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2023年07月04日00:28

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『どうする家康』の築山殿

 今年は大河ドラマを見ていないのだけど、『どうする家康』で最も目を引いたキャスティングは有村架純の築山殿だった(劇中では家康の正妻としての築山殿という呼称ではなく、瀬名という名前の方を用いているらしい)。大河ドラマはむやみに配役が豪華で、けっこうなポジションの俳優がチョイ役で出演していたりするから、キャスティングで作中の重要度を測りかねたりするのだけど、彼女ならさすがに正ヒロインで間違いないはずである。
 折り返し点までの出演とはいえ、彼女ならその間に主演の映画を2本撮影していた可能性すらある。そのスケジュールとトレードオフなのだから、当然にそれなりの立ち位置でないと、本人はともかく事務所としては機会損失が大きすぎる。

 とはいえ、通説では徳川家康の生涯において、彼女の占める位置はそれほど大きくない。まだ織田信長の格下の同盟相手だった時分に敵陣営への内通を疑われ嫡男とともに討たれているので、神君家康の足を引っ張った裏切り者というレッテルを貼られがちである。それから後に成立した史料による記述も、「嫉妬深く、悪賢い」みたいな感じで散々だったりする。

 『どうする家康』の築山殿は、そうした従来のイメージを覆す大胆な解釈といえる。ちょうど真ん中に最大のイベントを置くのは、作劇の定跡ともいえるので、頼りなかった主人公が天下取りを見据え邁進していくための契機ともなる出来事にもなるはずである。
 『鎌倉殿の13人』のようにマイナーな時代を扱うなら、素材の良さを引き出せば十分で、むしろ、変に手を加えない方が望ましいぐらいだけど、家康あたりのこすりまくった題材をまた取り上げるなら、これぐらいひねらないと近年の作品ともかぶってしまうので苦肉の策といえなくもない。
 このあたりは、信長・秀吉・家康か幕末でないと数字をとれないけど、そこらへんはもうすでにやりつくしてもいるという、大河制作の辛さが端的に表れてもいる。

 実際、ネットを拾い読みする限り、いわゆる大河ファンの評価は厳しめといえる。とはいえ、松本潤を起用している時点で、新たなファン層の開拓に重点を置いた企画であって、従来のファンの反発はある程度まで織り込み済みのはずで、そっちは来年の企画で手当てしようというのがNHKの肚づもりではないだろうか。

 幼少時の今川家にいた家康は、人質と称されることが多いけれど、今川義元の参謀格だった太原雪斎の薫陶を受け、桶狭間の戦いの直前には一手を率いて織田方に包囲された城へ兵糧の運搬を成功させている。対立する織田方との最前線に位置する地方領主の跡継ぎとして、今川家中では粗略には扱われていなかったはずである。築山殿も重臣の娘だったらしく、縁戚関係を結ぶことで松平家を今川の勢力に組みこもうとする配慮がうかがわれる。もっとも、家康当人にとっては、主家筋の頭の上がらない嫁だった可能性もあるし、小説やドラマなどでは後の展開ともからめてそう描かれがちではある。しかも、天下人になってからも、家康は外戚が家中での発言力を持つのを警戒してか、身分の低い若い女性にもっぱら身の回りの世話をさせるばかりで、この当時は一般的だった縁戚関係を外交や安全保障に利用するという発想はうすい。女性とそこにつながる関係について、細やかな気遣いをするのは億劫だったらしい。それもまた、『どうする家康』の解釈が大河ファンには不評な原因だと思われる。

『どうする家康』瀬名&信康が”壮絶最期” 家康の願い届かず…「鬱回」「しんどすぎて涙が止まらん」
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=7473241
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