三斗小屋温泉は那須の山中にあるランプの宿。
登山でしか行けない秘湯。朝の天気を見て予約をし、慌ただしく準備して大子を出たのが9時20分。11時にバイクを置き登山開始。でも峠の茶屋で既に12時。晩秋の日暮れは早く残り４時間。
ここから道が三本に分かれます。三本槍から大峠のルートは時間不足で断念。1819ｍ隠居倉から噴気孔を廻るコースを選び、15時半に三斗小屋温泉に着。今日の投宿は２軒宿の１つ大黒屋。
重い木戸を開けると、薄暗い板の間に主人らしき老人がポツンとコタツに一人。そしてジロッとこちらを一瞥。耳が遠いのかケンカ口調に怒り顔で面喰います。公衆電話も勝手に触るなと一喝！
泊めてやるって感じ。入浴までの間、隣の煙草屋の軒下で自炊していた素泊まり組と雑談。彼らの好意で煙草屋を覗くと、主人から大黒屋の客は勝手に立入るなと注意。なぜか機嫌が悪そう。
17時過ぎ夕食を終え、大黒屋の玄関で自炊中のカップルと消灯の20時まで雑談。自炊場所で主人に冷たくされたらしく、彼らも怒り心頭。後ろでなんと商売がたき煙草屋のＴＶ取材が放映中。
広い建屋に今宵の客は2組3人。煙草屋でも7人とか。紅葉も過ぎた晩秋の寂寥感を味わいます。個室の6畳間で、風呂も板張りの湯治場の風情だし、トイレも清潔。山小屋だと思えば合格かな。
でも客に嫌悪感を与える2軒の三斗小屋温泉。地元の人に聞くと、以前から双方いがみあっている様子。地域おこしは一丸となり盛り上げる必要があるのに、紅葉期の千客万来で余裕なのか。
三斗小屋温泉2軒の客商売とは思えない接客。思えば当方も類似の賃貸業。内見時の言葉づかいや笑顔に反省も多々。他山の石として、暖房費を加えた1万円もの宿賃は、勉強代としましょう。
さて印象に残ったのは早朝の風景。朝7時過ぎ、宿を出るとあたりは冷涼な空気に包まれ、風音も葉音も鳥の声も聞こえず、耳に入るのは霜柱を踏む自分の足音だけ。全くの静寂の世界です。
葉を落とした樹々の間からは、遠く朝靄のかかる晩秋の山々が目に入ります。雄大な大自然。ポツンと一人投げ出された自分。ちょっぴりメルヘン的でつげ義春的な世界。暫し佇んでいました。
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