映画「ブリッジ・オブ・スパイ」を見て、思い出したこと。
この作品は実話がもとだけれど、
実話に近いような、シリアスなスパイ小説はたくさんある。
故高畠通敏先生は、立教大学の先生で、選挙の計量分析の計量政治学で有名だが、
『政治の論理と市民』、『生活者の政治学』というご本があるように、
市民の政治参加を望まれ、市民のための政治学を説いておられた。
仕事をしていたときは時々、立教大学のお部屋を訪ねて、お話を伺うことも多かった。
いつも穏やかに微笑みながら、いろいろ教えてくださった。
ある時、「アフガニスタンや、イラン、トルコのあたりには、山岳民族がいるんだが」
と話され、
「ああ、クルド人ですね」と言ったら、「どうして知っているの?」とおっしゃる。
いまでこそクルドの人々についてご存知の方も多いと思うけれど、
30年ほど前は、まだ新聞記事も少なく、あまり知られていなかったと思う。
「あの…読んだばかりのケン・フォレットのスパイ小説で…」とお答えすると、
「そうか!」と大笑いされ、「先生もスパイ小説なんて読まれるのですか?」
「もちろん、読むよ」と。そのあと、話が盛り上がってしまった。
そして、「『スパイ小説にみる国際政治』という本を書いてください」
「それは面白そうだね。まずリストアップして」と題も決まってしまった。
「ル・カレは東西対立だね」「フリーマントルも外せませんね」
「サマセット・モームも書いているよ」「トム・クランシーはいかがでしょう?」
「第一次大戦前のホームズにもあるね」「ケン・フォレットも入れてください」
と、2人で名前を挙げては、年代順、地域別など国際政治との関係を
いろいろ挙げて、話し込んでしまった。
高畠先生がリタイアされたら、お書きくださるという話になったのだけれど、
先生は立教をリタイアされてから、駿河台大学に移られ、
2004年に、70歳で亡くなられてしまった。
たぶん、長生きされたとしても実際は、もっと真剣な政治学関連のご本を
書くことに忙しくしておられたと思うし、今の政治状況に関しても、
市民がどうあったらいいかを説いておられたことだろう。でも、もしかしたら、
幻の『スパイ小説にみる国際政治』も生まれていたかもしれない。
スパイ小説を読んだり映画を見たりするたびに、
あの立教大学の、本が積みあがった先生の研究室の夕べを思い出す。
今、ふと検索すると、先生のゼミのOB・OGの方々が、
読書会を続けておられることを知った。先生も本望だろう。
ところで、どなたかお書きになりませんか?映画も入れて、
『スパイ映画・小説にみる国際政治』 売れるんじゃないかしら?
(お書きになったら教えてね、買いますから!)
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