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2017年05月29日20:48

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糧秣を受領しての帰途 - 吉田嘉七 ガダルカナル戦詩集より



糧秣を受領しての帰途 - 吉田嘉七


あるいは椰子の根もとをまわり、
あるいは藪にうつふしかくれ、
急ぐ身は敵機過ぐるをひた待つに
また空どよもす爆音の、
こはボーイングの編隊来るらし。

今わが背に負いたるは、
米二十瓩、粉味噌若干。       こめにじゅっきろ
常ならば手にもさげんを、
口惜しや、足取りも思ふにまかせず、
よろめく身、杖にささえて、
今日の日も敵機の下に昏れんとす。

心のみ、いたくはやれど、
執念しや、低空を徘徊す   しうねしや、ていくうをはいかい
この敵に報うべき術ぞなき。
うつふしつつ、面あぐれば、
かの森や、いまだ遠きに、
楽しみてわが友ら待ちに待つらん、
そをあな憎し、敵機去らざる。







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