私の一人暮らしの歴史と共にあったローチェスト。
遠い昔、友人宅で不要となったモノを貰ったものだ。
彼は横浜の自宅から八王子の私のアパートまで予告も無しに運んできて、有無を言わさず部屋に設置していった。
突然のことで驚いたが、その家具の利便性は高く、それ以来、部屋はこのローチェストありきの生活を続けている。
今思えば非常に親切な奴だった。
家で不要となった家具を見て、アイツの所に必要だろうと想像し、手間暇かけてわざわざ持ってきてくれたのだ。
このローチェストを長く使い続け、ボロボロになってもなかなか手放せなかったのは、そんな彼の思いが胸に突き刺さっていたこともある。
先日の引っ越しの際も件のローチェストと共に新居に移り住んだ。
いつも通り便利な場所にローチェストを配置させ、その他の家具等を並べていく。
その後、引っ越しの片付けが済んで生活のリズムが整った頃、ふいとローチェストの引き出しの取っ手を引いた。
バキッ
いつもと違う角度で引っ張ったのが良くなかったのか、老朽化で弱っていたのか、取っ手が付け根から割れて取れてしまった。
冷静にボンドで接着して修理をしたが、何かの合図のような気がした。
元々中古だったこともあり、表面の化粧板が剥がれたり、上板がゆがんで引き出しが奥まで入らなかったりと、見た目や不便さを誤魔化せなくなってきていたのも事実だった。
ついに一大決心をしてローチェストを新替えした。
もっと大きなタンスや収納棚を選ぶ選択肢もあったが、結局これまで使っていたサイズによく似た2段ローチェストしか考えなかった。
何故だろう、友人への敬意か、生活習慣の踏襲か、機能性の追求か、それとも家具を選ぶセンスとしてローチェストが好きなのか。
もしくはそれら全部。おそらくはそれら全部。
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