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2017年12月17日22:50

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『フォースの覚醒』地上波初放送

 一昨日から『スターウォーズ』の最新作が公開されている。それ自体は私には縁がないのだけれど、これに合わせてシリーズの過去作が地上波で放送されていたので、ようやく見ることができた。
 『フォースの覚醒』は公開前こそ話題になっていたけど、封切りになってからは別に話も聞かなかったので、そんなものかと思って期待せずに見たのだけど、ちゃんとおもしろかった。

 公開第一作エピソードIVの衝撃はすごかった。といってリアルタイムでは字幕もろく読めない年齢だったので、実体験としてあるわけではないのだけれど、あのころのなんとなく肌で感じていたことや、後で知ったことを重ね合わせてみると、そのすごさは本当に掛け値なしだったと思う。

 たしか、当時はハリウッドも停滞期にあった。辛気臭いニューシネマは飽きられていたけど、古臭いオールド・ハリウッドにもいまさら戻れず、ひょっとすると映画はこのまま娯楽の王座から滑り落ちかねない瀬戸際にあったと思う。
 今にして思えば、『スターウォーズ』はその時、特殊効果技術の集中投入によってオールド・ハリウッドばりのスペクタクルを復活させ、映画を衰退の淵から救った。以後、ゲームの台頭などあったものの、映画は今も娯楽の王座に君臨している。それは映画史を超えて、文化史上の事件だったといえる。

 もっとも、そのせいで以降のシリーズ作品は、すべてファンのためのイベントにすぎなくなったともいえる。時代もあってのインパクトだから、映画としてどれほどのものを作っても、もはやあの衝撃は超えられない。しかし、ファンも頭ではわかっていながら、当時の熱気をどうしても求めてしまうから、彼らを満足させることはすでに不可能である。
 エピソードIでジャー・ジャー・ビンクスがひどく叩かれたし、『フォースの覚醒』ではレイア役のキャリー・フィッシャーがバッシングされたそうだけれど、部外者からしてみれば、ジャー・ジャーはややあざといながら不快ではなかったし、キャリー・フィッシャーへの非難については酷の一言に尽きる。
 思うに、作品が自分の期待を超えなかったことへのフラストレーションが、しかし、『スターウォーズ』そのものを批判するわけにはいかないから、八つ当たり的に特定キャラへ収束してしまったのではないかと推測するのだけれど、下衆の勘繰りだろうか。

 そのあたり、ジョージ・ルーカスはエピソードIからIIIにおいて、映画を作ろうとしていたけど、実はそれを望んでいたファンはほとんどいなかったはずである。
 一方、『フォースの覚醒』はファンのためのお祭りであることを適切に踏まえながら、映画としての底上げがきちんとなされていると思う。
 冒頭、敵の襲撃からロボットに重要な情報を託して逃れさせ、そのロボットが主人公と合流するまでのシークエンスが、エピソードIVとほぼ重なる。もちろん、随所にイマっぽいアレンジが施されていて、見てすぐ「あ、なぞってるな」とわかるけれど、別にそれで筋がわかるから退屈するということはなく、むしろ、テンポのよさに乗せられながら、エピソードIVの記憶と照らし合わせつつ楽しむうちに、一気に中盤まで運ばれていく。
「わかってるって、安心しろよ」
 片目をつむりながら、言われている感じである。エピソードIからIIIで随所にあった、「あー、やってしまいましたなあ」も一切なかった。

 敵の襲撃を受け宇宙船での逃亡を図るも、目当ての最新式は目の前で破壊されてしまい、仕方なく最初はスルーしたポンコツへ向かって走り出すと、そこでそのポンコツが画面に映し出され、目指しているのがミレニアム・ファルコンだとわかる演出など、これ以上ないほどに巧妙で冴えた登場のさせ方だといえる。観客はミレニアムファルコンを知っているけれど、登場人物たちは知らないことを実にうまく利用している。ジョージ・ルーカスだったら、こうはやらなかったと思う。あの人には語り口のうまさみたいなところがあまりない。

 もっとも、逆にいうと、過去作を見ていなくてもつまらなくはないけれど、十分に楽しめるとはいえない気がする。上記のシークエンスも、エピソードIVを観ていない人には、やや冗長ではないだろうか。初見の人にもかなり配慮されていると思うけれど、「自分にはよくわからないけれど、なんか身内のネタやってんな」感は終始つきまとうはずである。そこはまあ、基本はファンのためのお祭りであることを踏まえてもらうしかないわけだけれども。

 主人公はジブリ・アニメのヒロインみたいで、のっぴきならない過去をにおわせつつ、明るく快活で正義感の強さもうかがわせている。しかし、彼女がフォースに目覚めるくだりも、ファンにとっては『スターウォーズ』の主人公である以上、自明だろうけれども、初見の人はわかりにくいのではないだろうか。
 そういえば、メインキャラは女性と黒人のコンビで、時代を感じる。敵にも女性が多くて、あちらの世界も現代と同じく女性の社会進出が盛んなようである。

 顔見せ程度の出演だと思っていたハリソン・フォードとキャリー・フィッシャーはけっこう出ずっぱりで驚いた。しかも、ハン・ソロはアレである。切りつけられて川や池に落ちたりする、いわゆる川ポチャや池ポチャなら、むしろ、生存フラグだけど、あれってダース・モールと同じだから(真っ二つにこそなってなかったけど)、やっぱり、ダメなんだろう。もう今度から、過去作を見ても、「結局、ああなるしな」としか思えなさそうではある。

 そのあたり、実はけっこう踏みこんだストーリー展開になっていて、ファンの中には受け入れられない人もいるだろうけれど、過去作の設定や雰囲気を尊重しつつ、うまく今にあわせてリファインした手腕が信頼できるので、次作と公開中の最新作もちゃんとおもしろそうである。
 『スターウォーズ』なんてどう作ったってファンからはケチしかつけられないだろうと思っていたけど、これならかなりのファンも納得ではないだろうか。それは地味にすごいことだと思う。

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