後手番で船江六段の棒銀を受けた将棋だった。
両者ともに居玉のまま中盤戦に突入するが、藤井六段が打った「筋違い角」。
常識的には、筋違い角は良い手にはなりにくい。これは将棋盤が九路盤であることから、筋違い角を打つとそもそも角が動ける場所が原理的に少なくなり、打った角が目標にされるとそれが重荷になるからだ。
やはりこの打った角はやや窮屈になったが、同時に船江六段の飛車を無力化するのに大きな役割を果たす。一方で船江六段は順当に馬を作って、大ゴマの働きだけなら優勢にも見える展開になった。だが藤井六段が「巧妙に受けた」というのが事実だろう。攻めていながら寄せる決定打を放てないのが先手番の船江六段だった。
夕食休憩後は、じりじりと船江六段の持ち時間が減っていく。それでも先手が攻めているので、いろいろな攻め筋が検討されていったのだが、どうにも寄せに持っていけない。
まるで隙をついたかのように藤井六段が筋違い角を、4五から3六に展開する。
これで勝負が決していたのだが、私には分からなかった。いや船江六段も最後の6八銀打ちで詰んでいるとは思っていなかったと感じる。詰みの手があってそれに気付いているなら一手受けるところだろう。受けずに攻めたのが間違い。詰んでいた。
ただ、この詰将棋は25手詰めだろうか、まあ長手数で「本当に詰んでいるの?」とほとんどの人が思ったのではないか? 控室でこの詰み手順を読み切っていた人がいたのだろうか?
船江六段の投了は早かった。1分ぐらいしか考えなかった。残り時間もわずかだったので、読み切らずに投了した可能性もある。
藤井七段が読み切っている時には、外野で見ていても「読み切っている」という雰囲気があるので、対局者はなおさらその空気を飲まずにはいられないだろう。船江六段は攻めているのに、受けもせず王手掛けられたのだから、「詰んでいる」という空気はビシッと伝わったかもしれない。
船江六段は居玉のままで詰んでしまった。自ら急戦を仕掛けて、玉を囲う暇がなかったのだが、これからの将棋では玉の囲いが必要とされる持久戦はなくなってしまうのだろうか?
何か、今までの定跡が無駄に回り道をしていると感んずるような様相を示しているのが最近のプロの将棋である。ただ、そもそも角交換は拒否することもできる。それでも角換わりの将棋が多いのは、多くの棋士が角を手にもって戦う方が有利だ、と考えるようになったからだろう。
面白かった。結構興奮した。
-------------------- ---------------------
藤井聡太、最年少で七段昇段
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=5117037
将棋の藤井聡太六段(15)は18日、大阪市福島区の関西将棋会館で指された第31期竜王戦5組ランキング戦準決勝で船江恒平六段(31)を破り、4組昇級を決めると共に、「連続昇級で昇段」の規定により同日付で七段に昇段した。史上最年少(15歳9カ月)で、中学生でプロになった過去5人の中でも最速の1年7カ月での到達となった。
藤井七段は2016年10月1日付でプロ入り(四段)し、今年2月1日、第76期名人戦順位戦C級2組無敗で五段に昇段。同月17日には第11回朝日杯将棋オープン戦で初優勝して六段に昇段した。在籍期間は五段が16日間、六段は90日間だった。
これまでの七段昇段最年少記録は加藤一二三九段(78)の17歳3カ月で、プロ入り後の到達期間は2年8カ月だった。条件の追加や変更で昇段規定に違いはあるものの、61年ぶりに中学生棋士の記録を1年以上短縮するスピード出世となった。【新土居仁昌】
こんなに速く、思っていなかった
藤井聡太七段の話 こんなに速いペースで昇段できるとは思っていなかった。目の前の一局一局に全力で打ち込んできたものが昇段という形で表れてうれしい。
ログインしてコメントを確認・投稿する