《ホワイトラビット／伊坂幸太郎》
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この小説に登場する人物のほとんどが悪人です。
けれど、その中に極めて冷酷な悪人が一人いるために、
周りで翻弄される悪者たちを、
ついつい応援しながら読み進むことになります。
生きている限り
罪のない人間なんて存在しないと知っているからでしょうか。
とにかくいくつもの出来事が複雑に絡んで、
物語は進行していくのですが、
その語りにも仕掛けがあります。
物語は
明確で首尾一貫した語り手を必要としますが、
そのため作者による語り手の取り扱い方には
いくつかのルールがあります。
語り手は物語世界内にある地点から
物語を語らなければならないというのもそのひとつですね。
でも、この小説の語り手は、
最近ではあまりお目にかからない
自由奔放さを兼ね備えています。
語り手の視点がころころ変わったり
説明的だったりすると鼻につくものですが、
伊坂ワールドに引き込まれると、
そんなことはまったく気にもなりません。
この本の語り手は、
不特定多数の大衆に向かって言葉を発するのではなく、
いままさにこの本のページを開いている読者個人に
語り掛けてくるような気さえします。
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