初期ジェネシスに強い影響を受けているバンドは、歌い方、声質、パフォーマンスまで、ピーター・ガブリエルに似せたいという欲望を感じさせる。初期ジェネシスが多用したメロトロンを用いて、サウンドの風景を描いているバンドも多い。
一番みごとな擬態だと思うのは、イタリアのワッチだが、このバンドは、２０１１年１月にやったジェネシス・タイプ（ピーガブ似編）の第３位にしていたのだった。
・ 曲 バンド アルバム
� �Hidden space / Ageness [ Rituals 1995 Finland ]
フィンランドのエイジネスは、トミー・エリクソンがヴォーカル、ギター、ピアノを担当する４人組。バンド名から既に擬態していて、初めて見たとき、「あ、ジェネシスだ」と思った。世界的にも、こう読み間違う人が多いのではないだろうか。生ギターに続くヴォーカルは、「侵入」の頃のジェネシスにそっくり。メロトロンが低く垂れこめ、演劇的ながらメロディアスなヴォーカルに味わいがある。
�� Life / Leitmotiv [ Entangled 2007 Canada ]
カナダのレイトモティーフは、チャールズ・ジェンドロン・キャリアーが、ヴォーカルを担当する５人組。いきなりのピーター・ガブリエル擬態のヴォーカルに、ゆったりとしたピアノ。声がかすれ気味で、声質まで似せている。しかし、シャウトで音程が上昇するところで、ちょっと声を張り上げすぎ。軽めのリズム隊も、ジェネシスの雰囲気を踏襲している。
�� Isle of man / Netherworld [ Netherworld 1981 USA ]
アメリカのネザーワールドは、デニー・ゴールデンがヴォーカルを取る５人組。ベーシストがチェロも弾くので、曲の途中に典雅で刺激的なチェロのソロが入る。ヴォーカルはまさしくピーター・ガブリエルのデジャ・ヴュだ。めまぐるしく拍子変化する中で、メロトロンも霞のように垂れ込めている。２１世紀バンドというには、ちょっと古すぎるけど、このバンドはポンプというより、ピーガブ擬態そのものなのだ。
�� Icarus / Rael [ Mascaras urbanas 1992 Alzentina ]
アルゼンチンのラエルは、イグナチオ・ロドリゲスをヴォーカルとする５人組。霧のように立ち込めるメロトロンと、ピーガブ擬態の声のヴォーカルの饗宴。ジェネシス擬態の曲には比較的長いものが多くて、さまざまに途中で変転して行く。南米のバンドながら、英語で歌っていて、声質を含めて、あえて個性を殺してまでそっくりにしている。
�� The doorman / Underground Railroad [ Through and through 2000 USA ]
アメリカのアンダーグラウンド・レイルロードは、ギタリストとキーボーディストが２人ともヴォーカルを歌う。キーボードのカート・ロンジェイは、イギリスの王立音楽学院を出ていて、作詞作曲の中心。声の質は、ここまでの４人ほどは似てないけど、楽曲の複雑さ、レベルの高さがすごい。メロトロンの洪水で気持ちいいと思うと、怪奇なムードに変転。更には現代音楽風の無調的な部分まである。ストーリー性のある怪奇骨董音楽箱だ。ブラス音とともにへヴィーになるが、キング・クリムゾン風の方向へは行かずに、あくまでピーガブ風で押して行く。
�� Beggars of Paris / Trespass [ The final act 1989 Germany ]
ドイツのトレスパスは、シュテファン・ウェーバーがヴォーカルのほか、キーボード、ギターも担当する６人編成。ダブル・キーボード。ヴォーカルはもう一人アンドレアス・シュラ―も担当している。バンド名がジェネシスのセカンド・アルバム名なのに加えて、怪奇な衣装が演劇的であり、形態模写もしている。メロトロンで曲に入り、ヴォーカルもピーガブ擬態。ちょっとポンプ風のところが感じられるのは、マリリオンの影響らしい。自主制作なのか、録音の音質が悪いのが難点。
�� Coming down / Citizen Cain [ Skies darken 2012 UK ]
イギリスのシティズン・ケインは、３人組で、中年オヤジ風と２人の若者が写真に写っている。イギリスのバンドは、そっくりにしようとしないで、独自性を出そうとするものだから、ポンプ風になってしまうものが多いけど、このバンドは忠実に擬態している。メロトロンに続く重くて粘着的なリズム隊が、少しクリムゾン風でもあるが、歌い方がピーガブ。ピアノに乗せ、暗く垂れこめた雲を思わせる。
�� Night-storm / Ezra Winston [ Ancient afternoon 1990 Italy ]
イタリアのエズラ・ウィンストンは、マウロ・デ・ドナトがヴォーカル、キーボード、ギターを担当する４人組。フルート、ピッコロ、サックスの専任奏者がいて、コロコロとな鳴るピッコロの音が印象的だ。英語で歌うシンフォニック・ロックの鑑であって、イタリア復興の先駆けを担った。枯淡なヴォーカルは、この時期のイタリア・プログレにとっていかにジェネシスが重要であったかを物語っている。
�� Cruel symmetry / Argos [ Cruel symmetry 2012 Germany ]
ドイツの現代バンド、アルゴスは、トーマス・クラ―マンがヴォーカルのほか、ベース、フルート、キーボードも担当し、作曲も行う。ピーガブ擬態バンドの場合、ヴォーカリストが主導権を取っていることが多いようだ。奇怪な衣装と奇怪なパフォーマンスで、ナレーションのようなヴォーカル、そしてメロトロンと、初期ジェネシスの様式を忠実に辿っている。この曲は、２０分強あって、１３曲の小曲から構成されている。
�� Starfooted in a garden of cans / Metaphor [ Starfooted 1999 USA ]
アメリカのメタファーは、ジョン・マブリーがヴォーカルを担当する５人組。メロトロンではないが、よく似た音で靄が立ち込めたかのような光景を描き出す。ヴォーカルは、演劇的ながら、歌う部分のメロディーが豊かで、私は好きなバンドなのだが、メロディーが優美だとピーガブに似ないというジレンマがある。
[次点] Voice on the wind / Winter Tree [ Gurdians 2012 USA ]
アメリカのウィンター・ツリーは、アンドリュー・レイトルズとマーク・ボンドの２人がヴォーカルを取る４人組。レイトルズの方がベース、キーボードのほか、作曲もするので、主導権を持っているのではないかと思われる。低く始まるが、メロディアスな展開だ。メロトロン風のキーボードが、乳白色の霧のように幻想的な雰囲気だ。このバンドも、好きなのだが、メロディーが良すぎてピーガブ擬態としては今一つという感じ。今回、私が好きなバンドは、どちらかというと下位になっているのであった。
○ジェネシス擬態の演劇的な曲１０選（ピーガブ似編） ２０１１年１１月１９日
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1796993814&owner_id=9666295
○そのほか、候補にしたバンド
Agents Of Mercy(Sweden), Arabesque(USA), Asgard(Italy), Daghmer(Canada), Fancyfluid(Italy), Galaad(Swiss), Haddad(Brazil), Little Atlas(USA), Mangala Valis(Italy), MIndgames(Belgium), Moongarden(Italy), Nightrider(UK), Opus Est(Norway), PB2(Holland), Pinacle(Australia), Puppet Show(USA), Sky Architekt(Holland), Sonic Circus(USA), SpinXXI(Brazil), Strangefish(UK),Twin Age(Norway), Unifaun(Canada), Violent Silence(Italy), Zenit(France)
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