「みんなで楽しむ学芸会。」2020年版
※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。
自作発言は厳禁です。 ※
所要時間:約25分
配役→男:女=3:3
※こちらの台本は2017年に上げた「みんなで楽しむ学芸会。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=24167653&id=1960339492 の内容を2020年に数か所変更したものとなっております。
・キャラクター説明
まな 社会人女性。保護者代表。別に子供好きでもないけど、彼らの頑張りを蔑ろにするような人間でもない。そんな普通の人。現実的な目線で話をする。
ゆり 女子中高生。彼女の口内炎により物語が始まる。アホだけど悪い奴じゃない。近くに居ると楽しい。劇中劇の場面直前までずっと口内炎でまともに喋れないが、まともに喋れる場面になってもアホゆえにまともな発言は少ない。
めぐみ 幼女。幼女としてのかっわいくない部分を煮詰めたような存在。本当に我儘で浅慮で自分がお姫様、自分の好きな男の子が王子様でないと嫌な人。彼女に可愛げを見出すとするなら、自分の好きな男の子(虎次郎)に物の見事に手玉に取られているところ。
はじめ 社会人男性。先生。普段の喋りが棒読みっぽい人。何やら良い事を言っている時も棒読みな上に冗長に喋るので、言っている事の良さが半減してしまう。口内炎がひどい状態のゆりの発言を翻訳できる。
虎次郎 男子中高生。何気に作中一番ゆりを気にかけているのかも知れない。天真爛漫に見える男の子。ただその天真爛漫っぽさは、そうしている方が周り(主にめぐみ)を御して場をとりまとめ易いからそうしているところが大きい。小悪魔と言えば小悪魔。
東 幼き男の子。ちょっと引っ込み思案。ゆりを気遣う気持ちももちろんありながらも、自分がちゃんと役を演じきれるかで精いっぱいなところも大きい。めぐみに舐められている。
本編
めぐみ「みんな私のことは良いから逃げて!」
虎次郎「そんなことできるわけがないだろう!君を助けてみんなで王国に帰るんだ!」
めぐみ「もう魔王がそこまで来てる!あなたまで食べられてしまったら私は…!」
…
めぐみ「…チッ。」
…
めぐみ「ここで魔王が登場する筈なんだけど!魔王役だれ!?」
はじめ「んー…。あれ、ゆりさん。どうしました?」
ゆり「ふぇ…。」
はじめ「えっと…?」
ゆり「うにゃうにゃうにゃ。」
はじめ「…はい。分かりました。…皆さん、ゆりさんがですね…。口内炎がひどくてろくに喋れないみたいです。」
虎次郎「え?だいじょうぶなの?」
ゆり「ぁうあぅぁうあぅ。」
はじめ「とりあえず魔王役をやるのはもうつらいそうです。」
まな「…発表会まであと二週間だけど、口内炎って二週間で治るっけ?」
はじめ「まあ普通は治るでしょうけど、酷さによるでしょうね。でもこの様子を見ていると大分酷そうですし、間に合わない可能性も考えないといけませんね。」
ゆり「すむあぶむ…。」
はじめ「大丈夫ですから。」
まな「なんて?」
はじめ「劇はずっと楽しみにしていたから、何か他の役で出たいと言っています。」
まな「えっ?そんなこと言われたってなぁ…。ゆり、かきくけこって言ってみて。」
ゆり「ぁきくくぇくぉ。」
まな「…いやこれ無理でしょ。」
はじめ「なら台本を変えるしか…。」
めぐみ「はぁ!?今まで練習してきたのにどうするの!?」
虎次郎「でもゆりちゃんも参加しないとだめだよ!」
めぐみ「…うん。じゃあどうやって変えるの?」
まな「とりあえず今の配役を確認しようか…。えっと、めぐみ…乙葉(おとは)さんがお姫様。さらわれて助けられる役。虎次郎が王子様、助ける役。ゆりが魔王様、悪のカリスマ。はじめ先生が王子様の家来の大臣、王子様をサポートする。私が便利屋、展開上で困った時にそれを解決する。東…東君が無害な少年、弱いけど旅についてくる。」
めぐみ「いつもの事だけどなんで私だけ乙葉って苗字で呼ぶの?」
まな「呼びやすい呼び方ってものがあるんだよ。」
東「えと、それでそのゆりちゃんが魔王様なのに全然喋れなくなっちゃったんだよね。」
虎次郎「僕が魔王様代わりにやろうか?」
めぐみ「そんなの」
東「いや虎次郎君は魔王様難しいよ。今まで正反対のキャラしか練習してないんだし。」
虎次郎「じゃあ僕、魔王子様になる!」
めぐみ「いやだからそんなの」
はじめ「魔王様が病気だからとか色々理由をつけてやればできそうな気もしますね。」
東「じゃあ王子様はどうするの?」
はじめ「年齢的に考えて東くんしか無理でしょうね。」
めぐみ「王子様は虎次郎くんじゃないと嫌!」
虎次郎「めぐみちゃん!」
めぐみ「な、なぁに?」
虎次郎「僕魔王子様がやりたい!」
めぐみ「うん!」
東「がんばって練習しないと。」
まな「それで、先生。劇どうするんです?」
はじめ「今日中に台本を修正して明日から練習するしかないでしょうね。」
まな「…それでちゃんとした劇になれば良いですけど。ああ面倒臭い。なんでこんな時に子供会の保護者の順番が回ってきちゃったんだろ。」
はじめ「その台本なんですけど、一応今こんな感じで考えてまして…。」
まな「ああ…。虎次郎の演技の特徴を考えるとこの辺はもっと優しい表現というか、憎み切れない感じにした方が…。」
はじめ「そうなるとここはもっと砕けたというか、ちゃんとした戦いのシーンにしない方が良いんでしょうか…。」
まな「そうですね…。ここは技名とか言うよりもむしろ…。」
ゆり「すむらえる…。」
めぐみ「ゆり…やっぱり口内炎ぜんぜん治らないんだね。」
ゆり「さびうむ…。」
めぐみ「はぁ。何言ってるかわかんないし、ああもう…。」
はじめ「皆さーん。まなさんに手伝ってもらって、新しい台本を用意しましたので、取りに来てください。」
東「…え、僕これなの?本当に?」
めぐみ「…なんでこんな!…あ、でも…そっか。いいのかな…。」
虎次郎「これだったらゆりちゃん口内炎が治らなくてもできそう!」
まな「時間がなくて大きな変更は難しいけど、どうしてもっていうのがあったら先に言ってねー。」
東「姫は返してもらう!!さあ魔王子よ!今度こそ決着を着けてやる!!」
めぐみ「あのさぁ、東さぁ。そこちょっと迫力つけるんじゃなくてもっと爽やかな感じでさぁ。」
東「いや、ここは前後の流れもあるしちょっと大げさなくらい迫力出す方が」
めぐみ「でもさぁ…。」
虎次郎「めぐみちゃん!」
めぐみ「どうしたの!?」
虎次郎「僕のこのシーンだけど、どんな感じで言おう。」
めぐみ「虎次郎くんの思うとおりにすれば、それが一番格好良いんじゃないかな…?」
はじめ「皆さん。これから出番ということで、結局ゆりさんの口内炎は治ったので台本に手を加える必要もなかったわけですが、結果として変更後の方が皆の良さが出ている気がします。その良さを発揮しましょう。ただ、皆さんがゆりさんのために、ゆりさんがもしかしたら出られないかも知れないというそういう可能性を排除するために一生懸命にがんばってくれたことそれ自体私はとても嬉しく思っておりまして」
虎次郎「せんせい!」
はじめ「はい?」
虎次郎「がんばる!」
はじめ「はい、がんばりましょう!」
ゆり「いぇぇぇぇぃ。」
東「今からトイレ行く時間あるかな…。」
まな「今なら多分間に合うから急ぐよ。私も付いて行く。」
めぐみ「じゃあ私も。」
まな「女子トイレは混んでそうだからもしかしたら諦めてもらう事になるかもだけど…とにかく二人とも急いで行くよ。」
まな「皆さん本日はお集りいただき、まことにありがとうございます。それではこれより劇を開始しますので劇中はなにとぞお静かにお願いします。それでは、タイトル…"結局口内炎は10日くらいしたら自然と治った。"」
ゆり(ナレーション)「かいえんします!」
ゆり(ナレーション)「ここは、びろーにおうこく。」
はじめ(大臣)「大変です王子様!全然お互いにその気はないけど一応婚約者ってことになってる、あのくっそ生意気な姫がさらわれました!」
東(王子様)「そんな!…早く助けに行かないと。大臣、付いて来てくれるね?」
はじめ(大臣)「もちろんです。ただ姫を攫ったのは恐らく魔王。いかに急ぐと言いましても我々3人では荷が重いと考えられます。」
東(王子様)「分かった。仲間の候補は居るのかい?」
はじめ(大臣)「…はい。お金さえ払えば善悪に関係なくどんな仕事でも請け負う凄腕の便利屋が居ます。その者を連れて行きましょう!」
東(王子様)「頼んだよ、大臣。姫…。」
ゆり(ナレーション)「回想シーン。」
東(王子様)「見て見て、姫ちゃんっ!お花でかんむりを作ったの!」
めぐみ(姫)「そんなの作って何になるの?別にお金を出せばもっときれいな本物の冠がいくらでも買えるのに。」
東(王子様)「聞いて聞いて!身長がね!また伸びててね!」
めぐみ(姫)「ふん、どっちみちセイヤくんより低いんでしょ。ちびっ子王子様っ!」
東(王子様)「あのね姫ちゃん!このお弁当お母さんが作ってくれたんだ!一緒に食べよう?」
めぐみ(姫)「あんたさぁ…。仮にも王子様の筈なのになんでシェフが作った物以外を食べてるのぉ?」
ゆり(ナレーション)「回想おわり。」
東(王子様)「…なんかイライラしてきた。僕が大人だったらこういう時にタバコを吸うんだろうな。」
はじめ(大臣)「王子様、例の便利屋との交渉を済ませてきました。」
東(王子様)「あ。ありがとう。手際が良いね。」
はじめ(大臣)「多分交渉シーンを描いても面白く書けないと思ったので。」
まな(便利屋)「とりあえず1,000万ソーダで付いて来たけど適宜追加料金は請求しますのでよろしくお願いします。」
東(王子様)「…うん!とにかく、早く旅に出よう。」
ゆり(ナレーション)「どどーん。びゅびゅぅ〜。」
はじめ(大臣)「な、なんだこれは!」
虎次郎(魔王子様)「残念だけど…君たちの旅は始まる前にここで終わる!」
東(王子様)「あ、あれは!」
まな(便利屋)「あれは魔界の王子!びろーに王国の王子様と同じ弱冠12歳にして既に魔王の力の大部分を受け継ぎ、現在病床に伏している魔王に代わって指揮官を務めているという男!ちなみに弱冠とは20歳のことを指す言葉であって転じて若い存在を指したりもするけど、それでも私は弱冠22歳とかそういう20歳超えてる人に対してこの言葉を使っているのを見ると"ああぅ!"となる!」
虎次郎(魔王子様)「ダークネスドレスアップ!」
東(王子様)「あ、あれは!」
まな(便利屋)「元々黒い感じの王子様っぽい何かの衣装を纏っていた奴が、見る見るなんか黒くて悪っぽそうな感じの鎧を身に纏っていく!きっとこれでパワーアップしているんだろう!」
はじめ(大臣)「王子様!この魔力…!最初から全力で戦わなければ勝てません!」
東(王子様)「分かった!行くよ。」
まな(便利屋)「はあああああ!」
ゆり(ナレーション)「どったんばったん。」
まな(便利屋)「つ、強い…!これほどの強さ、どうすれば倒せるんだ…!」
虎次郎(魔王子様)「くくく、これで止(とど)めだ…。」
東(王子様)「勝てないのか、僕たちは…。救えないのか、めぐみちゃんを…。」
ゆり(ナレーション)「回想シーン。」
めぐみ(姫)「王子様さぁ。私と同い年なのにこの程度のかんじも読めないの?これはね、"さかづき"って読むんだよ?」
ゆり(ナレーション)「回想終わり。」
東(王子様)「…うん。いや、あんなのでもやっぱり困ってる人を見捨てちゃいけないんだ。」
はじめ(大臣)「そのとおりです王子様!」
まな(便利屋)「助ける命と助けない命を差別しちゃいけないんだ!」
ゆり(ナレーション)「ぴかん!」
虎次郎(魔王子様)「なんだこの光は!!!!」
ゆり(ナレーション)「」(鼻歌)
東(王子様)「空から札束が!」
はじめ(大臣)「みんなの思いが奇跡を起こしたのです!これだけのお金があれば!!」
まな(便利屋)「魔王子さん。魔王様は今病床に伏していると聞いています。このお金で良いお医者さんのところに連れていってあげてください。」
虎次郎(魔王子様)「くれるのか!?ありがとう…!さらばだ!」
ゆり(ナレーション)「あぴる・しん、しん・むばりと、…っは…んむらび…。」
まな(便利屋)「ナレーションの人は"その後、恩を感じたのか魔王子さまは部下を送り込むことも自ら出向くこともなく、普通に4人は魔王の城までたどり着いた。"みたいなことを言っています。」
はじめ(大臣)「ついにここまで来ましたね…。」
東(王子様)「うん!僕たち4人で、いや敵が襲い掛かってきたのは最初だけだったけど普通に長旅でそれなりの苦労をともにしてがんばってここまで来たんだ。その旅も、今ここで全てが終わる!」
ゆり(ナレーション)「ごごごごごごごご。」
ゆり(魔王様)「さむす・いるな、あび・えしゅふ!!」
虎次郎(魔王子様)「父上は持病の口内炎でうまく喋れないが"よく来たな!私が魔王だ!"と言っている。」
はじめ(大臣)「なんだと!?」
東(王子様)「ま、まさか!!!!」
まな(便利屋)「そんな!!!!」
東(王子様)「今まで一緒に旅をしてきた…ナレーションの人の正体が、魔王…!?」
まな(便利屋)「こいつはびっくりだ。」
ゆり(魔王様)「ぁっぇぃいぁぁぁぃぇ…。」
虎次郎(魔王子様)「父上。私が代わりに言いますから。父上は"だってしょうがないでしょ。まともに喋れない魔王さまの役だけじゃなくてちゃんと少しでも喋る役もやりたかったんだ。"と言っている。」
東(王子様)「……あ、そうだ。とにかく!姫は返してもらう!!さあ魔王子よ!今度こそ決着を着けてやる!!」
めぐみ(姫)「その必要はない!!」
まな(便利屋)「なんだあの女!」
はじめ(大臣)「姫!」
めぐみ(姫)「私はたしかに攫われてここに来た。けどね。私分かったの。あんな窮屈なお城の中に私の生きたい場所はないの。」
東(王子様)「姫…。」
めぐみ(姫)「そして何より、ここで魔王様と結婚すれば、魔王子様は私の息子ってことになるの。それがもうかわいくてかわいくて。今から楽しみでしょうがないの。」
東(王子様)「そ、そんな…!君はまさか、既に…。」
はじめ(大臣)「もしや洗脳を…!」
まな(便利屋)「あー、うんうん分かる分かる。あの魔王子かわいいよねー分かる分かる。」
ゆり(ナレーション)「回想シーン。」
まな(便利屋)「あ、今の発言は魔王様としての発言じゃなくてナレーションの人としての発言です。」
めぐみ(姫)「私ね。同年代の男の子はなんて言うか、恋人とかそういう目で見られないの。やっぱり男は年上よね。でも同年代の男の子でも、かわいい子は甘えさせてあげたいとは思うかな?」
ゆり(ナレーション)「回想終わり。」
まな(便利屋)「以後この人、魔王様に戻ります。」
東(王子様)「…大臣。とりあえず他の人たちにはうまいこと言って、この子たちの幸せを守ってあげよう。」
はじめ(大臣)「そうですね。でも王子様は婚約者がこんなことになってどうするのです?」
東(王子様)「うーん…。」
ゆり(魔王様)「ぐわっはっはっは。」
虎次郎(魔王子様)「なんかもうそろそろ出番終わるっぽいから最後に魔王様っぽくうなってみたくなったそうだ。」
まな(ナレーション)「どうも、便利屋です。追加料金50万ソーダを受け取ってナレーションの仕事を引き継ぎました。………数か月後…。」
東(王子様)「それでさ。その子は身分も低いし見た目も良くはないけどね。でも、僕が身分を明かした時にまゆひとつ動かさずに、"へえ。そうなんですね。"って言ったんだよ。それが嬉しくてさ…。」
はじめ(大臣)「便利屋に追加料金1,200万ソーダを払って婚活パーティに混ぜてもらった甲斐がありましたね。」
東(王子様)「今、その子に向けてお手紙を書いているんだけど…その…。」
はじめ(大臣)「良いですよ。ちゃんと、お友達に書く場合の、お手紙の作法というものを教えてさしあげます。」
東(王子様)「うん!」
まな(ナレーション)「人の幸せの形は誰かに決められるものではない。そんな当たり前のことを、あの子たちは教えてくれたのかも知れません。…完!」
ゆり「おつかれさま!いぇぇぇぇぇぇい。」
はじめ「"皆さんには感謝してもし切れないです。一生かけてこの恩は返していきます。"と言っています。」
ゆり「んぅ!?」
完。
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