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2015年09月07日23:18

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アド・テクノス『走れ!パットン』の『コブラ作戦』

 『走れ!パットン』は今は亡きアド・テクノスによる、ジョージ・パットンの関わった4つの戦い(実際には起こらなかったものも含まれていますが)を同一のシステムで再現し、ワンセットにして売っていたゲームです。
 このタイプのゲームはクワドリと呼ばれ、アメリカのSPIなんかがよく出していました。少し前にここで取り上げた『南方軍集団』もその一つです。共通のルールを憶えれば、あとはゲームごとの特殊ルールに目を通すだけで、4つのゲームをプレイできますから、プレイヤーとしてもお得感があるし、ちょっと世知辛い話になりますが、単価を上げられて出版社の方にもそれなりに旨味はあったんじゃないかと思います。

 『パットン』の基本システムはきわめてシンプルで、まずは補給を確認して消耗状態の部隊があれば回復させ、さらに空軍と砲兵で敵に損害を与え、それから部隊が移動して攻撃するという手順をくり返します。
 このゲームにおいて、機械化部隊は攻撃に参加すると消耗状態になって裏返され、戦闘力と移動力が低下します。回復させるには、補給の手順においてポイントを割り振る必要があるのですが、これがすべての消耗部隊を回復させるほど潤沢にはありません。したがって、このやりくりに頭を悩ませることになります。
 ここで重要なのは、敵(主にドイツ軍)の機械化部隊はいわゆる装甲部隊だけだったりするのですが、アメリカ軍の場合はほとんどが機械化部隊扱いとなっていることです。つまり、強力だけどスペック通りの能力を発揮するためには湯水のように補給を必要とするアメリカ軍と、それほど強くはないけれど、一部のエリート以外は現場のやりくり算段でどうにかしのいでいく手腕に長けた敵という、性質のかなり異なる軍隊の対決が描かれることになります。

 今回、ソロプレイした『コブラ作戦』はノルマンディー上陸作戦が一段落し、アメリカ軍がさらに内陸へと進撃した時期を扱っています。進撃とはいっても、実に遅々としたものだったらしくて、はっきりいって展開は戦線がマップの端から端へとコマ撮りアニメのようにちまちまにじり寄っているだけという、ダイナミズムも爽快感もかけらもないような展開が、延々と14ターンにわたって続きます。勝利条件も至ってわかりやすく、アメリカ軍が反対側のマップ端から突破すれば勝利、そうでなければドイツ軍の勝利という、ミもフタもないほどのわかりやすさです。

 セットアップは師団(司令部も含めて4ユニット。たまに3ユニットの場合も)ごとに基準となるヘクスが定められていまして、そこから一定範囲内に展開させて配置します。

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 ゲームはアメリカ軍による絨緞爆撃から始まります。これが凶悪な代物で、ヘクスにいる部隊をまるごと吹き飛ばしたりするので、ドイツ軍が強力な部隊をスタックさせたりすると格好の目標になってしまいます。しかも、二重の戦線にすら穴を開きかねなかったりしますから、できるだけ分散させて縦深を作らなくてはなりません。

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 絨緞爆撃が終わっても、しばらく爆撃は猛威を振るいます。そちらが鎮静化しても、アメリカは師団直属の砲兵が盛んに撃ってきます。こちらは威力はさほどではないにせよ、当たって混乱させられるとZOCを失ってしまうため、左右に部隊が入りこんできて包囲されてしまいます。
 そんなの部隊を隙間なく並べてしまえば大丈夫じゃんと思いたくなりますが、そもそもそんなにたくさんの部隊はいませんんし、通常の攻撃によって左右の部隊が後退させられてしまうと、戦闘後前進で結局は同じことになってしまいます。砲撃が当たる確率(1/6)と考えあわせると、基本的にはセオリー通りに1ヘクスおきの戦線を作っておく方がよろしいでしょう。

 戦線は、弱い部隊から配置していき、兵力に余裕があれば強い部隊を後方に置く方がいいと思います。弱い部隊が後方にいると、砲撃で前線の部隊を混乱させて浸透してきた敵が、ついでにそいつを攻撃して、さらに前進してくるからです。以前にそれをやられて苦労しました。
 そう配置すると、機動防御っぽくもなります。ただし、隷下の部隊を失った司令部が優先的に前線へ追いやられてしまうという、萎える展開もありえますが、それもやむなしというか、うん、どうなんでしょう。

 ゲームは全14ターン。アメリカ軍の突出部からマップの端までは21ヘクス。ちょうど1.5ヘクスずつ前進すれば、アメリカ軍は勝つことになります。逆にいうと、ドイツ軍としては毎ターン1ヘクスの後退は許容範囲内なので、フェイズ開始時に部隊が隣接していないと撃てない砲撃を避けるためにも、1ヘクスずつ戦線を下げていきたいところですが、あいにくと砲撃や爆撃や戦闘で混乱の結果を被ってしまうと次の自分の手番で移動も戦闘もできなくなりますから、そう整然と下がれるわけではありません。
 兵力に余裕はありませんから、できるだけ回復してから一緒に下がりたいところですが、その部隊のためだけに他のすべての部隊を危険にさらすわけにもいきません。ドイツ軍プレイヤーとしては、そこが最大の悩みどころといえるのではないでしょうか。

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 このゲームのルールの特徴の一つは、戦闘後前進が強制されることでして、ダメモトの潰滅狙いでとりあえず攻めたところ、あっさり後退されてこちらは前進しなければならなくなり、結果として敵中に孤立する羽目になって反撃で後退できず除去という展開もままあります。
 今回もマップ最上部で追撃したアメリカ軍の師団司令部と隷下の部隊がドイツ軍による包囲攻撃で除去の憂き目を見ています。司令部を失った部隊は消耗状態から回復できなくなってしまうのですが、いずれにせよすべての部隊を回復させるほどの補給ポイントはありませんから、アメリカ軍としてはそこを踏まえた上で必要とあれば前進させる必要があります。
 ちなみに、ここで司令部を失った部隊は消耗状態のまま進撃してけっこう活躍しました。
 一方、ドイツ軍にしてもまだアメリカ軍の爆撃が強力なこの段階で反撃に出て部隊を潰滅させ、結果としてスタックする羽目になったのはけっこうリスキーではあったのですが、このプレイにおいてはその危険が顕在化することはありませんでした。

 ドイツ軍の部隊の割り振りについて、以前の対戦をもとに考えたのは、マップ上部の突出部のアメリカ軍の足をいかに止めるかでした。こちらには強い部隊が少なく、もとから突破に近いこの方面の進撃を止められなくて苦労した記憶がおぼろげながら残っています。
 そこで今回は開始時におけるドイツ軍最強の部隊の部隊、第2SS装甲師団をそちらへ転出させました。

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 上の画像はひどくボケボケの第6ターン終了時の状況ですが、下の方のアメリカ軍の2個スタックに混乱マーカー(アルファゲットのD)が乗っているのは、低比率攻撃を敢行したところ、攻撃側混乱という結果を被ったからです。こうなると、次のターンの自軍の手順でもこいつらがどかない(混乱なので移動不可)ために新たな攻撃もできず、まったく踏んだり蹴ったりです。というわけで、無闇な低比率攻撃は慎むべきですが、そればかり言っていられないのも事実で、必要なリスクは負わないと、ドイツ軍を追い詰めることはできません。

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 上はゲーム終了時の画像です。意外と進撃できないままアメリカ軍は負けてしまっています。以前の対戦の記憶だと、ドイツ軍はマップ端へのヘクス数と部隊数が足並みを揃えてすり減っていき、最後ぎりぎりのところでアメリカ軍の突破を許してしまいました。
 基本的にバランスは悪くないはずなので、アメリカ軍の攻め方をもっと研究する必要がありそうです。

 デザイナーズ・ノートには「展開が素直なので、最初にプレイするにはお勧め」とか書いてあるのですが、過去に数回にドイツ軍を担当した記憶では、アメリカ軍にしたところで自軍の砲撃の結果に応じて右往左往するようなところがあり、要するにアメリカ軍の砲撃の結果に両軍の部隊がよってたかって対応するソロゲームではないかと思いこんでいました。

 ところが、ソロプレイでアメリカ軍も合わせてやってみると、限りある補給ポイントをどこに投入するか、どこに主攻軸を置くかはなかなか悩みがいがあり、砲撃の結果次第でその目論見が反古にされたりはしますけど、それなりにシビアな決断を迫られるところもあって、これはこれで楽しめそうでした。

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