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2016年06月04日08:31

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星のローカス

小山田いく先生 漫画読み返し

「星のローカス」


デビュー連載「すくらっぷ・ブック」で、いきなり人気作家となった小山田いく先生。

週刊少年チャンピオンで、「すくらっぷ〜」と、続く「ぶるうピーター」を連載中に、月刊少年チャンピオンで連載していた作品が「星のローカス」である。


週刊連載の陰に隠れがちだが、3年に渡って連載された事から、こちらも、かなりの人気だった事が伺える。

読み返すと、前半と後半で味わいが変わるのが面白かった。


高校の機械科に通う若者たちの青春ドラマで、「下宿」がキーワードになる。


前半は、父の工場を継ぐまでの三年間だけ、下宿暮らしを許された二木聡が、本当は進みたい美術の道や、自分を慕う幼馴染の女の子、志保里に負い目を感じながら、様々な女の子と出会っては別れる雰囲気モノ。

恋愛も、劇的なドラマというよりは、聡の優柔不断さで曖昧に終わる事が多い。


「すくらっぷ〜」より意図的に対象年齢を上げているが、毎回、星にちなむ神話が披露され、ロマンチックさは増しているのが面白い。


少しづつ美術の道へ進み始める聡、愉快な下宿の同居人・長尾、溜まり場のスナック・フレイヤに集う仲間たちと、道具立ては「すくらっぷ〜」と似ていながら、味付けは、かなり違う


前半は、様々な女の子の間をフラフラしながら、最終的に志保里を選ぶ聡のモラトリアムを雰囲気たっぷりに描く。

だが、後半、卒業後の進路を巡り、聡と父親が対立する辺りから、グッと骨太のドラマにシフトする。

それまで単なるコメディリリーフと思われた長尾の意外な秘密も絡み、物語はスイングしていく。


改めて小山田いく先生の技巧派っぷりに感心するのは、物語の終盤を動かす長尾の秘密だが、伏線が連載初期から張ってあるのだ。

単行本だとツルッと読んでしまうが、連載時は、2年前から伏線を張っていた訳で…。


この人のストーリーテリングの凄さは、もっと語られてもいいと思う。


前半の、聡のウジウジしたモラトリアムっぷりで好き嫌いは別れると思うが、小山田いくという作家の、前半は雰囲気の作り方を、後半はストーリーテラーとしての腕が堪能出来る。

後半の描き慣れて完成された絵もいいが、前半の時々、ハッとする様な陰を持つ、キャラの表情も素晴らしい。


また、小山田いく漫画の主人公にある「精神的に安住の地を持たず、どこかにある理想郷を求めて彷徨い続ける」という属性が、前半は聡、後半は長尾に振り分けられているのも興味深い。

また小山田先生は、「すくらっぷ・ブック」と「ぶるうピーター」で、意図的に作風と絵柄を変える訳だが。

両者と並行して連載していた「星のローカス」に、その両方の要素が入り、前半と後半で作風が変わったこと、また逆に「ローカス」から両者にフィードバックされた要素も検証すると面白い。







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