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2020年01月14日00:00

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【仁左衛門ずラブ】《シネマ歌舞伎》廓文章 吉田屋

 
1月7日鑑賞。 正月休み明けは人まばら。 初春狂言でまったり笑ってきました。
レビューに書き漏らした こぼれ話を。


公式 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/43/



今から200年ほど前に初演された近松門左衛門の世話物『廓文章』。
演目の通称「吉田屋」は、物語の舞台である新町遊廓の揚屋です。

心優しい店主夫婦を演じるのは、仁左衛門の兄である片岡我當と片岡秀太郎。
終盤に出てくる太鼓持は坂東巳之助。「ワンピース」ではボンクレー、「弥次喜多」ではドSの女形(笑)を強烈に演じた彼ですが、控えめで軽やかな太鼓持ぶりに感心。

お話も舞台装置もシンプル、登場人物も少ないのに、見応えのあるお芝居でした。
歌舞伎座さよなら公演(2009年)の名舞台で、仁左さまも玉さまも美しい目がハート



主人公の伊左衛門は勘当され落ちぶれた身で、紙衣(かみこ)を着ている設定です。
黒・紫・赤・白・金・銀というカラリングは江戸歌舞伎の傾城もの『助六』と同じ。

 (『助六』も仁左衛門の当たり役です)
  https://hochi.news/articles/20181008-OHT1T50057.html

なのに、伊左衛門の佇まいは「はんなり」。助六の「粋」とは全く対照的です。
ポイントは、全身に散りばめられた柔らかな筆文字と感じました。
あれは「夕霧がくれた艶文を貼り合わせた紙衣」なんですと。色男、憎いねぇ。

ちなみに、夕霧太夫の頭から垂れている紫の細帯(鉢巻)は「病人」の印。
彼女は愛する伊左衛門が勘当されて会いに来なくなった心労から患っていました。
伊左衛門の衣装とぴったり同じ紫、シンクロ効果がありました。



シネマ歌舞伎が上方歌舞伎の代表演目を取り上げるのは、確かこれが2作目。
1作目の『女殺油地獄』も、孝夫時代から仁左衛門の当たり役です。

上方歌舞伎の主人公は、基本的に「あかんたれの色男」。
優美だけど弱い人間のダメっぷりを愛する文化があるんです。

 参考・【南座 顔見世 千穐楽】其の三・ 心中天網島 河庄  2010年12月31日
  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1648996834&owner_id=1833905



先日、松本幸四郎版『女殺油地獄』を見て、「これは違う」と激辛評価しました。
その理由をうまく説明できなかったけど、今回聞いた仁左さまの解説で理解。

「江戸歌舞伎はカッコよさ、上方歌舞伎は人間臭さを表現する」

そう、幸四郎の河内屋与兵衛には、人間臭さというか、色気や可愛げがなくて…。

 幸四郎版のレビューと予告編 
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973734608&owner_id=1833905
 


 仁左衛門版のレビューと予告編 
 https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=1833905&id=1749782487
 


上のレビューに、襲われた海老蔵が京都南座の顔見世興行に穴を開けた時の話を
書いていました。仁左さまは、海老蔵の不始末にたいそう立腹していたそうな。

 https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=1833905&id=1634764888
 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1646976986&owner_id=1833905

その理由を「放蕩息子の内面を知り尽くしているから」と私は推測したけれど、
『廓文章』インタビューで仁左さまが語ったエピソードを聞いてハッとしました。

子役だった孝夫(仁左さま)が舞台上で寝てしまうという失敗をしたときのこと。
終演後に「寝てもうたわ(てへっ)」と父(13代目仁左衛門)に言ったところ、
ものすごい勢いで張り飛ばされた、と。プロの厳しさを叩き込まれたそうです。

自分の身の不始末で舞台に穴を開け、お客様や共演者に大迷惑をかけることなど
「絶対にあってはならない」という強い思いが、仁左さまにはあったんでしょう。



こんな動画を見つけました。

十三世片岡仁左衛門の『廓文章』(昭和61) https://youtu.be/P3pusk29YtQ

仁左さまは「親父の芸には到底追いつけない」と言っていましたが、私の印象は
今回見た映画の方が断然上! 美形だし、華麗だし、上手いし、退屈しないから。

こうして新旧を比較できること。 また、面白い演目を後世に伝えていけること。
本来「消えてしまう芸術」である歌舞伎の舞台を記録する価値を改めて感じます。



http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=4888173


人間国宝・15代目片岡仁左衛門の魅力を目いっぱい満喫できる、華やかで愛らしくハッピーな舞台。さしずめ江戸時代のミュージカル・コメディ。シネマ歌舞伎屈指のお勧め作品だ。

なんたって、仁左さま演じる放蕩息子の若旦那・伊左衛門が、かわゆくてかわゆくて! 流れるように優美でキレがある踊りをたっぷり堪能した。こんなに踊る仁左衛門は見たことがない。着流し姿の麗しさは玉三郎の夕霧と並んでポーズを決めるたびジワがくる。綺麗なだけじゃない、ひょうきんな百面相も爆笑もの。

「現実の男が伊左衛門みたいにグダグダ甘えていたら『アホかいな!』となる(笑)ところ、可愛い奴よと観客に思わせるよう演じるのが芸の見せ所」という言葉通り、上演当時60代半ばの仁左さまは、綺麗で上品で甘えたであかんたれでチャーミングな若旦那そのものだった。

玉三郎の傾城・夕霧も非常に美しいが、やや固い印象。ご本人も前半のインタビューで「この演目は13代目(15代目の父)に教わったが、上方の傾城を演じることは難しい。この舞台もあまりうまくできてない」的なことを言っていた。江戸歌舞伎の傾城は粋が肝。勝手が違うのだろう。同じ「仁左玉コンビの傾城もの」(江戸)である《シネマ歌舞伎》籠釣瓶花街酔醒 と見比べたらよく分かる。


簡単な筋で、全編に笑いどころがいっぱい。しかも、前半に解説が入るので、初心者でも楽しめる。「江戸歌舞伎は格好良さ、関西(上方)歌舞伎は人間臭さを表現」というツボさえ押さえれば大丈夫。

仁左さまの芸談はとても貴重で面白かった。風前の灯だった関西歌舞伎を先代とともに復活させ、東京進出にも成功した仁左さまは、苦労人らしく気さくな語り口で、ますますファンになった。

それにしても、若い頃の孝玉(仁左玉)は「楽屋で壁越しに怒鳴りあう大げんか」を繰り返していたとは!笑 玉三郎がツーンとして先に帰った際はビビる一同に「ああいう気性の人やから気にせんときや」と孝夫(仁左衛門)がフォローを入れていたという裏話にもビックリ。笑



mayaさんの感想日記  2022年06月30日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982674205&owner_id=8677079



仁左衛門が語る、新作シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』
https://www.kabuki-bito.jp/news/5953/

「廓文章」くるわぶんしょう (吉田屋)  詳しい作品解説
https://blog.goo.ne.jp/yokikotokiku/e/b2c151407ede19516ad1348772937bf6


仁左玉コンビが演じた江戸の傾城もの、シネマ歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』(実話)
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=1833905&id=1875578169

【INDEX】歌舞伎/舞台/映画 関連日記
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=1833905&id=1217726421


 
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