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2024年05月12日08:18

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日曜日のメインコンテンツは日本中世史 → 鎌倉時代と北条氏 50 「曾我兄弟の仇討ち 4」 江戸庶民がどう受け止めたか 上

 まずは曾我兄弟と仇討ち事件とはどんなものであったか、総復習 ↓
https://love-japanese-history.com/sogakyoudainoadauti/
   【曾我兄弟の仇討ち】源頼朝暗殺未遂事件にまで発展した日本三大仇討ちの1つ

 よく頭に入っている方には不要かと思われるでしょうが、曾我兄弟と工藤家・伊東家の血縁関係が図表で示されていますので、頭を整理するのにはたいへん役立つかと思われます。

 ややこしいのが曾我兄弟の名前。
 兄の一萬丸が曾我祐成(すけなり)こと曾我五郎。
 弟の箱王丸が曾我時致(ときまさ)こと曾我十郎。時政の名前は烏帽子親であった北条時政から。
 このあたりが、仇討ち事件と並行して行われた源頼朝暗殺未遂の黒幕が北条時政であったとする説の根拠です。


 このかたき討ち事件は、兄弟の不遇さと悲劇的な最期が『曾我物語』としてまとめられました。
 作者は不詳ですが、箱根権現や伊豆山権現の僧であるという説があるそうです。

 やがて室町時代に入ると、能や浄瑠璃などで取上げられ数多くの作品が生まれ、江戸時代には歌舞伎の世界にも取上げられました。

 かの『忠臣蔵』が、延享4年(1747年)に初世沢村宗十郎が京都中村粂太郎座で『大矢数四十七本』として上演された際には、曾我兄弟の仇討ちとしてされていた、というのは現代人にとっては大きな驚きかもしれません。当時の幕府は、現実の事件をそのままお芝居にすることを厳しく禁じていましたから、赤穂浪士の討ち入りも、鎌倉時代に移し替えたことで「お上」の目からのお目こぼしを図ったのでありましょう。

 江戸歌舞伎では、兄の十郎を武芸の達人というスーパーヒーローとしていろいろな物語の主人公と設定し、弟の五郎はちょっと華奢(きゃしゃ)だけれど、冷静沈着な兄の補佐役といたしました。
 その代表的なのが『矢の根』という演目です。

 父の仇を討つために正月でも矢の根を研いでいる曽我五郎が主人公の祝祭劇。
 荒事の様式美と洒落っ気で魅せる演目です。

 矢の根 | 歌舞伎演目案内 - Kabuki Play Guideより ↓

ここは相模国(さがみのくに)古井(ふるい)。曽我五郎時致の故郷である。舞台正面の家の障子が上がると、五郎は炬燵の櫓(やぐら)に腰をかけ、親の仇を討つために、大きな矢の根(やじり)を砥石で研いでいる。「どんなに敵の工藤祐経が威勢を振るっていても負けないつもりだが、貧乏だ」とこぼしつつ、自分のもとへ福をもたらしてくれない七福神の悪口を言っている。

と、大薩摩主膳太夫(おおざつましゅぜんたゆう)が新年のあいさつにやってくる。大人気の五郎が主演した芝居のおかげで、傍で演奏する大薩摩の太夫も繁盛というわけで、お年玉として縁起の良い宝船の絵を置いて帰る。

主膳太夫が帰ったあと、五郎は宝船の絵を敷き、砥石を枕に、「仇を討つ良い夢を見よう」ととろとろと居眠りをする。しばらくすると夢に兄の十郎の生霊(いきりょう)が現れ、「祐経に捕らえられた、起きて助けに来てくれ」と呼びかける。

「大変だ」と五郎は飛び起き、たまたま大根を売りに来た馬子の馬をむりやり奪って乗り、大根を鞭にして馬を急がせ、兄のもとへと向かってゆく。


参考文献

 『現代語訳吾妻鏡』 五味文彦・本郷和人 (編) 吉川弘文館
 『愚管抄 全現代語訳』 慈円(著) 大隅和雄(訳) 講談社学術文庫
 『曽我物語 (現代語で読む歴史文学) 』 
            西沢正史 (監修) 葉山修平 (翻訳) 勉誠社

 『中世武士団』「曾我物語の世界」 石井進(著) 講談社
 『人物伝小辞典 古代・中世編』「曽我十郎/・五郎」今野慶信(著)
      小野一之・鈴木彰・谷口榮・樋口州男(編) 東京堂出版
 『曾我物語の史実と虚構』 坂井孝一(著) 吉川弘文館歴史文化ライブラリー

 『日本中世の朝廷・幕府体制』 河内祥輔(著) 吉川弘文館
 『世にも不気味な日本史 闇にうごめいた謎の人物篇』
             歴史の謎を探る会(編) 河出書房新社

 『歌舞伎手帖』 渡辺保(著) 角川ソフィア文庫
 『最新版 歌舞伎の解剖図鑑』 辻和子(著) エクスナレッジ
 『歌舞伎の101演目 解剖図鑑』 辻和子(著) エクスナレッジ  


 次回は、江戸歌舞伎のもっとも代表的な演目とされる『助六由縁江戸桜すけろくゆかりのえどざくら』
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