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2020年09月17日23:00

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エッセイ集590:「アナロジー:『東芝の悲劇』から新政権をみる」

<アナロジー:「東芝の悲劇」から新政権をみる>
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今般、菅政権が発足しました。

全体としては「アベノミクス」を継承しつつ、コロナ対策と経済再生を喫緊の課題ととらえ、その一環として行政の縦割りの打破とデジタル化の推進を図るということで、まずはその手腕に期待したいものです。

[東芝の悲劇]
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一方、政治の世界でなく企業の世界になりますが、「東芝の悲劇(大鹿靖明著:2017年発行)」というドキュメンタリーがあります。

日本を代表する電機メーカーの一つであった東芝は2015年に「不適切会計」が発覚しました。

私自身、2002年に東芝を早期退職しましたので、2015年に発覚した「不適切会計」については伝聞でしか知りませんが、リーマンショック以降続々と経営が悪化していく同業他社(松下やソニー)を尻目に、東芝はずいぶん健闘している(すごいじゃん!)と思っていた矢先のことでした。

このドキュメンタリーは、その「不適切会計」を招いた温床とそれが生み出したさらに大きな損失という悲劇を、下記の歴代の社長とその確執を挙げてあぶり出していると言われています。

・コンプレックスと名誉欲が人一倍強い西室泰三(1996〜2000)、
・西室に院政を敷かせた岡村正(2000〜2005)、
・「バイセル取引」で不適切な会計をまい進させた西田厚聰(2005〜2009)
・暴力的な恐怖政治で社内を混乱に陥れ、福島第一原発にすがりついて傷口を広げた佐々木則夫(2009〜2013)
・「バイセル取引」の生みの親で西田の傀儡に過ぎなかった田中久雄(2013〜2015)。 

特に強調されているのが、業績を実際より良く見せるために西田、田中両社長がはじめた不適切な「バイセル取引」と“暴君”と恐れられた佐々木社長です。

不適切な「バイセル取引」とは、PCなどで要素部品を実際より高い「架空の価格」で海外の組み立て業者に供給(セル)したことにして、その完成品を通常価格で買い戻す(バイ)ことで見せかけ上の高利益を出して業績を実際より良く見せる手法です。

西田社長の後任の佐々木社長もさらに何としても業績を良く見せるために部下に「チャレンジ」と称して達成できない利益目標を強要して、そこでは不適切な「バイセル取引」が継続していたとされています。

やがて「バイセル取引」による「キャリーオーバー」が数百億円という隠し切れない額になりついに「不適切会計」が発覚することになります。

さらに西田社長は佐々木社長とともに、経産省の後押しや現役を退いたはずの西室元社長の肝いりもあり、米国の原発メーカーのウェスチングハウスを適正企業価値の約3倍の54億ドルもの価格で買収しました。

そして東日本大震災により原発の需給状況が大きく変わりったのに対応できず、ウェスチングハウスの倒産により「バイセル取引」の「キャリーオーバー」で隠していた損失の10倍もの巨大な損失を被ることになりました。

[「東芝の悲劇」から新政権をみる]
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すなわち上記しました「東芝の悲劇」は、歴代社長の確執や院政、そのなかで醸成された業績を実際より良く見せるという隠ぺい体質と強権的管理、その下での上には物申すことができないという硬直的な風土の中で生み出されたもので、さらに「東日本大震災」という天災が原発事業へ大きな打撃を与えて取り返しのつかない巨額な損失を生み出したものと言われています。

一方、安倍前政権に目を向けると、その「アベノミクス」では景気浮揚のために金融政策において世界に先駆けて中央銀行(日銀)が実質的に国債を買い取るという禁じ手を使い、またその財政政策においては国債発行残高がついに1000兆円を上回る事態(GDPの2倍)になりました。

また「内閣人事局」を新設して主要官僚の人事を掌握し、内閣主導の政治の実現を図ってきましたが、その一方で官僚の疲弊とモラルの低下も指摘されてきました。

さらに「アベノミクス」の一つの目玉であるオリンピック招致を含む「インバウンド需要」の推進は「新型コロナ」という天災で大きな打撃を受けてしまいました。

今般、菅政権が発足し新総理の手腕により安倍政権の良いところは継承し、さらに負の遺産を解消することが期待されていますが、その背後には二階幹事長、麻生副総理、そしてなによりも安倍前総理の影が色濃く残っているように思われます。

以上述べました通り、菅新政権の抱える安倍前政権から引き継いだ「構造的な縮図」は上記の通り「東芝の悲劇」の中にすでに見られているような気がしています。
(おわり)
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