一月の下旬のことだった。
デイから戻ったハハが、タッチアンドゴーで、お小遣いを握りしめて近所のコンビニにでかける気配がした。
「モンちゃん、オバチャンまたビール買いにいったでぇ?」
コンビニに買い物にいくのは、お小遣いをもらった日のルーティンなので、ワタシは放っておいた。
玄関のカギを占めて、コンビニまで歩いていき、目的の缶ビールとタバコを買って帰ってくるのである。タバコはいらんが。
しばらくするとハハが帰ってきて、焼き鳥なんぞを持っている。
(今日は焼き鳥にしたのかな? タバコと違ったらいいけど)
そして、ワタシに言った。
「Ⅿさん(むかいの奥さん)に1000円借りたから、返しといてな」
なにぃ?
ワタシがご近所にお金を借りるのが一番嫌がると知っての狼藉か??
「Ⅿさんにお金借りたん?」
「うん。チビちゃんらのお土産の分が足らんかったからな」
「犬に土産はいりません」
「どうしてお財布の中で足りるように買ってこないの!」
「はいはい、次から気ぃつけます」
1000円札を握りしめて、Ⅿさんちにむかった。
お金を借りにきたときの様子を、いろいろとおしえてもらう。
幸いなことにウチのご近所さんは、お向かいもおとなりも、認知症介護経験者なのでハハにもワタシにもとても寛容である。ありがたい。
お礼とお詫びをいって、次にコンビニに行く。
「あの、〇時頃にシルバーカー押したおばあさんがきてると思うんですけど、なにかご迷惑かけてませんかね?」
「あー。ちょっと待ってくださいね。担当してた者がまだいるので、説明させます。」
なになになにいー なに聞かされるのん ビクビク
裏からでてきてくれた男性の話をきくと、なんとハハはその日は3回もコンビニに行っているのである。
1回目は普段どおり、缶ビールとおつまみを買った。
2回目は焼き鳥とタバコを買おうとして、レジで「お金を払った・払ってない」でもめたらしい。
そして、「こんな店、もうけえへんわ!」と捨て台詞を残して去っていった、
3回目はⅯさんから資金の援助をうけて、焼き鳥と缶ビールを買って帰った。
そして、その話の後、彼はワタシをパニックに陥れる話をした。
2回目、レジでもめたときにレジ台の上にタバコが2箱おいてあったんだって。
レジの人と言い争ってる間にそのタバコをひと箱、いつも持っている小さなカバンにすべりこませた、というのだ。
ワタシはアワアワになった。
それは「万引き」ではないのか?
ついにそれをするようになってしまったのか?
ワタシはあやまりたおして、たばこ代470円を支払い、あやまりながら店を出た。
えーとえーとえーと。
不思議なのは、コンビ二の人たちが誰も怒ってなかったことである。
介護が始まったときに、ハハの顔写真とワタシの連絡先をいれた名刺を渡してるから?
そんなん、8年も前のことやし、、、、
「万引き」が頭の中で渦巻くワタシに「落ち着けどうどう」といってくれた人がいた。
「元のお母さんが万引きをする人でなかったのなら、レジの人とやりとりしてる真に『このタバコはワタシのだ。だってワタシはお金払ってるし!』とこんがらがったんじゃない?」といってくれた。
それならば、コンビニの人たちが怒ってなかったのにも納得がいく。
その後もそのコンビニにはよく行っているがとがめられることはない。
だんだん弱っていくのに、ときどきびっくりするようなことをしてくれる。
コンビニまで三往復。結構あると思うんだけど、足はまだまだ丈夫。
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