この夏、大子への往路に馬頭図書館に立寄り始めて読書に励んでいます。その一冊に学生時代以来50年ぶりに手にした本があります。その名は相沢忠洋著「岩宿の発見」幻の旧石器を求めて。
日本の古代史の金字塔、岩宿遺跡を発見した桐生市に住む行商の方の自叙伝です。幼い時に一家離散で苦労した著者は、見つけた古代の遺物や石器から一家団欒に思いを馳せ関心を向けました。
行商の傍ら赤城山麓の旧石器時代の遺跡を訪ね歩き、石器（石を加工した狩猟や調理の道具）土器の発掘調査を長年続けて、ついに日本人の起源を遡らせる岩宿遺跡の発見に繋げた感動話です。
親の離婚による丁稚奉公。終戦直後の買出し苦労、隣近所との助け合い。功名心にはやる同好者。垣間見る学会内部の暗闘。色んな体験エピソードを、素直に書き綴った文章に共感を覚えます。
石器発掘の地層が近隣遺跡より古い関東ローム層からで、石器だけで土器が同時に見つからないこと、これらは縄文期より2万年古い旧石器時代の遺物の証拠で、日本初の発見となったのです。
立派だと思ったのは彼の謙虚さ。発見の報道で名を売る功名心も無く、学会発表の名誉欲も無く、純粋に興味の探求を目指す人だったようです。現地に記念館もあるので機会見て行ってみます。
この本は初版昭和44年1月15日講談社刊で定価350円。平成元年4月12日田村正夫氏が馬頭図書館に寄贈と捺印。自分としては50年前出版で30年前寄贈された古書を発掘した経緯も感無量。
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