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2020年12月30日22:53

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古楽器の響きで味わう モーツァルトの協奏曲と交響曲-II アンサンブル山手バロッコ第93回演奏会 開港記念コンサート  “洋館で親しむバロック音楽”シリーズ 第100回

日時 12月27日
会場 横浜市開港記念会館講堂
曲目 ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 KV.488、  交響曲 第39番 変ホ長調 KV..543、   バセット・クラリネット協奏曲 イ長調 KV.622
演奏 荒川 智美(フォルテピアノ) 満江 菜穂子(バセット・クラリネット、クラシカル・クラリネット) 小野 萬里(クラシカル・ヴァイオリン) 宮崎 蓉子(クラシカル・ヴァイオリン)他

最近終わった朝ドラ「エール」の一場面で「戦争が終わったら」というセリフに対し「戦争に負けても修羅場にならず平和になったことを知っている後世の人間が書いたセリフ」問うような趣旨の評論があった。同じことは歴史ドラマの多くにあるようだ。同じことだクラシックの世界では作曲家の晩年の作についてあたかも自分の死を知っていたかのような観点で評論を書くことがある。これに対しこの日のナビゲーター役の朝岡氏が「私たちが晩年と言っている30歳以降もモーツァルト自身は自分の晩年などとは少しも意識してはおらず、宮廷作曲家に任じられ将来に向けてどんどん作曲しようという意欲満々だった。」、「晩年貧困にあえいでいたというが、宮廷作曲家として収入は十分にあったが金遣いが荒かったのが原因。」と話したのは最近のモーツァルト研究を熟知しているからであろう。

モーツァルトが晩年を意識したか否かは別にして、この日は比較的後期の名曲が3つという贅沢な演奏会だった。
ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 KV.488  使用された野神俊哉氏製作のワルターモデル(2013年作)の珠を転がすようなという比喩がピッタリする音色がとても心地よかった。ウィーン式アクションのピアノを弾く荒川さんの軽やかで清楚な演奏もこの曲にとてもよく合っていた。

交響曲 第39番 変ホ長調 KV..543  ほぼ当時の演奏形態に近い20名程度による演奏とはいえ、指揮者なしでこの曲を演奏できたのはメンバーの力量によるものだ。それをコンミスの小野さんが上手くまとめきった素晴らしい演奏であった。

バセット・クラリネット協奏曲 イ長調 KV.622  これまではクラリネット協奏曲と呼ばれたが、通常のクラリネット(B♭管やA管)では演奏できない低音が出る。近年バセット・クラリネットという復元楽器によって演奏されるようになった。※

満江さんが使うバセット・クラリネットはこの曲が演奏された時のプログラムの挿絵をもとに復元したもの(以前小倉貴久子さんのフォルテピアノ演奏会でもこの楽器を吹いたような記憶がある)。

低音から高音まで馥郁として滑らかな音色は大変魅力的だ。満江さんの演奏を聴くとその後この楽器がどうして使われなくなったのか理解できない。

「終わり良ければ全て良し」という諺があるが、一年の最後に極上のモーツァルトを聴くことができてコロナ禍で酷かった一年も気持ちよく終わることができそうだ。


※ウィクペディアより
現行の楽譜は1801年にブライトコプフ・ウント・ヘルテルにより出版された際、通常のA管クラリネットで演奏できるよう何者かによって編曲されたものである。実際、現行版では主に低音域から高音域に駆け上る部分で、低音が出せるバセット・クラリネットでなければ音楽的に不自然なフレーズが出てくる。現在では当時の編曲譜などを元に数種類の復元版が作成されている。さらに、1991年に復元されたシュタードラーのバセット・クラリネット(満江さんが吹いた楽器のオリジナルモデル)を演奏に用いる試みもある。

※※バセット・クラリネットとバセット・ホルン
バセットという名前た付いて紛らわしいが別の楽器。バセット・ホルンはセレナード第10番 変ロ長調『グラン・パルティータ』K.361で使われている。

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