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2020年05月23日13:23

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【本】【ブックカバーチャレンジ7日/その4】

1983年4月1日刊行 講談社、後に1986年3月1日に講談社文庫より刊行。

今回取り上げるのは『空白の天気図』や『MARIKO』等を発表して精力的に執筆活動を続けている柳田 邦男さまの10人のノンフィション作家との対談集。

未知の領域に隠された事実を追い、虚像を排して実像に迫る。小さな事実への鋭い洞察がときには全世界を揺がすような大きな影響力を持つこともある。人間の真実を求めて、複雑なこの現代社会で今もっとも魅力あるノンフィクションの仕事をしている東西著名の10人にその手のウチを聞く。興味津津の対談集。

対談者と目次は以下の通り

ノンフィクションの可能性(沢木耕太郎)
今を生きる人の細部を書く(ゲイ・タリース)
一に素材、二に筆力、三に思想(上前淳一郎)
世界規模で集めたデータの豊富さ(ゴードン・トマス)
歴史の扉を開く作業(ジョン・トーランド)
取材した事実からのインパクト(加賀乙彦)
諜報機関の情報通(フレデリック・フォーサイス)
イマジネーションをこえる事実の重み(ドミニク・ラピエール)
限りない小状況の積み上げ(澤地久枝)
現代史のブラックホールを衝く(立花隆)



自分がノンフィクションを読むときや、ドキュメンタリーを観るときのバイブルとなっているのが本書でありまして、最初に紹介させて頂いた内藤陳さんの『読まずに死ねるか』がエンターティメント小説の入口とするならば、本書はノンフィクションをどう読むべきかを知る上で格好の一冊であります。

一口にノンフィクションと申しましても体験的ノンフィションであったり、精神科医として獄中に居る死刑囚たちの診断を通して、日本に於ける死刑小説の金字塔『宣告』を書き上げた加賀乙彦先生であったり、『大日本帝国の興亡』ではルーズベルト大統領は真珠湾攻撃を知らなかったと書いたあと、後の取材で知っていたと自説を修正した『真珠湾攻撃』等の戦史物の第一人者の一人であるジョン・トーランド先生、ラリー・コリンズとの共著で『パリは燃えているか』、『おお!エルサレム』等全世界を股に掛け当事者ですら知らなった事実を掘り起こしたドミニク・ラピエールさま。言わずと知れた『ジャッカルの日』で鮮烈なデビューを飾ったフレデリック・フォーサイスさま等色々な書き手の取材方法や書き方等を紹介されているのですが、一番インパクトがあったのが『妻たちの二・二六事件』や『滄海(うみ)よ眠れ―ミッドウェー海戦の生と死』を書き上げた澤地久枝先生とのラジオでの対談の採録でして、ノンフクションにおいて取材とはどれだけ大切なことかを具体例を挙げて紹介されていて、対談の中で澤地先生と柳田さまが共に激賞されているのが次の回で取り上げるドウス昌代先生の『ブリエラの解放者たち』なんですね。
この対談の中で澤地先生は「あの人は男の眼と女の眼を持っていますよ」と語り、「この本の凄いところは戦記からの引用が一切ないこと」を挙げられていて、自分も後に一読して事実が持つ重みを再実感した一冊でありますが、それは次回に廻します。



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