとはギリシャ神話に登場するトロイアの王女でして、神様のアポローンに愛され、アポローンの恋人になる代わりに予言能力を授かった。しかし予言の力を授かった瞬間、アポローンの愛が冷めて自分を捨て去ってゆく未来が見えてしまったため、アポローンの愛を拒絶してしまう。憤慨したアポローンは、「カッサンドラーの予言を誰も信じないように」という呪いをかけてしまった。カッサンドラーは、パリスがヘレネーをさらってきたときも、トロイアの木馬をイリオス市民が市内に運び込もうとしたときも、これらが破滅につながることを予言して抗議したが、誰も信じなかった。
そうなんです。言ってもいる事が真実でも誰も信じて貰えない事をカサンドラと侮蔑的に呼ぶようになったと読んだことがあります。今回の映画では彼女が亡くなったあとに「予言」が成就すると言う展開になっていて刑事が訪問の時に我々観客は彼女が亡くなっている事を既に知っているのですね。
ですから震撼したのです。何て計算しつくされた脚本なのかを。今回の受賞は当然ではありますが、出来れば監督賞と主演女優賞も獲らせてあげたかったです。そして、唯一反省していた弁護士のジョーダン(アルフレッド・モリーナ御大）に心安らかな日々が訪れることを願って筆をおきます。
https://pyw-movie.com/
ログインしてコメントを確認・投稿する