愛媛県大洲市は城や古い町並みで有名で、TV連続小説の「おはなはん」の撮影地。四国で幾つか名建築や名城を見学しましたが、一番の感動は大洲市の中心を流れる肱川沿いにある臥竜山荘。
肱川が流れを南から西へ大きく曲げる景勝地に有り、臥竜の名は中洲の小高い蓬莱島からの連想。明治期に神戸に住む大洲出身の貿易商が余生を過ごそうと、構想10年施工3年かけた別荘です。
川縁の断崖のさして広くない敷地に建つ大きな茅葺屋根の3棟は、京都や地元の名工が腕を競ったもの。幅広一枚板や木目揃い銘木や極上内装品を、さり気なく見せる凝った意匠がそこかしこ。
不老庵は川面で反射した月光を舟形の網代天井に映す仕掛け。川面に建屋を半分突き出し、支えるのは崖斜面から伸びた数本の生きた槙の木。丸い障子窓は隣室の神棚蝋燭の灯りを映します。
苔庭に点在する銘石や個々の敷石にも由来があるそう。特に臥竜庵を取り囲む景観が見事でした。鵜飼もある広い肱川の中州に囲まれ、蓬莱島を見下ろし、対岸に冨士山と呼ぶ小山を望みます。
でも戦後は管理が行き届かず一時は荒れ果てたそう。生活するには水回りが貧弱で納戸も無いし、接客にも駐車場や控えの間が無くて使い方が難しそう。名工銘品蒐集に凝りすぎた感がします。
松山城山麓にも美しい洋館がありました。萬翠荘と呼ぶ元藩主がフランス駐在帰りに建てたもの。当時珍しいRCの3階建で、裏山の深緑に壁タイルの白と屋根玄昌石の黒が映えて美しい景観。
和風の詫び寂びや洋風の豪華絢爛を表現した見事な景観建物です。でも少し現実離れした世界です。今ある身近な素材や土地景観を工夫で活かした、もっと実用的な建物が自分には向くかな。
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