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2016年12月05日12:04

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11月の。

11月に観たのは『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』『トランセンデンス』『フランシス・ハ』『フローズン』の4本。

●『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
若干粗暴で粗雑な若き国境警備員マイクは、この地に住む不法入国者メルを誤って射殺して仕舞う。国際問題化を恐れ、保安官と結託して犯人を隠匿する警備隊。真相を知ったメルの親友ピートはマイクを拉致し、メルの遺体と共に旅に出る。メルとの生前の約束、妻と2人の娘の居る美しい故郷の町ヒメネスに彼を埋葬してやるために。
埃っぽい荒れ地を馬で旅する男2人、プラス屍体。ピートにとってマイクは親友の仇だけれど必要以上に暴力的になるワケでもなく。それは物静かなピートの性格でもあるが何より彼の目的は復讐ではなく、メルを国境の向こうの故郷に帰してやるコト、そして多分だけどこの若造に己のしたコトの意味を自覚して貰うコト、だから。なのでピートの顔にはトキドキ保護者ぽい色さえ漂う。ような気がする。
そのマイク。ホントどうしようもないヤツなんだよね。捕まえた密入国者に不必要な暴力を平然と奮うような。仕事サボってグラビアピンナップ眺めてニヤついてるような。だからメルを誤射して仕舞う。倒れた彼の生死を足でつついて確認するし、屍体を雑に埋めて隠して逃げおおせようとする。コイツがもうちょとちゃんとしたヤツだったらねぇ……とも思うが其処までは憎めないルーズな小心者。そんな彼だけどこの過酷な旅路で屍体と添い寝させられ、砂漠で脱走してガラガラヘビに噛まれ、自分がかつて殴った女に生命を救われ、そんなこんなを経験するウチに少しづつ、ホントにジリジリと変わってゆく。
この2人の奇妙で濃密な時間、その中でじわじわした変化してゆく関係性が肝かな。この映画の。イヤ面白かったですよ。脇役では保安官の立ち位置が好き。いい人なのか悪い人なのか、コーモリのようにフラフラして最後はちょといい人、みたいな。カサブランカの署長さんを思い出した。ちょとだけね。

●『トランセンデンス』
AI研究者ウィルは技術革新に反対するテロリストの襲撃で生命を落とす。死の間際、彼の妻は友人のAI研究者の助けを借り、愛する夫の脳内情報を全てコンピュータにコピーする。そして起動した『ウィル』は自らを改良しつつ進化してゆく。妻は目の前のコレが夫なのかどうか自信がなくなってゆく。テロリストは『ウィル』の破壊を目論む。そんな感じ。
人類を超越した主人公が自らを進化させつつ世界を改変してくアリサマが『ブラッド・ミュージック』を思い出す。グレッグ・ベアの。どんな天才だろうと個人の独善的なモノサシで勝手に世界をトンカンされちゃたまったモンじゃないな。画面のコッチ側の僕らにとってはダイナミックで結構なのだけどね。他人の重傷や病を治すついでに基板を植え付けて自分が自由に乗っ取って動かせる端末化して仕舞うし。一般常識完無視。良かれと思ってやってるだけに余計タチが悪い。天才とほにゃららは紙一重、ですね。
最初マックスを怪しいと思ってましたスミマセンそう云う映画じゃなかったね。ええと。電脳コピーされたウィル、『ウィル’』にしとこう、ウィル’が暴走してく、ように見える中で元凶であるテロリストが何か世界を救う側のポジションにシフトしてく、その逆転がまぁ面白かったっちゃ面白かったけど釈然とはしないな。そもそもお前らがテロしなけりゃよかったんだよって云う思いがね、拭えないです。
結局、狂信者同士の争いに世界が巻き込まれたように見えなくもないのだよねー。片方の狂信者がたまたま世界の再生にキモチが向いてただけで狂ってたコトに変わりはない、みたいな。何か主人公カップルだけで「愛は勝った」的に満足してキレイに退場してくけど残された方はちょとポカンてして仕舞う。
結局ウィル’はただのコピーだったのかしらね?電脳上に魂をアップロード出来るか否か?で映画は『出来る』て結論付けてたけどチューリングテストをクリアしたただの自己進化型データである可能性も拭えないよね。まぁ映画自身がああなってる以上、無粋以外のナニモノでもないけどさ。まぁ楽しい映画ではありましたよ。取って付けたような幸せオチだったけどまぁああやって〆るしかないわね。

●『フランシス・ハ』
27という年の割には若干子供ぽいダンサーの卵フランシスはブルックリンの片隅で親友ソフィーとルームシェアして楽しい日々を送って居たのだけどソフィーは憧れの街に住みたいと云って出て行くわダンサーの夢には暗雲が立ち込めるわ貯金はヤバくなるわ。基本ボンヤリとポジティヴでマエムキ、つうかあんまモノを考えてないだけなんだけど、そんな彼女がまぁイロイロ逃避したりしつつ何とか現実との折り合いをちょとだけ付ける、そんなモノガタリ。かな。
サブカル風オシャレ映画。キライじゃないけどでもこのサブカルぽさはどっから?て考えたトキに『モノクロ画面のアート感』とか『セカイをチャカチャカ漂う感じ』とか幾つか理由はあるけどそん中でも『モラトリアム感覚』がデケエのかなぁとぞ思ひける。一般的サブカルに拡張出来るかもねコレ。
理想はあれど気概がなく、何かと間が悪くアンラッキィでも鈍感な故に其処まで凹まない。て云うフランシスの絶妙なキャラ立て。この映画が鬱展開にならないのはひとえにこのキャラによるモノだよね。
よくある青春モノに落ち込まないのが好印象。男友達レヴの部屋に行ってもロマンティックな空気になるコトもなく、ベンジーとの関係だって最後までフワフワしたまま。今が楽しければいいのだけれどそれだって曖昧で。『私は出版のカリスマ、あなたは有名なダンサー』て云う、かつてソフィーに語って貰ったお気にの夢は霧散して。世の中上手く行かないコトだらけだけどまぁ何とかなるよ。的な?
結局アレだ、このフランシスてキャラを好きになれるかどうか、かもね。僕は面白く観ましたけど。ラストで明らかになるこの風変わりなタイトルの意味。明るくマエムキ且つキュートでありながらフランシスて云うキャラとこの映画全体をフンワリと象徴して居て、うん、この終わり方も割かし好きよ。

●『フローズン』
スキーにやって来た学生3人、ダンと幼馴染みのジョー、そしてダンの彼女パーカー。夜になって営業終了だったのだけどまだ物足りなかった彼ら、リフト係員にムリヤリねじ込んで止まる寸前だったリフトに強引に乗せて貰いアト一滑りと洒落込む。だけど係員同士の行き違いがあって彼らを乗せたままリフトは停止、照明も消えて仕舞う。吹雪の中、宙吊り状態で取り残された3人。今日は日曜、次の営業は金曜。このままじゃ死ぬ。凍えながら助かる道を探すが……的な話。
『CUBE』みたいな低予算のワンシチュエイション映画。何せ映画の大部分、リフトに座ってただ喋ってるだけだからね。大自然に取り残されるシチュエイションてコトで『オープン・ウォーター』なんかを思い出すけどフローズンの3人に起きたコトてば世間をナメ切った大学生たちの徹頭徹尾完ッ全に自業自得なんであんま感情移入出来ないのです。オープン・ウォーター2だねコレは。無印じゃなくて。
そんでも男2人が何とか助かろうとジタバタする中、パーカーは全部人任せ、いよいよ自分で動かないとこら死ぬわって云う土壇場になるまで何もせずメソメソ泣いてるだけだし、そのせいで顔が速やかに凍傷になるわ、煙草吸おうとして手袋落とすわ、剥き出しの手で金属バー握って眠りこけて皮膚が剥がれるわ。彼氏のダンに『連れて来られた』コトを差し引いてもイマイチ申し訳ないけど同情出来ない。
ま、それなりに面白かったケド造りの甘さがちょこちょこ目立つ感じはね、するな。一晩凍えてたヤツがジャケットの襟首大きく開けてるか?普通ぴっちり閉めるよね?とかね。ジョーが『追いつかれた』のが得意なスキーじゃなくてスノボだったからってのはあぁ上手く噛み合わせたなと思ったけど。アトそうだ、鮫に食われて死ぬのがイヤだと云ってたダンがオオカミに食われたのは何?ブラックジョーク?

●●●
月間賞は『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』に。
次点で『フランシス・ハ』。
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