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2021年09月03日17:57
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憲さん随筆アーカイブス 『令和』の“令”は『逮捕令状』の“令”
※画像は新元号「令和」を公表する菅官房長官
※この随筆は2019年4月6日に執筆したものに加筆訂正しました。
先日更新した、私の運転免許証の有効期限にはこうある。
「平成36年4月16日」
と･･･。
これはどういうことだろうか？
永遠にその年は来ることがないので、永久に使えるということだろうか？
警視庁にその見解を伺いたい。
私が免許を更新しにいったのが2019年(平成31年)3月3日であるから、4月1日に新しい元号が決まるのも5月1日に新天皇が即位するのも決まっており、そうであるにも関わらず、シレーッと「平成36年」とか表記する精神が私には気が知れない。
元号とはそれほど不合理であることはこの「平成」の世も終わりに近づきつつある現在においてはほとんどの人たちが感じていることであろう。
新しい元号が決まったようだ。
『令和』だそうだ。
参考
↓
「新元号は『令和』 官房長官が公表」
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ださ〜っ！
朝の情報番組の20代前半であろう女性アナウンサーが言っていた。
「この元号が発表されたとき、感動して涙が出てきた。」と。
けっ！
本当かよ？
そんなにいいのか？
「令和」って？
ということで、新元号発表で色めきたつ巷の興奮に冷や水を浴びせかけるべく、新元号「令和」を東京新聞4月2日のこちら特報部の記事をベースに批判していく。
まず、この「令和」出典が国書である万葉集からきていると安倍も鳴り物入りで喧伝しているが、そもそも、元号などただの漢字(漢字とは文字通り、漢の国の文字である。)２文字の組合せにすぎず、その出典だってとってつけたようなものであろう。
今回の出典とされる万葉集第五巻の観梅の宴で詠まれた32首の大伴旅人が書いた序文から抜き出されているとの説明である。
しかし、これに対して中国紙の環球時報（電子版）がすぐに噛みついた。
「中国の痕跡は消せない」と。
参考
↓
中韓反応 万葉集出典に 中国紙「中国の痕跡消せぬ」 韓国紙「安倍政権の保守色を反映」
https:/
そりゃそうだろう。
日本の古典文化はほとんどが中国四千年の影響をうけているのである。
引用元の「万葉集」も中国詩歌の影響を多大に受けているのである。
新元号「令和」のもともとの出典は後漢の文学者、張衡の韻文「帰田賦」の「仲春令月、時和気清」の一節であるそうだ。
参考
↓
【帰田賦】
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「古来、中国や朝鮮との影響を受けてきた日本で『混じり気のない純日本文化』などあり得ないし、古今東西、知識人はあえて原典を示唆するような本歌取りをしてきた。」(政治学者、白井聡)のだ。
早稲田大学の漢字学者笹原教授もこう言っている。
「万葉集の序文は張衡の帰田賦や王羲之の『蘭亭序』など、万葉集以前の中国古典を踏まえているようだ」と。
参考
↓
【王羲之】
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【蘭亭序】
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しかし、これに対して国文学研究資料館長のロバートキャンベル氏はこんなことを言っている。「北東アジアは同じ漢字文化圏なので、国書か漢籍かという排他的な選別があってはならないと思っていた。今回は(後漢の時代の文学者張衡の)『帰田賦』へのオマージュ(敬意)があり、漢籍を包摂したといえる」だと！
オマージュ？
ちがうでしょっ！
安倍は現在の冷え込んだ日中関係を見据えた上で、右派の受けを狙って、ナショナリズム剥き出しで「排他的」、排外的に敢えて万葉集という「国書」から元号を選んだと言いまくってるのでしょ。
そこには、漢籍や中国文化に対するオマージュなど微塵もないじゃないの。
そもそも、あったらそう言うでしょ？
しかし「意図的に無視したのか、無知による思い込みなのか。政府説明を無批判に垂れ流す報道陣も悲惨だ」(前出、白井聡)というのが本質でしょうに。
簡単に言えば、後漢の時代に中国の文学者が詠んだ詩を万葉集で大伴旅人がパクって、それを現代になって国家権力が「日本オリジナルの元号だ！」って剽窃(ひょうせつ)したのが真相でしょう。
ちなみに、こういう意見もあります。
1300年以上続く元号の歴史の中で、国書から選ばれた例は確認されていない。国書は漢文で書かれても「元をたどれば中国古典を引用した『孫引き』が多い」(国文学者)との評価が一般的だったからだ。そうです。
だから、国書の万葉集から選んだのはいいけど、その元をたどれば漢籍です。と説明するべきでしたね。
では、次に「令和」そのものを批判する。
問題はこの「令」の字だ。
出展の万葉集の「令月」とは「よい月。めでたい月。 陰暦2月の異称。 」ではあるが、現在使われている「令」にはどういう意味があるのだろうか？
それは、「上位者のいいつけ」「おきて」である。
「令」の字の由来は、神官などがひざまずいて王や神の意思を聞く様子の象形文字(大漢語林)とされ、現在でも「命令」「法令」など、まさしく「上位者のいいつけ」として利用されるのが常である。安倍のように「令夫人や令嬢、令息などの『良い』『素晴らしい』『優れている』という意味」で使うのは死語化もしくは形式的な使い方に限られるだろう。
参考
↓
【令】
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私から言わせれば「令」の字は「逮捕令状」の「令」にしか見えず、極めて忌々しい漢字なのである。
事実、「衆参両院の正副議長への意見聴取に参加した一人は『命令の“令”だから、ありえない』と不快感を示した」そうであるが、私の感覚もそれに近いものがある。
よって、「令和」なる元号も安倍の腹の底にあるのは、国家権力が民衆に対して「和せよ！」と命じているのであって、「上から目線の印象。独善的な安倍首相と重なる」(政治評論家・森田実)のは否めない事実であろう。
そもそも、元号そのものが前時代的な封建的制度であることを日本人全員が認識すべきであろう。
『天地明察』の映画をみてもわかる通り、暦や時間は時の権力者が支配するものであり、その支配権の争奪戦は熾烈を極めた。そして、現在の一世一元制などは国家権力が強制する天皇制を利用しての民衆に対する時間的支配の最たるものである。
東京新聞２日の社説の中にもこうある。
「そもそも元号は古代中国で用いられ、皇帝の支配の象徴であった『時』を支配し、元号を行き渡らせることが、その正統性をも象徴する仕掛けだった。」と。
簡単に言えばその国の王様の生死の時間を単位として、我々民衆までもがその時間の単位を強制されるというのだから、これほど非民主的かつ封建的なことはない。
故に元号の本家中国もとっくに元号は廃止されている。
参考
↓
「世界で日本だけが｢元号｣に固執し続ける理由
このガラパゴスな慣習はいつまで続くのか？」
https:/
※注、ちなみに中華民国（台湾）では「民国紀元」が現在に至るまで用いられている。暦学的な厳密さを必要としない局面では、略して『民国』と表し、『宣統』(清朝の最後の皇帝である愛新覚羅溥儀＝宣統帝)の次の元号として扱われることもある。西暦2019年は、中華民国108年（民国108年）である。
しかし、これは厳密な意味では元号ではないと解釈されている。
以上、注終わり
参考
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【民国紀元】
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元号などは、「『君主』の時間に民衆を従わせる非民主的制度」であり、「混乱をもたらす無用の長物」(元号制定に反対する署名運動)以外のなにものでもないのである。
それに、不便なことこの上ない。
じゃ、私の生まれた昭和42年から今年の「令和元年」まで何年よ？ってすぐ計算できないでしょ？
答えは私の満年齢52年である。
また、斎藤美奈子さんは３日の「本音のコラム」でこんなことを書いている。
「平成は、昭和以上に元号が形骸化した時代だった。東日本大震災が平成何年だったか覚えています？答えは平成23年だけど、単に何年かと問えば、多くの人は2011年と答えるはず。」と。
もっともである。
いまや日本人も特異な保守派や右翼以外の普通の人々は西暦で自己の年表を形成しているのが現実である。
で、最後に声を大にしていいたいのは、この「令和」なる元号が発表された当日の4月1日にされた、安倍晋三首相の会見談話である。
参考
↓
新元号で安倍首相会見
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東京新聞「こちら特報部」もこれに対して「違和感あり首相会見」「『まるで所信表明』」「オレが決めたアピール」「『国家・国民・国土の私物化』」と手厳しく批判している。
そりゃ、そうだろ。
あの会見はないよな〜。
まるで所信表明演説じゃないのよ。
ホント露骨ですよ。
記事には前出した識者をはじめ各界の識者が声を揃えて安倍会見を批判していて興味深い。
まず、以前の「平成改元」時の竹下首相の談話と比べると、竹下首相はまずもって本人がでしゃばることなく、官房長官の小渕さんが首相の500字ほどの談話を読み上げただけであった。
これに対して安倍の談話は４分20秒にも及んだ挙げ句、その本領が発揮されたのが、記者の質問に答えたときだ。
安倍曰く
「平成ほど改革が叫ばれた時代はなかった。政治改革、行政改革、規制改革。抵抗勢力という言葉もあった。平成の時代、改革はしばしば大きな議論を巻き起こした」
なんだよ？
元号に対する談話じゃねーのかよ？
さらに続けて安倍曰く「一億総活躍社会を作り上げることができれば日本の未来も明るい」と自らの政策に引き付けて「新たな時代」を語る始末。
なんだよ、お前はモーニング娘。かよ？
参考
↓
【loveマシーン】
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これに対しては安倍贔屓の保守層からも苦言が出されている。
「だんだん話が手前みそになっていった。『抵抗勢力』は新元号とは何の関係もない。お祝い事の場で言う必要のない言葉が並んだ。」とは安倍ブレーンの政治評論家のコメント。
「元号擁護論者」を自認する思想家の内田樹氏も、「自身の政治思想を宣布する機会を、改元という全国民的な行事に絡めたことは、公人として節度を欠いた。」と安倍を一喝。
首相の思いが前面にでた会見に違和感を覚えた人の一人、宗教評論家の有馬晴海氏はこう語る。
「(戦後、天皇が象徴となり元号決定は法律で内閣に委ねられた。)だからこそ、代替わりの時にたまたま首相という立場にあたる人は、『選定作業にあたらせていただいた』というくらいの抑制が必要。自らの政策を持ち出すのは出過ぎた印象だ」と安倍のはしゃぎすぎについて苦言を呈した。
前出の政治評論家の森田実氏も「前に出てきて、俺が決めたんだぞ、ということをアピールすべきではなかった。憲政史上の汚点ですよ」と安倍の「オレだ！オレだ！オレだ！」会見を厳しく批判する。
このように、保守派からも今回の安倍のはしゃぎようには厳しい批判が相次いでいる。
それでは、前出の我らが白井聡先生はどう安倍をバッサリと斬り捨ててくれるのだろうか。
まずは、かれの最新の著作『国体論』の流れから「国民統合の象徴たるために熟慮を重ねて語られた天皇の言葉の重みと比べるのが失礼なほど、今回の安倍首相の言葉は軽い」と語る。
白井先生は天皇が退位の意向を表明した「お言葉」にそうとう衝撃を受けたようです。
これは、まーいいや。
で、こう続ける「(元号の説明において)『そういう時代を国民の皆さまとともに築き上げていきたい』などと、権力者が言うべきでない。こういう時代にせよと言う権利は誰にもないからだ。政治家の立場で、元号に自分の意図を乗せるなど、以前の改元のときはなかった。おこがましいという思いがあったのではないか。しかし安倍首相はそれをやった。彼が、国家・国民・国土を(憲さんから言わせれば天皇制まで)私物化していることを可視化した会見ではなかったか」と指摘した。
だよな〜。
安倍はしゃぎすぎ。はっきりいってうざい。
元号などそろそろ博物館にでもお蔵入りさせるぐらいの封建遺制だよな〜。
それを、なによ、いまさら。
それにマスコミに踊らせれてフィーバーしてる国民もなんだよね〜。
じゃ、どうするか。
西暦も、キリストの誕生を起点にしていて、なんだからどうしても元号を使いたいならこうしましょう！
提案��
私元号を使う。
自分の生まれた年を元年として、私なら「憲さん何年」というように。
ちなみに、今年は「憲さん53年」
これは、数え年と同じになるので要注意。
提案��
1884年秩父困民党が掲げた革命元号『自由自治元年』に敬意を表して『自由自治』の元号を使う。
残念ながら、秩父蜂起は敗北に終わり、「自由自治」はいまだ確立していないが、いつの日か自由自治の確立が来る日まで、この元号を使う。
ちなみに、今年は『自由自治136年』にあたります。
参考
↓
「憲さん随筆アーカイブス 『自由自治元年』の改元はいつだ？」
https:/
と言うことで、みなさんも「令和」なる忌々しい元号など使わずに、勝手に私元号を使っちゃいましょう！
最後に今日の東京新聞時事川柳から秀逸なのを二句。
かの人が「令」の字を掲げる不気味さよ
好き嫌い言わずに馴染め新元号
座布団二枚。
お後がよろしいようで。
m(_ _)m
どーよっ？
新元号！
どーなのよっ？
自由自治136年(憲さん53年)
4月6日
憲さん記す
※2019年4月2日東京新聞特報記事
こちら特報部 違和感あり首相会見（上）
政策ＰＲなぜ？「まるで所信表明」 平成改元時 当時の首相は淡々と 「令和」発表
2019.04.02
新元号の「令和」が発表された１日、安倍晋三首相が会見した。中身はというと、「働き方改革」「一億総活躍」といった国会答弁で聞くような言葉が次々と飛び出した。元号とは、天皇が即位している期間に付ける称号だ。なぜ、その説明で安倍首相の思いを聞かねばならないのか。３０年前の「平成」改元の時にはなかった首相会見。その違和感を識者に語ってもらった。（皆川剛、大村歩）
冒頭発言にあてられた四分二十秒はおごそかに進んだ。出典の「万葉集」を紹介する際、安倍首相は手を前に組み、姿勢を左右にこまめに替えて言葉をかみしめるように話した。
質問を受けるとスイッチが入った。
「平成ほど改革が叫ばれた時代はなかった。政治改革、行政改革、規制改革。抵抗勢力という言葉もあった。平成の時代、改革はしばしば大きな議論を巻き起こした」。まるで所信表明だ。さらに「働き方改革」に触れ、「一億総活躍社会をつくり上げることができれば日本の未来は明るい」と自らの政策に引きつけて「新たな時代」を語った。
「だんだん話が手前みそになっていった。『抵抗勢力』は新元号と何の関係もない。お祝い事の場で言う必要のない言葉が並んだ」。安倍首相と四十年来の付き合いがあるという政治評論家の有馬晴海氏は、会見での発言を残念がる。
首相の思いが前面に出た会見に、違和感を口にする人は多い。宗教評論家の大角（おおかど）修氏は「元号は純粋に儀礼的なもので、本来は選定や発表に関わる人は己を無にして臨まねばならない。そこに私的な思いを持ち込むから不純な印象を受ける」と話す。
六四五年に「大化」を採用して以来、日本では平成まで二百四十七の元号を使ってきた。キリストの生誕を基点とする西暦（グレゴリオ暦）と異なり、「元号には改元のたびに時間を新しくする機能がある」と大角氏は指摘する。
たとえば地震などの大災害や疫病の流行があれば、災厄を払うために改元する。亀や黄金が献上されれば吉兆を祝い改元する。「庶民がついて行けないほどしょっちゅう変わった時期もあった」（大角氏）
説得力を保つのは容易ではない。大角氏は「自分と同じ人間が勝手に決めたということでは、人間は納得しない」と語る。
例えば数案から新天皇が決めたとされる「明治」。内侍所（ないしどころ）（賢所（かしこどころ））におもむき、天照大神の前でくじを引いたと明治天皇紀にある。天皇が大権を持っていた時代ですら「人間世界の外」の演出に苦労していたのだ。
戦後、天皇が象徴となり元号決定は法律で内閣に委ねられた。大角氏は「だからこそ、代替わりの時にたまたま首相という立場にある人は、『選定作業にあたらせていただいた』というくらいの抑制が必要。自らの政策を持ち出すのは出過ぎた印象だ」と話す。
「平成」改元時は、官房長官だった小渕恵三氏が当時の竹下登首相の五百字ほどの談話を読み上げただけだった。有馬氏は「国民一人一人が未来に思いを致せる簡潔な談話だった。そういえば、竹下氏は結婚式のスピーチも短くて好評だった」と語る。
こちら特報部 違和感あり首相会見（下）
オレが決めたアピール？ 「権力者の都合で時代に区切り」 「国家・国民・国土の私物化」 「こういう時代に」言う権利なし
2019.04.02
平成への改元とは異なる安倍首相の記者会見を、政治評論家の森田実氏は「前に出てきて、俺が決めたんだぞ、ということをアピールすべきではなかった。憲政史上の汚点ですよ」と厳しく批判する。
森田氏は、新元号の発表に安倍首相がどれだけ関与しないかを注視していた。「ふたを開けてみれば、安倍首相は、これまでの元号の慣習を破って万葉集から言葉を採用したとナショナリズムを打ち出したり、官房長官の発表で済ませず、あたかも自身の所信表明演説のような説明をしたりと、あきれることばかり」
元号は確かに、元号法に基づき内閣が決めるものだが、「出しゃばりすぎ。戦後、象徴天皇制となり政治利用を厳に慎まなければならないということを、平成の代替わりのときの竹下首相はよく分かっていた。会見して、元号に自らの政治的メッセージを乗せるようなことはしなかった」。
「令和」の語にも安倍色を感じる。令の字源は「人がひざまずいて神意を聴くさま」（大漢語林）とされる。「和せよ、と命じられているようで、上から目線な印象。独善的な安倍首相と重なる」
意識して安倍首相の会見中継を避けた人もいる。同志社大の岡野八代（やよ）教授（政治思想史）は「みなさん新しい時代をことほいで、都合の悪いことを忘れてください、というメッセージを聞かされるのは分かっていたから」とばっさり切る。
米軍基地を押しつけられた沖縄、帰れない故郷をつくった東京電力福島第一原発事故、格差社会の深刻化、続発するセクハラや女性差別、外国人の人権問題を置き去りにして始まった移民政策…。平成の三十年間を振り返ると、ことほぐ気分にはとうていなれない。
「現代の民主主義社会で、権力者の都合で勝手に時代に『区切り』を付けるなんて許されるはずがない。国内外で人々の分断ばかりをつくり出している安倍首相が和を語るなど何様？ という思いだ」
昨年刊行した「国体論」（集英社新書）執筆の際、生前退位の意向を示した天皇の「お言葉」に衝撃を受けたという京都精華大の白井聡専任講師（政治学）は、「国民統合の象徴たるために熟慮を重ねて語られた天皇の言葉の重みと比べるのが失礼なほど、今回の安倍首相の会見の言葉は軽い」と語る。
国書・万葉集からの出典は初だと安倍首相は胸を張った。しかし、より古い中国古典に似た漢文があり、原典は結局中国古典ではないか、との指摘が早くも噴き出している。
「古来、中国や朝鮮との影響を受けてきた日本で『混じり気のない純日本文化』などあり得ないし、古今東西、知識人はあえて原典を示唆するような本歌取りをしてきた。そういうことを意図的に無視したのか、無知による思い込みなのか。政府説明を無批判に垂れ流す報道陣も悲惨だ」
元号に込めた首相自身の思いをとくとくと語る姿にも強烈な違和感を持った。
「本来、元号は公表された時点ではからっぽで、どのような時代になるかは後で決まっていく。こうあってほしいという言葉の意味は簡単に解説されてもよいが、『そういう時代を国民の皆さまとともに築き上げていきたい』などと、権力者は言うべきでない。こういう時代にせよと言う権利は誰にもないからだ」
そして白井氏は「政治家の立場で、元号に自分の意図を乗せるなど、以前の改元のときはなかった。おこがましいという思いがあったのではないか。しかし安倍首相はそれをやった。彼が、国家・国民・国土を私物化していることを可視化した会見ではなかったか」と指摘した。
デスクメモ
ＮＨＫはじめテレビは朝から改元祭り。その画面に、多くの人が号外を取り合う様子が映っていた。新聞離れが言われる世の中。人が群がるのを見て、少しうれしくなった。ネットを開いた。やはり、その号外が売られていた。嫌な感じの首相会見とあいまって、気分が下がった。（裕）
以上
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